ソムリエ岩須(いわす)のブログ

東京に行ってきました

東京に行ってきました。 目的は結婚50周年を迎える両親の金婚式のお祝いのためです。東京に住んでいる兄ファミリー、愛知県に住んでいる両親、そして僕たちファミリーの合計9人が東京に集まり、ご飯を食べたり観光をしたりして過ごしました。 着いてすぐに、東京駅の近くで昼ご飯をいただきました。ただ、このときは食事そのものよりも、どうやってその店が成り立っているかに気がいってしまいました。 お店の広さはたぶん40坪くらい。家賃は坪単価5万円くらいかな。ってことは月200万円。目標月商は2,000万円。30日営業するとして、日商は66.7万円。ランチの平均単価は1,800円。ディナーは5,000円。ランチ100人、ディナー100人で儲けがでる感じかな。なんて。 いかんです。こういうことばかり考えていると、純粋に雰囲気や料理が楽しめないな、と反省し、次の食事からは電卓をはじくのをやめました。 昼からは駒沢オリンピック公園へ。 父親はその昔ハンドボールの選手だったのですが(どうやら日本代表だったらしい)、その公園でよく試合や練習をやっていたそうで、思い出の場所巡りをしたのでした。 公園の近くに当時住んでいた寮があって、もしかしたらその近辺に行ったら当時の記憶が蘇るかも、とタクシーの運転手さんにお願いをしてぐるぐるまわってもらいました。 しかし当然60年も経てば町はまるっきり変わってしまうわけで、住んでいた寮もなければ通っていた銭湯もなく、残念ながら、思い出に繋がるものは発見できませんでした。 ただ、公園に立っているオリンピック記念塔は「これは当時のままだ」そうで、とりあえず記念写真を撮ることができて、まあよかったです。 親の思い出の場所に行くという経験、初めてでしたが、良いもんでした。当たり前ですが、父親にも青春時代があり、その後母親と出会い、今の自分に繋がっているんだなあ、と。 夜は、ホテルの懐石ディナー。 途中、僕と兄から両親への表彰状を渡したり、娘から記念品のプレゼントがあったり、甥っ子のダンスコーナーがあったりと、盛りだくさんのアトラクションを挟みながら、夕食を楽しみました。 翌日は、豊洲市場を見学してから刺身定食を食べ、お台場から水上バスで浅草へ。浅草で両親をフットセラピーの店に放り込んで、僕は両親がご近所さんに配るお土産の買い出しへ。コンビニからお土産を発送したら、タクシーで日比谷へ。 予約しておいたかっちょいいスペイン料理屋さんで、ピンチョス、タパス、パエリア、アルバリーニョ(白ワインね)を堪能して、大満足でした。美味しくて楽しくて、坪数や客単価を考えている暇などありませんでした。これが正しい旅行ですな。 それにしても、どこへ行っても思ったのが、人の多さです。途中で、母親が「人に酔ったわ」と言ってましたが、まさしく僕もそんな感想です。 そして、水上バスでお台場から豊洲、そして隅田川を上っていく間に、もの凄い数のタワーマンションを見ました。 ひとつひとつのマンションにどれだけ人が住んでいるのかを考えると、くらくらしてきます。 と同時に、「まだまだやれるぞ」とも思いました。 なにがまだまだやれるのかと言うと、ニュージーランドワインの通販です。 当然、あのマンションの中には、ワイン好き、ニュージーランド好き、ニュージーランドワイン好きという方が、いっぱい眠っているはずです。 飲食店は来ていただかないと価値を届けることはできないですが、通販ならば、あのマンションの窓から顔を出しているあの方にも、あの美味しいソーヴィニヨン・ブランを届けることができるのです。 頑張らねば。もっと知ってもらう努力をしなければ。 ちゃんと広告を頑張ろう。 よーし、広告予算、電卓をはじくとしますか。

ワインの酸化をどう防ぐ?

