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息子との3日間

ソムリエブログ

息子が足の手術をしました。そして6日間の入院を経て、家に戻ってきました。

松葉杖必須の生活になり、まだ自力では学校に行けないので、この月・火・水は車で学校まで朝夕、送り迎えをしました。

片道30分ちょっと。期せずして、それが46歳の父親と16歳の息子の久しぶりの二人きりの時間に。

普段は、生活する時間帯が違うので、あまり会話はありません。よくて質問に対して単語ひとつ。サーブ、レシーブ、以上。

でも、この3日間は、合計2時間近くの密室タイムとなりました。

息子にとっては面倒な時間だったかも知れないけれど、父親にとってはなかなか貴重な会話の時間でした。

いつも家族で車に乗るときは、奥さんが助手席、子どもは後部座席。でも、今回は息子を助手席に座らせました。

すると見える景色が全然違うようで、息子からサーブを打ってくることも。

「あ、これって“チカラマチ”って言うんだよね。」

名古屋屈指の難読地名「主税町」の看板もよく見えるらしい。

それをきっかけに、

「じゃあ、あの矢印の標識はどんな意味かわかる?」

「えー、なんだろう。一方通行かな?」

「正解!」

初日はそんな感じで弾んで、学校のこと、塾のこと、いろいろ話が転がりました。

2日目は、僕の仕事のことも。

「今、ワイン通販でブラックフライデーのセールやってるんだけどさ、高校生にとって、ブラックフライデーって身近?」

「いや、ぜんぜん。ああやってるな、くらい。」

「存在は知ってるんだ。」

「知ってるも何も、うちら世代はブラックフライデー・ネイティブでしょ。」

???

ネイティブ?

どうやら、この場合のネイティブは「デジタルネイティブ」「スマホネイティブ」のネイティブの使い方で、産まれたときから当たり前にあったもの、ってことらしい。

本当に?

僕的には、ブラックフライデーってここ数年の盛り上がりかなと思っていたが、彼にしてみたら、物心ついた頃からやっていたようで。

「そうか、もうそんなに浸透しているんだな。」

「してるでしょ。黒いパンダ、もうずっとあるでしょ。」

あ!そうか!

イオンがやってるブラックフライデーのキャンペーン、黒いパンダのキャラクターなんだっけ。なるほど、あのインパクトが強かったわけだ。

そう考えると、キャッチーなキャラクターって大事だなあ。

日本でいちばん有名なニュージーランド企業「ゼスプリ」のキウイフルーツも、あのキャラクターで覚えてるところもあるからなあ。

これからニュージーランドワインがメジャーになるには、なにか目を引くキャラクターがあった方がいいのかも・・・なんて話をしました。

 

そして、送迎最終日の水曜日。

学校の近くで車を駐めて、校門から出てくる息子を待っていました。

時間が来ると、ルームミラーに松葉杖の息子。その隣には息子のカバンを持ってくれている友達の姿が。

車を降りて、友達に「手伝ってくれてありがとうね」と声をかけ、カバンを受け取りました。

その友達が、僕に「いえ」と、ひとこと言ったあと。

息子にかけた言葉に、しびれました。

「じゃあね、また明日!さらばだ!」

右手をひょいと上げて、ニコッと笑ってそう言い放ち、彼は駅の方へと去って行きました。

・・・か、かわいい。

息子によると、彼は漫画や小説が大好きなんだそう。中でも歴史ものが好きで、新撰組にハマっているらしい。なるほど、だから「さらばだ!」なんだ。

それにしても、あの明るい「さらばだ!」はよかった。あの明るさのおかげで、帰りの車内は、3日間でいちばん話が弾んだ気がする。

良い友達に恵まれていて良かったなあ。そしてあんな明るい友達がいることを知れて、トーチャンは良かったぞ。

ハンドルを握る僕は言います。

「これからしんどいリハビリがはじまるな。」

助手席の息子はスマホをいじりながら答えます。

「そうだね。でも完治したら、さっきの友達とUSJに行くんだ。」

そうか。いい目標を作ったな。それならリハビリ頑張れるな。

そんな会話が出来た月・火・水。

たぶん、僕にとっては忘れられない3日間になったと思います。

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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