深夜バスで上高地へ
長野県の上高地に行ってきました。朝もやがかかる透明な梓川、朝日に輝く急峻な穂高連峰、嘘みたいに美しい明神池。どれも初体験で、時間がたつのも忘れて見入ってしまいました。ハイキング終盤で温泉に浸かることができたのもたまらなかった。露天風呂で目をつぶると、そこまで見てきた景色、そしてたどり着くまでの気持ちが鮮やかに蘇りました。・・・ああ、今、とんでもなく贅沢な時間の使い方をしている。もしかしたら今が人生のピークじゃなかろうか、なんて思いました(ちなみに僕は年に数回は人生のピークを感じるタチです)。しかし、そんな幸せな気持ちに至るまでの道のりは、平坦ではありませんでした。上高地で歩いた道も平坦ではなかったのですが、当日の朝を迎えるまでの道もまた、なかなか険しかったのです。旅の発案者はSさん。ボクモの元スタッフでもあり、20年以上の友人でもあるSさんは旅の達人です。「ねえ、今度みんなで上高地に行かない?」ボクモ同窓生が集まった今年の春、そんな話になり、上高地マスターでもあるSさんがあれよあれよという間にスケジュールを組んでくれて、旅が実現することになりました。達人曰く、「上高地って自家用車では入れないから、車で行っても結局最後はバスに乗ることになるし、ハイキングで疲れたあとに長距離を運転するのはちょっと危ない。便利さとむこうでの滞在時間を考えると、深夜バスで行って、夕方のバスで帰ってくるのがベスト」とのこと。もちろん達人の計画に身を委ねることに。しかし、そんな計画をボクモのカウンターでしていたら、皆さん一様に「岩須さん、深夜バスなんて若いですね〜」とか「私なら早朝から歩くとか無理だなあ」とか、しまいには「体バキバキで1週間は体調不良を引きずるでしょう」とか、恐いことを言う。僕の中では、昔からのメンバーが集まって旅できるのが嬉しい、その一心で「行きましょう」となったのですが、そうか、言われてみたら、深夜バスで行ってからの長距離ハイキングって、47歳のおっさんには厳しいのかも、と不安になってきました。そして、わくわく半分、びくびく半分で迎えた夜11時の名古屋駅。乗り込んだバスは4列シート。発進してすぐにこれはマズいかもと思いました。運転が荒い。揺れる揺れる。もちろん、車内で寝る気満々で当日は早起きしておきました。が、この揺れはどうも。。。酔ったら負けだ、なんとか眠ろう。しかし、思えば思うほど、目が冴えてしまう。とそのとき、ふと思い出しました。そうだ、大学時代、よく深夜バスでスキーに行っていた。あのときも車酔い問題で悩まされていた。しかし、僕は当時、我流の解決方法を編み出したのだった。それは頭を思いっきり横にして(ちょっと首は痛いが我慢)、体は座っているけれど頭はふとんの中に近い状態にする、という戦法だ。これだと、僕の激弱の三半規管がなぜかちょっと強くなる。気がする。結果、今回、25年ぶりに思い出した首横作戦のおかげで、寝不足ではあったものの、見事「ちょい酔い」くらいで早朝の上高地にたどり着くことができたのでした。体調を崩して他のメンバーに迷惑をかけるんじゃないかという不安を脱して、心底ホッとしました。そして、安堵をじんわり噛みしめているところに、飛び込んできたあの雄大な自然の景色。緊張からの緩和。しゃがんでからのジャンプ。山、木々、川、そして池。すべてが沁みました。感動に次ぐ感動。歩いて足が棒になりかけても、夢中で何枚も写真を撮りました。しかし。やはり目の前の雄大なパノラマと、iPhoneの中に収まった景色には、あまりにギャップがあるなあ、と思いました。手元のこれは、ほんの一部。目の前の景色はもっともっと多くのものを含んでいる。例えば、そこにたどり着くまでの心の動き。友といっしょに同じ風景を見て、感動を共有している嬉しさ。そういった、再現不可能な、今しかない気持ちが、目の前の景色をより鮮やかにしてくれているんだろうな。そんなことを思いながら、なだらかな山道をてくてく歩きました。1日で歩いた歩数は、合計3万歩。正直、膝と腰に不安を抱える軟弱な僕がこんなに歩けると思わなかったです。きっとメンバー、景色、温泉(足の疲れがふっとんだ)、いろいろ良いことが揃ったから歩けたのだろうと思います。また来よう、上高地。とってもとっても良いところでした。Sさん、最高のコーディネート、ありがとうございました。東京からバスで参加のEさん、帰りの渋滞、お疲れ様でした。どうやらバスの中でVIVANTの最終回を見たようですね。僕は翌朝見ました。またみんなで感想を言いあいたいですね。さて次はどこに行こう。人生のピークと思える瞬間に、また出会えたらいいなあ。