今日はワインの話を。 先日、カウンターで「週末にワインを飲むことがあるけれど、1本はとても飲みきれないです。残ったものを次の週末に飲むと、美味しくないんですよね。だからあんまり買わなくなっちゃいました。」とおっしゃる方がいらっしゃいました。 これ、よくわかります。 日本人にとって、750mlはちょっと多い。 そして、ワインはいったん空気に触れるとすごいスピードで酸化して味が変わるお酒です。 僕も自宅で「酸化しすぎておじいちゃんみたいになったワイン」を飲んで涙を流したことが何度もあります。 せっかく奮発して買ったワインが、おじいちゃん味のワインになるのはもったいないです。 そして、あんまり買わなくなっちゃって、「美味しいワインという楽しみがある生活」から遠ざかってしまうことは、さらにもったいない。と僕は思います。 そこで今日は、どうしたら飲み残したワインの酸化を防ぐことができるかについて、アイデアを提案してみたいと思います。 1.ガスで瓶内の酸素を追い出す これ、実際にうちの店でも少し前までやっていました。プライベート・プリザーブという窒素ガスを飲み残したワインの瓶にシュッとスプレーして、そっと縦置きで保管していました。窒素ガスの膜をワインの上につくって、酸素に触れさせないというイメージですね。 たしかに酸化の速度は緩やかになりますが、ちょっとコストがかかります。Amazonだと3,000円。90回使えると謳っているので、1回33円。 ガスを扱う会社に勤めている友人に「窒素ガスなんて、めちゃくちゃ安いよ。それってほぼ容器代と輸送費だね。」と言われてちょっと馬鹿らしくなって、今は使っていません。 ▶プライベート・プリザーブ ワイン保存用スプレー:Amazon 2.バキュバン(vacu vin)でボトル内の空気を抜く これなら1回買ったらランニングコストは不要。1セット1,500円以下とだいぶ安い。ゴム栓をして、専用の吸引ポンプを上下させて、空気を抜くやり方です。 これも店で使っていたことがあります。幾分酸化しにくくなる感じがあります。体感的には3〜4日はもつイメージ。ただ、瓶の中に少ししかワインが残っていないときは、あまり効果がないように思いました。 それから、吸引ポンプで空気を吸っているときに、ワインの良い香りがどんどん外に漏れていくような気もします。今は使っていません。 ▶ワインの保存用 バキュバンセット:Amazon 3.アンチ・オックス(Anti-Ox)を使う 今、店で使っているのはこれです。ワインの瓶にかぶせるだけ。中に入っているカーボンフィルターが酸素を吸着するというものです。 1個3,000円弱とやや高いですが、うちの店みたいにグラスワインを10種類くらい開けている店だと、やっぱり手軽にかぶせるだけというのはありがたいです。 ただ、これを使っても1週間もつかといえば、微妙です。もちろんワインの性質によるところが大きいのですが、普通のワインの場合は、まあ3〜4日くらいかなというところです。 ▶アンチ・オックス TEX092BK:Amazon 4.コラヴァン(Coravin)を使う 高級ワインを長持ちさせたないならば、これです。ボクモでも使っています。細い針をコルクにぷすっと差し込み、中のワインを吸い取るイメージ。吸い取ったあとに、アルゴンガスが注入され、酸素を追い出してくれるというマシンです。...

いい春になりそうな予感

この春は、いい春になりそうな予感です。 なぜなら、このところ、トントントーンといいことが続いているから。ちょっとした好循環とでもいいましょうか。 まあ、ご覧の方にとっては、他人のいいことなんて知らんがなという話でしょうが、もしかしたら、僕のいいことが誰かのいいことに連鎖することもあるかもな、とも思うので、勝手ながらちょっと書きます。   いいことその1。 ボクモのスタッフ、良い方が採用できた。 これまでボクモは、求人媒体よりも、ご紹介でスタッフを採用することが多かったのですが、今年に入って、久しぶりに求人の広告を出しました。 約束したのに来なかった方も2人ほどいましたが(想定内)、思ったよりもたくさんの方と面接をすることが出来ました。 ひとりの女性が面接の最後に「あの、、、○○市の○○ってご存じですか?」と知り合いの名前を言うので、ああ、その方なら、ずいぶん前からお世話になっている方で、折にふれて僕やシェフのことを気にかけてくださっていますよと答えると、なんとびっくり。 「私、その人の姪なんです。」 あらまあ! ということは、ご紹介で来ていただいたのかな、と思ったのですが、そうではないようでした。 ボクモの求人に応募するときに、どんな店なのかいろいろ調べている中で、岩須というオーナーと自分の叔母さんがSNSで繋がっていることに気付いたそう。 でも、叔母さんには特にボクモの面接に行くよ、とは言わずに来たのだそうです。 ご縁ってあるのだなあ。 そして、当然「あの優しい方の姪っ子さんならば、間違いないだろう」というのも選考理由に加わりまして、めでたく採用させていただきました。 もう5,6回入ってもらっていますが、先輩ゆりちゃんの教え上手なのにも助けられて、たいへん良好な感じです。ありがたい。 いいことその2。 娘が大学に合格した。そして友達といっしょにボクモにご飯を食べに来た。 コロナ禍の受験生、本当にたいへんだなあと思いました。そして、受験生の家族もコロナのせいでピリピリ増し増し状態だった気がします。 この1年は、大きな心配事が家全体にどーんとのしかかっている感じでしたが、その中で、娘、よく頑張りました。 合格発表後すぐに、高校3年間仲良くしていた友達とボクモに食事に来てくれました。友達はお店に差し入れのクッキーを持って来てくれてびっくりしました。まあ、よくできた友達に恵まれて、娘よかったなあ。 そして店内で楽しそうに話していて、見ているこちらも嬉しかった。シェフや常連さんからサプライズのプレゼントをいただいたりもして、なんだか楽しそうだった。 初めて見る「職場で働く父」はどんなふうに映ったかな。 いいことその3。 金・土・祝前日は満席の日が増えてきた。 禍が過ぎ去ろうとしている証だと思います。今週水曜日は祝前日で、おかげさまでぎっちり満席でした。その光景を見て、ああ、ここまでちゃんと飲食店らしい姿って3年ぶりくらいかもなあ、としみじみ思いました。 ただ平日は相変わらず、あらまあヒマねえ、の日もけっこうあります。 コロナによって「平日に飲む楽しさ」を奪われた人は依然として多いんだろうなあと。 でも、ようやく飲み屋が悪者ではなくなってきたムードは感じます。長らくの悪者扱い、本当にきつかったなあ。...

