ワインにまつわる映画を観てきました。
映画のタイトルは、「シグナチャー 〜日本を世界の銘醸地に〜」。
山梨のワインがどのようにして今のような高い品質のものになっていったのかを、ひとりのワイン醸造家の成長物語と重ねて描いた映画です。
(ボクモワインでもニュース&雑学記事でまとめてあるので、ぜひご覧ください ▶シャトー・メルシャン安蔵光弘さんの映画「シグナチャー〜日本を世界の銘醸地に〜」が11月公開! )
ジャンルとしては「事実に基づいた映画」。
2018年のワイン映画「ウスケボーイズ」の続編、いや、関連作と言った方が良いのかな。同じ監督さんが撮っています。
主人公のモデルは、現在も現役のワインメイカーとして活躍する安蔵光弘さん。シャトーメルシャンを世界品質に押し上げた方です。
僕は、ウスケボーイズは原作のノンフィクションが好きで、映画化されたときも映画館で見て良かったと思いました。やっぱり、ぶどう畑は、大画面で見るととても美しい。
なので、シグナチャーもできれば映画館で観たいと思っていました。しかし、ちょうど息子の入院や通院が上映期間と重なってしまいました。
そして、映画館のスケジュールを見ると、あっという間に上映期間が終わっちゃうことが判明。おいおい2週間は短いよ!と焦りましたが、なんとか最終日に滑り込みで観ることができました。
さて、内容は。
あ、そうだ。
映画の内容って、こういう色々な方がご覧になるところでは、書いちゃいけないルールでしたっけ。ならば、何を書いたらいいんだろう。
・・・と、リビングでぶつぶつ言っていたら、学校から帰ってきた娘がこんなことを言ってきました。
「あのさあ、今どき映画って、ここからネタバレですって前置きがあれば、内容は書いていいんだよ。」
え?そうなの?
今どき、この情報が溢れている中で、中身を知りたい人も多いはず。もし、見たくない人は「ここからはネタバレです」を見た瞬間にさっとその画面をスワイプして見ないようにすればいい。
見ちゃった、知りたくなかった、書いたやつが悪いなんて、前時代的。だって、その人は選択肢を与えられた上で、自分で見ることを選択しているわけでしょ。
だそうだです。
なるほど。そう言われればそんな気もしてきた。それに、各種動画サイトで配信が始まるのはちょっと先になると思うので、その頃はみんなこの記事のこと、忘れてるよね。ね?
なので、ここは娘世代のルールに乗っかるとします。
いきます。ここからはネタバレです!!!
ストーリーを箇条書きにします。
- 主人公の安蔵光弘は東大大学院卒のエリート。ワインづくりを志し、メルシャンに入社。
- 山梨のシャトーメルシャンに配属され、その独身寮の食堂で出会ったのが日本ワインのパイオニア・麻井宇介(あさいうすけ)。
- 実は、麻井宇介はメルシャンに優秀な人材が採用されたことを知り、その新入社員に会うために独身寮に来たのだった。
- 麻井は安蔵と話すうちに、彼を「日本ワインを世界品質へ」という夢を共有する後継者にしようと思った。
- 麻井は自らのプロジェクトに安蔵を誘うが、安蔵はメルシャンでやるべきことがあると固辞。
- それでも麻井は、安蔵のことを気にかけ折りにつけアドバイスを贈る。そのアドバイスを受け、安蔵は成長していく。
- 病床の麻井から「君が日本ワインを背負わなくて、誰が背負うんだ」と背中を叩かれ、安蔵は日本ワインを世界に誇れるものにしようと決意した。
てな感じ。
もしかしたら、人にとっては、ああ、メルシャン社内の小さな出来事ね、と思うかも知れませんが、さにあらず。
メルシャンは、日本のワイン界では横綱です。その横綱は、海外のワインづくりを学び、試行錯誤しながら磨いた技術を、他のワイナリーに開示しています。
メルシャンひとりが大きくなればいいのではなく、山梨ワインが世界に広まればいいのではない。日本ワインが日本固有の個性を持ったワインとして、世界に羽ばたく必要がある。これが、麻井さんの哲学です。
それを安蔵さんが受け継ぎ、ボルドー赴任で得た経験を本に書いて多くの人に伝えるなどして、「知識の共有」をずっと実践してきたことが、日本ワインが飛躍的に品質が向上する一因となっています。
「みんなでいいものをつくろうぜ」という日本のものづくりのかっこよさ。その原点を知ることができるのが、この映画なのかなと思いました。
ただ、この映画を観る上で、僕が注意点かな、と思うのは・・・
- 事実を元にした作品なので、あっと驚く伏線の回収や、期待からの裏切り、みたいなダイナミックな筋の起伏がない。
- ワイン用語が容赦なく出てくる。用語解説はほとんどない。
- ワインにまったく興味がない人は、あんまり入り込めないかも。
- 前作、というか、関連作「ウスケボーイズ」を観ておいた方が、より楽しめる(キャストが被っているので、へえ、今回はそうなのね、のお楽しみがある)
・・・これ、完全に主観なので、真に受けないでくださいね。あくまでも通りすがりの僕の意見です。
あ、そうそう、もうひとつこの映画を語る上で、大事な要素があります。それは「ニュージーランドワイン」の存在です。
劇中には、ニュージーランドワインが出てきます。銘柄は「プロヴィダンス」。
「あの新興国ニュージーランドでも、こんなすごいワインが出来るんだ。ならば日本でだって、きっとやれるはずだ。」
そんな、麻井さんや安蔵さんのような日本ワインの重鎮を奮い立たせるきっかけとなったのがニュージーランドワインである、という描写があります。
やるな、ニュージー!
プロヴィダンスは、世界の著名ワインが並ぶブラインドテイスティングの大会で、ボルドー産を破って1位を獲得したことで知られる、いわゆるNZのカルトワインです。
今やなかなか手に入らないワインですが、一応、1本だけちょっと古めのヴィンテージのものがボクモのワインセラーに眠っています。
いつかシャトーメルシャンの「シグナチャー」(映画のタイトルにもなっている最高級ワイン)と比較して味わってみたいなと思います。