「ブレンド」と聞いて何を思い浮かべますか?
やっぱりコーヒーでしょうか。
小さい頃、喫茶店で大人が「ブレンドで」と注文しているのを聞いたとき、なんかよくわかんないけど格好いい響きだな、と思っていました。
専門用語でオーダーするというのが、大人っぽいと感じたんだろうと思います。
自分がコーヒーを飲むようになって、ブレンドというのは、異なる産地の豆を組み合わせて、バランスを取った味わいにしているもの、という意味を知りました。
でも、若者に人気のコーヒー屋さんから「うちはシングルオリジン(産地ごとの豆の違いを楽しむタイプ)だけの店なのに、年配の方が来るとだいたいブレンドでっておっしゃるので、そのたびに毎回説明しなきゃならないんですよ。」と聞いてから、なるほど、ブレンドってのは、もしかしたら昔の喫茶店用語になりつつあるのかな、と思ったり。
そういえば、うちの店で「とりあえず生」とおっしゃるのは、ある程度の年齢以上の方が多いです。
そうか。そう考えると、あのコーヒー屋さんとうちは似てるかも。
「ビールは3種類ありまして、そのうち2つはクラフトビールです。サイズは2サイズからお選びいただけます。」と、毎回説明してるもんな。
時代が進むと、どのジャンルも細分化、専門化が進むんだろうと思います。
さて、ブレンド。
ワインの世界ではブレンドというのは大変重要な意味を持ちます。
複数のワインをブレンドして、自分たちの味をつくる。これは伝統国フランスではスタンダードな製法です。
生産者は、A品種のワイン、B品種のワイン、C品種のワインなどの、ぶどうの品種ごとにベースのワインをつくります。
そして、それぞれのベースワインのその年の出来具合を考慮して、ブレンダーが比率を決め、大きなタンクの中でワインをブレンドし、その後で瓶詰をします。
こうすることで、ひとつの品種では得られなかった奥深さが出てきます。それに、ブレンドの比率を調整することで、毎年安定した味になりやすい、というメリットもあります。
逆に、無調整の、ブレンドしないワインもいっぱいあります。ワイン新興国では、この単一品種スタイルを採用している生産者が多いです。
なぜか。ブレンドすると確かに複雑な味にすることができる。でも、世界のワイン好きの間では「この品種は、こんな味」という共通認識があります。
なので、ひとつの品種でやってますよ、という印がラベルにあれば、ワイン好きは「あ、この品種は好きだから買ってみようかな」となるわけです。
フランスのブレンドワインは、ぶどう品種がラベルに表記されていないものが多く、品種を見て選びたい人にとっては難しい。
だから、伝統国じゃない自分たちは、わかりやすく単一の品種でつくり、それをしっかり表示して勝負しますよ、という戦略をとっているワイナリーが多いのです(実際には少しなら他の品種を混ぜてもいいというルールもありますが)。
しかし、その「新興国は単一」という傾向を、また逆手にとる人たちもいます。
いやいや、単一じゃあ面白くないぜ。これまでの常識にとらわれない独自のブレンドを編み出して世界唯一のワインをつくっちゃうよ、という新しい生産者もいます。これも面白い。
ブレンドが当たり前。→ならば、私たちはブレンドしない方で勝負だ。→いいや、俺たちは独自のブレンドをやろう。
ワインのこの流れを見ていると、人間の営みというのは、前時代に対するカウンターによって新しいものが生まれているんだなあ、と感じます。
僕らが扱うニュージーランドワインも、圧倒的にわかりやすい単一品種ワインばかりだったのですが、最近は、そうでないものも出てきています。
先日東京で行われた試飲・商談会でも、こんな「よくわからないけどなんだか雰囲気のある」ラベルのワインが出ていました。
いちばん右のヤツ。なんだかお洒落なシャツの模様みたい。モチーフはなんだろう。葉っぱ?ギター?
使ってる品種はピノ・グリ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールって書いてあるぞ。うーん、まったく味の想像ができない。
いいです。面白いです。
やや保守的な傾向があるニュージーランドでも、こういうぶっとんだのが出てきている。へそ曲がり好きな僕としては、応援したいぞ。
ちなみに、全然関係ない話ですが、最近の僕の中でブレンドといえば、整髪料です。
アラフィフになってコシがなくなり、へにゃっとしてるマイヘアを整えるために、毎日2種類のワックスを手のひらでブレンドしています。
長年かけてたどり着いたこのブレンド、メーカーさんにはつくれまい、ふっふっふと悦に入り、髪に塗りたくっています。
え?へそ曲がり。