若いですね
「若いですね」 最近よく言われます。僕が、ではなくて、スタッフが、です。そうなんです。開店から14年。今のボクモは、僕とシェフを除いて、これまででいちばん若いスタッフが働いています。現在のスタッフは4人。4人中20代が2人、10代が2人です。20代はふたりとも社会人で、10代はふたりとも大学生。年長の1人はボクモ歴2年。あとの3人は今年加入しました。しかし、店をはじめたときは、まさか自分の子どもくらいの年齢の人たちと一緒に働くとは思ってもみませんでした。僕がアルバイトでラジオ局のADをはじめたのは19歳。あのとき、今の僕の年齢くらいのプロデューサーとか、とてつもなく遠い世代のおっさんに見えたもんでした。今、働いているうちのスタッフにとっては、僕もそう見えてるんだろうなと思うと、なんだか不思議な気分になります。あのときのおっさんは、僕からしたらギョーカイを隅々まで熟知しているフィクサーに見えました。ところが実際に自分がこの年齢になってみると、とんでもない。まだまだ世の中知らないことだらけです。30を過ぎてから飲食をはじめたので、いまだに経験不足を感じますし、正直まだ迷ってばかりです。若い頃と比べて成長したなと胸を張って言えるのは、ウエストのサイズくらいです。それにしても、最近の若い人、とてもいいです。たまたまボクモに良き人材が来てくれているだけかもしれませんが、今、いっしょにやっているメンバーは、みんな前向きな気持ちを持ち寄って働いてくれています。個性もしっかりある。そして挨拶ができる。ありがたいことです。はたして、若き日の僕がそんなふうに仕事ができていただろうかと思うと甚だ疑問です。「おざーっす」とか言って、スタジオの外でブラックの缶コーヒーとたばこで一服して、いっちょまえの仕事をしてる大人みたいな顔をしていたと思います。ダサい。まあ、でも、そのダサい岩須があって、今の岩須にたどり着いているわけなので、その時代のダサさも今の自分をつくる上で必要だったとも言えるのかもしれませんが。とにかく、ボクモスタッフの若者は素晴らしい。そしてそう思える人たちと一緒に仕事ができてラッキーだなと思います。ラッキーと言えば、ボクモの卒業生からもたらされるラッキーもあります。歴代スタッフの数は20数人くらいになるのですが、その中でも今でもちょくちょく会える人たちが何人かいます。中でも2009年の開店時から手伝ってくれたSさんは、出不精な僕をあちこちに誘ってくれる年上の方。貴重な存在です。最近、店+通販+ラジオの仕事で、頭の中がパンパンになりがちでした。どこかで仕事をなんにも考えない時間をつくりたいなと思っていたところ、「上高地に行こうよ。めちゃくちゃ癒やされるよ。」と誘っていただきまして、今月、長野の上高地にハイキングに行くことになりました。ラッキーです。ちなみに参加メンバーの3人は全員ボクモの元スタッフ。楽しみだなあ。ハイキングなんて何年ぶりだろう。しっかり準備しないと、と思い、今週人生初のアウトドア用シューズを買いました。そしたら妻がひと言。「え?新しい靴で行くの?大丈夫?」あ、そうだ。確かに。履き慣れていない靴で長距離、しかも慣れない山道を歩くのは危ないか。 それに、買った靴、いつも履いている革靴やスニーカーとはだいぶ履き心地が違うもんな。ぴたっとはあわない。こちらから寄せて、慣れていかないと。 よし、これから毎日履いて、体に馴染ませておこう。そう思ったとき、あ、これってあのときに似ている、と気づきました。それは、新しいスタッフが入ったとき。最初はちょっと違和感があっても、徐々に慣れてお互いのことがわかってくると、いい塩梅になっていく、あの感じです。スタッフも、新しい環境は戸惑って当然だし、こちらも新しく入る人がどんな人かは最初はわからない。同じ時間を過ごしていくうちに、「この人ならこう言えばいいな」とか「これが得意そうだから任せてみよう」とか、個別の接し方がわかってくる。スタッフも「この職場ではこうやればいいんだ」という型がわかってくる。そうして、お互い、関係性が体に馴染むわけです。そもそも、最初からうまくぴたっとハマることなんて、ほとんどないです。お互い歩み寄って、馴染んでいくやり方を見つけるのが、うまく進むコツなんだろうな、と。「新人の靴くん、その若さ、いいぞ。こっちも出来る限りあわせていくから、よろしく頼むぞ。」厚めの靴下+中敷きで履き心地を調整をしながら、そんなことを思いました。