前にも書いたことがあると思うのですが、僕は文章を書くのはそれほど得意ではないです。
ラジオのライターの仕事とか、通販ショップの記事とか、週に一度のこのブログとか、書いている時間はまあまあ長いのですが、「ああ、上手く書けたなあ」と思うことは稀です。
大学は文学部でした。でも、恥ずかしながらそれは「文学大好き」という理由ではなくて、あまりに数学ができなさすぎて、二次試験で数学がないところという消極的な理由での選択でした。
なので、大学に入り、休み時間になるとみんな小説を読んでいるのを見て、驚愕しました。
やばい、俺、なんにも文学のこと知らないぞ。部屋の本棚には星新一のショートショートくらいしかない。
そう思って、そこから慌てて村上春樹を読みました。そして東野圭吾、伊坂幸太郎、恩田陸。本屋に平積みされているのを順番に読みました。
でも、やっぱり「本物の本好き」からすると、だいぶ浅い。ちゃんとした文学部生は太宰治とかの話をしている。そういうのも読むには読んだけど、やっぱり東野圭吾の方が好みだなあ、となる。ゴッホより普通にラッセンが好き現象。
そうこうしているうちに、ラジオ局でアルバイトをはじめて、原稿を書く仕事をやるようになってしまった。入ってすぐ「文学部?なら書けるだろう。」とディレクターに言われ、コーナー原稿を担当することになってしまった。あれは確か、ポケベル会社の中部テレメッセージがスポンサーの番組だったなあ(隔世の感すごい)。
当然、急ごしらえ文学部生の僕が、そんなすらすら書けるわけもありません。うんうん唸りながら大学の講義室に原稿用紙を持って行って、講義中にバレないように原稿を書いたりしていました。
その後、小林克也さんの番組の担当になり、音楽ネタの原稿やコント原稿を書くことに。
いやあ、あの時期はしんどかった。1週間頭をひねって書いた原稿を生放送直前のスタジオでダメ出しされ、オンエアがはじまっているのに冷や汗をかきながら書き直しをした経験、数えきれません。
ああ、俺って才能ないな、と何度も何度も思いました。
ただ、振り返ると、あの時期が自分の成長期だったのかもな、とも思います。これまでろくに本も読まず、文章を書いてこなかったやつが、なんとかプロが納得するものを捻り出さなきゃいけない。ならば、本を読んで、自分の書くための筋肉を鍛えなければいけない。そう思って、あの時期は通勤の電車の中でいつも本を読んでいました。演劇にも行っていたし、映画もまあまあ観ていたなあ。
その後、ラジオの現場を離れて飲食をやることにしてから、小林克也さんから直接オファーを頂き、ニッポン放送、NACK5、bayfmの3局でレギュラーのお仕事をさせていただいております。今はだいたい月に10本くらい。
いちばん長く続いているニッポン放送の番組を、ありがたいことに毎週聴いてくださっているボクモの常連さんがいます。その方が「前回の放送、良かったですよ」なんて言ってくださったら、思わずワインを多めに注いでしまいます。
ただ、そんな中、ひとつだけどうしても苦手な仕事があります。
それは月に1回当番が回ってくるNACK 5のお仕事。LOVE TIMEという、愛にまつわるラジオドラマを音楽を交えながらお届けするコーナーなんですが、まあそれが難儀です。
ラジオドラマって、何回書いても上手く書けた気がしない。小説家って凄いなって心底思います。そして、元となる自分の恋愛経験がなさすぎます。これ致命的。
この仕事のオファーがあったとき、最初は「いや、僕にはちょっと書けないかもしれないです」と言いました。でも、苦手な分野であっても、依頼されるってことは自分が伸びるチャンスかもと思いなおし、こう言いました。
「毎日カウンターでお客さまと色んなお話をしていて、たまには恋愛の話になることもあるので、そんなところから物語を広げる感じなら、なんとか書けるかもしれないです。」
「じゃあ、それでいいから、頼むよ。」
・・・甘かった。
早々にやり尽くしてしまったよ、その戦法。
最初はお客さまが話してくださることから発展させて書いたりもしたけれど、あっという間にネタ切れです。そりゃそうだ。恋愛トークばかりしているわけはないし、仮に恋愛トークになったとしても、みんながみんなドラマティックな恋をしてるわけじゃない。
今はもう、ただの僕の妄想をこねくり回して、なんとかえいやっと納める感じになっています。
毎回、締め切りが近づくと、胃が痛みます。
どなたか、ご自身の恋愛事情を、ボクモのカウンターで話しにきてほしいです。ネタ、プリーズ。もちろん、個人情報は守りますので。ワイン、多めに注ぎますので。
「やだなあ、あの店に行くと恋愛事情を根掘り葉掘り聞かれるのか」と思ったあなた。そうじゃありません!あくまで話の流れで恋愛トークになったときのみ、ちょこっと参考にさせていただいている程度のことなので。
ちなみに、今、書いていて楽しいのは、ニュージーランドワインの総合サイト「NZ Wines(ニュージーワインズ)」に寄稿しているコラム。
やっぱり少しは自分の経験値がある話の方が書きやすいです。当たり前ですね。文章を書くって、その人の中にあるものを切り出す作業ですもんね。
ニュージーランドワインがどうやったらもっと広まるかについて書いています。ご興味のある方、よかったら。