僕なりの名古屋土産

僕は生まれも育ちも愛知県。ちょっとだけ東京に住んでいたこともありますが、人生のほとんどは尾張地方で過ごしています。

今思えば、若い頃に他の地方とか海外とか、自分の生まれたところから遠く離れたところに住む経験をしてみたかったな、と悔やむときもあります。

やっぱり同じところにずっといると視野が広がらないというか。あんまり物事を知らないおじさんになってしまったなあ、と思うこともしばしばです。

ただ、カウンターのある店をやっていると、僕の狭めの視野をぐいっと広げてもらえることもあります。

先日は、たまたま金沢出身の方がいらっしゃって、北陸トークで大盛り上がり。

近江町市場、兼六園、金沢城。

のどぐろ、白海老、寒ブリ、セイズファームのワイン。

魅力的なワードが飛び交います。

「冬になると道路の融雪装置のシャワーが出るので、足にかからないように気をつけないといけないんですよ」

「へー!」

「福井では水羊羹は冬に食べるんですよ」

「へー!(まじか)」

あっちに住んでいた方や、仕事でよく行っていた方の話はリアルで面白いです。

またその日は、ボクモがメインの目的で神奈川から名古屋に旅行で来たという奇特な方もいらっしゃいました。

「普段ラム肉を食べたいと思ったら、スーパーのサミットで買います。ちょっと高いけど肉質はかなり良いんですよ。」

「へー!(サミットこっちにないなあ)」

「珊瑚礁のカレー、神奈川では定番です。」

「へー!(食べてみたい)」

名古屋から一歩も出なくても、あちこちの楽しい話が聞ける。なんて役得。ビバ、カウンター。

ちなみに、そういう「ご当地トーク」で良きアシストをしてくれるのがこの本です。

菅原佳己さん著「日本全国地元食図鑑」

水羊羹も珊瑚礁もここに乗っています。カウンターのある飲食店をやっている皆さん必携の本ですぞ。

やっぱりカウンターはいい。知らない文化を教えてくれる人に会えるんだもの。

そう思うのですが、一方で、こうも思います。

せっかく楽しい話を持って来てくださったのに、僕がお礼に渡すべき「名古屋のおもしろ」が足りていないかも。

名古屋で店をはじめて14年。根を下ろすというと大げさですが、まあ、同じところでずっと商売をさせていただいているわけです。

でも、「名古屋と言えば」というお題になったとき、だいたい、味噌煮込み、味噌かつ、あんかけスパ、手羽先、つけて味噌かけて味噌、坂角のゆかりとか、いつも同じ話ばかりしている気がするのです。てか、ぜんぶ食べ物じゃん。

まあ、初めて会った方との話題として食べ物ってのは悪くないと思うんですが、せっかくボクモにNZワインを飲みに、ラムチョップステーキを食べに来てくださっているのに、他の食べ物の話ばかりもどうよ、と思ったり。

「これが名古屋の今です」と胸を張って紹介できるものが、あと5個くらいは欲しいなあ、と思うわけです。

というか、欲しいなあじゃないよ、ですね。ずっと名古屋にいて視野が狭いなんて嘆いてるなら、せめて、狭い中のものを深掘りしておきなさい、ってことですよね。

そうだ。こういうときは、おいでよ名古屋こと「おいなごちゃん」がいい。情報の鮮度と角度、すごいもんな。最近のつぶやきを覗いてみよう。

ふむふむ。円頓寺商店街にオープンした ENDOJI BREWINGとかいいかもな。でも飲食か。

他には・・・

名古屋駅地下の綺麗なアンモナイトの化石が。

へえ!

メタバース名鉄名古屋駅がすごい。

へえ!

中部電力ミライタワーのNAKEDお月見。

いいじゃん!

いっぱい楽しそうなのあるじゃないか。

よし、最近なかなか休みが取れていないけれど、「家〜店」の往復ルーティーンの中に、こういうのを入れてみよう。

出勤途中におもしろ探しをする日を作ればいいじゃないか。

もうちょっと深掘りしたいときは、大竹敏之さんが書いた記事に頼ろう。ジブリパークとかレゴランドとかの話題もインプットだ。

わざわざ名古屋の矢場町の辺鄙な地下に来ていただいた方への、僕なりの名古屋土産、こしらえておきたいと思います。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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