ソムリエ岩須(いわす)のブログ

いい春になりそうな予感

この春は、いい春になりそうな予感です。 なぜなら、このところ、トントントーンといいことが続いているから。ちょっとした好循環とでもいいましょうか。 まあ、ご覧の方にとっては、他人のいいことなんて知らんがなという話でしょうが、もしかしたら、僕のいいことが誰かのいいことに連鎖することもあるかもな、とも思うので、勝手ながらちょっと書きます。   いいことその1。 ボクモのスタッフ、良い方が採用できた。 これまでボクモは、求人媒体よりも、ご紹介でスタッフを採用することが多かったのですが、今年に入って、久しぶりに求人の広告を出しました。 約束したのに来なかった方も2人ほどいましたが(想定内)、思ったよりもたくさんの方と面接をすることが出来ました。 ひとりの女性が面接の最後に「あの、、、○○市の○○ってご存じですか?」と知り合いの名前を言うので、ああ、その方なら、ずいぶん前からお世話になっている方で、折にふれて僕やシェフのことを気にかけてくださっていますよと答えると、なんとびっくり。 「私、その人の姪なんです。」 あらまあ! ということは、ご紹介で来ていただいたのかな、と思ったのですが、そうではないようでした。 ボクモの求人に応募するときに、どんな店なのかいろいろ調べている中で、岩須というオーナーと自分の叔母さんがSNSで繋がっていることに気付いたそう。 でも、叔母さんには特にボクモの面接に行くよ、とは言わずに来たのだそうです。 ご縁ってあるのだなあ。 そして、当然「あの優しい方の姪っ子さんならば、間違いないだろう」というのも選考理由に加わりまして、めでたく採用させていただきました。 もう5,6回入ってもらっていますが、先輩ゆりちゃんの教え上手なのにも助けられて、たいへん良好な感じです。ありがたい。 いいことその2。 娘が大学に合格した。そして友達といっしょにボクモにご飯を食べに来た。 コロナ禍の受験生、本当にたいへんだなあと思いました。そして、受験生の家族もコロナのせいでピリピリ増し増し状態だった気がします。 この1年は、大きな心配事が家全体にどーんとのしかかっている感じでしたが、その中で、娘、よく頑張りました。 合格発表後すぐに、高校3年間仲良くしていた友達とボクモに食事に来てくれました。友達はお店に差し入れのクッキーを持って来てくれてびっくりしました。まあ、よくできた友達に恵まれて、娘よかったなあ。 そして店内で楽しそうに話していて、見ているこちらも嬉しかった。シェフや常連さんからサプライズのプレゼントをいただいたりもして、なんだか楽しそうだった。 初めて見る「職場で働く父」はどんなふうに映ったかな。 いいことその3。 金・土・祝前日は満席の日が増えてきた。 禍が過ぎ去ろうとしている証だと思います。今週水曜日は祝前日で、おかげさまでぎっちり満席でした。その光景を見て、ああ、ここまでちゃんと飲食店らしい姿って3年ぶりくらいかもなあ、としみじみ思いました。 ただ平日は相変わらず、あらまあヒマねえ、の日もけっこうあります。 コロナによって「平日に飲む楽しさ」を奪われた人は依然として多いんだろうなあと。 でも、ようやく飲み屋が悪者ではなくなってきたムードは感じます。長らくの悪者扱い、本当にきつかったなあ。...

未来の飲食店

来年のことを言うと鬼が笑うというけれど、鬼って基本的に恐い存在だから、笑ってくれるならばそっちの方がいいじゃん、などと思ってしまう岩須です。どうも。 今日はちょっと未来について考えてみたいと思います。   AIの登場によって、いろいろな職業が奪われるという話はよく聞きますよね。一方で、どれだけ技術が発達してもAIでは代替できない職業もあるからそっちを目指した方がいい、なんてのもよく聞く話です。 飲食店はどっちか。 すでに、タッチパネルや配膳ロボットの導入などで、スタッフが少なくても回る店をつくっている大手チェーン店が増えてきています。 麺類の全自動調理ロボットなんかもあるし、AIで来客予測をして適正な発注をするシステムもある。 おそらく今年から来年にかけては、コロナ禍の揺り戻しで飲食店需要が伸び、設備投資できる会社が増えて、自動化がどんどん進むと思います。 ですが、やはり「人に寄り添う」仕事だけは、依然としてAIや機械が不得意なジャンルの仕事です。 作っている人の思いがこもった料理。あったかいサービスや人とのふれあい。そういう人間くささが好きだと思うお客さんも依然としていると思います。 だから今後は、「自動化が進みまくっている超合理的な店」が増える一方、「中にいる人の人間くささこそが価値になっている店」の存在感も増す。お客さんはそのときのモードによってそれらを使い分ける。僕らは後者の方向性を頑張る。 そんな感じになっていくのかなと思いますが、どうでしょう鬼さん。   じゃあ、ソムリエの仕事はどうなのか。 ソムリエの業務内容には「自動化できる部分」と「自動化できない部分」があると思っています。 自動化できるのは、たとえば、発注管理、在庫管理、ワインリストの更新。それから、お客さまの趣向を覚えて、次回来店時にお好みのものが提案できるデータを用意することも機械でできそうです。 自動化できないのは、飲み物や料理の提案。ワインの鮮度管理。テーブルの空気を読んで、説明の仕方や長さを変えること。旅行客にこの町のおすすめを伝えること。今日は記念日なんですね、おめでとうございます、と一緒に喜ぶこと。そして笑顔。 そんな感じかな。 さらに自動化の流れが進むならば、これから磨くべきなのは自動化できない部門の仕事ということになるでしょう。 中でも考えなきゃいけないのが、ワインの提案方法です。 ソムリエの仕事の大きな部分を占めているのは、ワインのことをお客さまに伝えながら提案することです。 ただ、ワインの情報って、ラベルの写真を撮ってアップロードすれば、そのワインがどんなワインかある程度わかるアプリがすでにあります。ワインは、ソムリエにしかわらかないもの、という時代は終わっちゃったのです。 今の時代、下手をすると、お客さまのほうがワインに詳しいなんてこともあります。 なので、情報を頭に入れているだけでは、ぜんぜんダメなのです。 やるべきなのは、「ワインを提案する」ことだけではなくて「お客さまの様子を察知して、今日の食事がいいムードになりそうな提案をする」ことだと思います。 僕の場合、ボクモでやっているのは、たとえばボトルワインならば、まず泡、白、赤、をヒアリングします。そして、おすすめのワインを通常3本くらい、多いときで5、6本をテーブルに並べて、お客さまに説明をします。するとそこから会話が広がっていきます。 「今の説明だとたぶんこれが好みの味だよなあ」 「いや、この可愛いラベルも気になるよ」 「じゃあソムリエさん的には、注文した料理といちばんあうと思うのはどれ?」 そんなことをわいわい話しながら決めていくと、スタートからテーブルの雰囲気があったまり、そのあとの食事の盛り上がりにスムーズに繋がっていくことが多いです。...