未来の飲食店

来年のことを言うと鬼が笑うというけれど、鬼って基本的に恐い存在だから、笑ってくれるならばそっちの方がいいじゃん、などと思ってしまう岩須です。どうも。 今日はちょっと未来について考えてみたいと思います。   AIの登場によって、いろいろな職業が奪われるという話はよく聞きますよね。一方で、どれだけ技術が発達してもAIでは代替できない職業もあるからそっちを目指した方がいい、なんてのもよく聞く話です。 飲食店はどっちか。 すでに、タッチパネルや配膳ロボットの導入などで、スタッフが少なくても回る店をつくっている大手チェーン店が増えてきています。 麺類の全自動調理ロボットなんかもあるし、AIで来客予測をして適正な発注をするシステムもある。 おそらく今年から来年にかけては、コロナ禍の揺り戻しで飲食店需要が伸び、設備投資できる会社が増えて、自動化がどんどん進むと思います。 ですが、やはり「人に寄り添う」仕事だけは、依然としてAIや機械が不得意なジャンルの仕事です。 作っている人の思いがこもった料理。あったかいサービスや人とのふれあい。そういう人間くささが好きだと思うお客さんも依然としていると思います。 だから今後は、「自動化が進みまくっている超合理的な店」が増える一方、「中にいる人の人間くささこそが価値になっている店」の存在感も増す。お客さんはそのときのモードによってそれらを使い分ける。僕らは後者の方向性を頑張る。 そんな感じになっていくのかなと思いますが、どうでしょう鬼さん。   じゃあ、ソムリエの仕事はどうなのか。 ソムリエの業務内容には「自動化できる部分」と「自動化できない部分」があると思っています。 自動化できるのは、たとえば、発注管理、在庫管理、ワインリストの更新。それから、お客さまの趣向を覚えて、次回来店時にお好みのものが提案できるデータを用意することも機械でできそうです。 自動化できないのは、飲み物や料理の提案。ワインの鮮度管理。テーブルの空気を読んで、説明の仕方や長さを変えること。旅行客にこの町のおすすめを伝えること。今日は記念日なんですね、おめでとうございます、と一緒に喜ぶこと。そして笑顔。 そんな感じかな。 さらに自動化の流れが進むならば、これから磨くべきなのは自動化できない部門の仕事ということになるでしょう。 中でも考えなきゃいけないのが、ワインの提案方法です。 ソムリエの仕事の大きな部分を占めているのは、ワインのことをお客さまに伝えながら提案することです。 ただ、ワインの情報って、ラベルの写真を撮ってアップロードすれば、そのワインがどんなワインかある程度わかるアプリがすでにあります。ワインは、ソムリエにしかわらかないもの、という時代は終わっちゃったのです。 今の時代、下手をすると、お客さまのほうがワインに詳しいなんてこともあります。 なので、情報を頭に入れているだけでは、ぜんぜんダメなのです。 やるべきなのは、「ワインを提案する」ことだけではなくて「お客さまの様子を察知して、今日の食事がいいムードになりそうな提案をする」ことだと思います。 僕の場合、ボクモでやっているのは、たとえばボトルワインならば、まず泡、白、赤、をヒアリングします。そして、おすすめのワインを通常3本くらい、多いときで5、6本をテーブルに並べて、お客さまに説明をします。するとそこから会話が広がっていきます。 「今の説明だとたぶんこれが好みの味だよなあ」 「いや、この可愛いラベルも気になるよ」 「じゃあソムリエさん的には、注文した料理といちばんあうと思うのはどれ?」 そんなことをわいわい話しながら決めていくと、スタートからテーブルの雰囲気があったまり、そのあとの食事の盛り上がりにスムーズに繋がっていくことが多いです。...