「自然派ワイン」や、「オーガニックワイン」「ビオワイン」など、人や自然に優しいワインを表す言葉は多く存在します。しかし、実はその1つ1つの言葉に明確な基準やルールがない場合があります。特に「自然派ワイン」という言葉は、定義があいまいで、使う人によって意味合いが異なることがあります。
ここでは、フランス語の「ヴァン・ナチュール」を日本語に訳したものとして解説します(英語では「ナチュラルワイン」が相当します)。
ヴァン・ナチュールは、できるだけ自然に寄り添い、ぶどう本来の個性を引き出すことを目的としています。そして、その自然の力を引き出すための取り組みは、「ぶどうの栽培」と「ワインの醸造」の両方で行われる必要があります。
多くのヴァン・ナチュールには、以下のような特徴があります。
- ぶどうの栽培には農薬や化学肥料を使用しない
- ぶどうが育つ畑にも、化学的な除草剤などは使用しない
- 発酵時に、野生酵母(自然酵母)を使う
- 亜硫酸塩(酸化防止剤)の不使用、または最小限の使用
- 清澄や澱引きをしない
化学物質に頼らず、人工的なものを極力避けるためには、きめ細かな配慮や、手間暇がかかります。
例えば、農薬を使用しないことは、ぶどうが病気にかかるリスクが高まります。また、野生酵母で発酵させると、発酵のコントロールが難しいため、発酵不良になったり、できあがりの味わいにばらつきが出ることがあります。亜硫酸の無添加、清澄や澱引きをしないことは、ワイン内の好ましくない微生物が活性化するリスクが高まります。
しかし、こうしたリスクを管理してつくられるヴァン・ナチュールは、そうでないワインと比べて非常に複雑な美味しさをもったワインになる傾向があります。そういった魅力的な味わいを追求してヴァン・ナチュールの生産に取り組むワイナリーは、年々増加傾向にあります。
ただ、先日したとおり、様々なリスクに対して管理が行き届いていない場合は、欠陥臭のするワイン、汚染されたワインが出来上がってしまうこともあります。
自然派ワインの代表的なぶどうの栽培方法には、ビオロジック農法や、ビオディナミ(バイオダイナミック)農法と呼ばれるものがあります。
ビオロジック農法は、主に農薬や化学肥料を使わない農法を指します。
一方、ビオディナミ農法は、天体の動きや地球と宇宙の関係に基づいた暦を使い、牛の角や水晶粉などの特殊な物質を農業に取り入れるなどした独特な自然農法です。
ニュージーランドではまだ少数ではありますが、自然派ワイン(ヴァン・ナチュール)とカテゴライズされるワインも存在します。