近年、日本でもじわじわと人気が出てきている「ニュージーランドワイン」。
強烈な個性をもつフルーティーな白ワイン「ソーヴィニヨン・ブラン」が、全生産量の7割という圧倒的なシェアをしめることから「NZワインといえば、ソーヴィニヨン・ブラン」というイメージが世界でも定着してきています。
しかし実はNZは、高品質な赤ワインの名産地としても広く知られているのです。
中でも力を入れ栽培しているのが、ワイン愛好家にも根強い人気のある「ピノ・ノワール(Pinot Noir)」。NZは気候や土壌の条件などがピノ・ノワールの栽培に適していることがわかり、今では世界有数のピノ・ノワールの産地として認められるようになりました。
この記事ではピノ・ノワールを中心に、NZの赤ワインの魅力や、それぞれの産地や品種の特徴、さらにソムリエ岩須がおすすめする厳選10本をご紹介致します!
ワイン初心者から愛好家の方まで、自分好みのワインを見つけて頂けるよう、おすすめワインを厳選しました。まだまだ伝わりきっていない、NZの赤ワインの魅力を知って頂ければと思います!
ニュージーランドの赤ワインの特徴
具体的なおすすめワインの紹介に入る前に、NZの赤ワインの特徴を簡単に解説します。
NZ赤ワインの主なぶどう品種は?
冒頭でもお話した通り、NZ赤ワインの主力品種は、なんといっても「ピノ・ノワール」。
2022年の最新のヴィンテージデータでは、ピノ・ノワールの収穫量は昨年と比べなんと1.5倍以上に増え、品種別の収穫量ランキングでは昨年よりも順位を一つ上げ第2位になりました。
NZのピノ・ノワール需要が高まっている様子がわかりますね。
ピノ・ノワールは、フランス・ブルゴーニュ地方原産で、明るい色調と華やかな香り、上品な味わいで人気の品種。NZのピノ・ノワールは豊かな果実味が感じられるのが特徴です。
その他には、ピノ・ノワールと比べると量は少ないものの、
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- メルロー
- シラー
- マルベック
などのぶどう品種も生産されています。
NZの赤はピノ・ノワールが中心ですが、他にもボルドー品種などの高品質なワインもたくさんあります。
記事後半では、おすすめボルドータイプのワインをご紹介していくので、濃いめのワインがお好きな方はぜひそちらをチェックしてみてください!
産地の違いを楽しもう!エリアごとの特徴を紹介
NZは日本と同じように、南北に細長い地形の国。赤ワインの産地は、国内の様々な地域に点在しており、それぞれその土地の気候や土壌の条件を活かしたワインづくりが行われています。
それでは、地域別の特徴をみていきましょう。
オークランド(ワイヘキ島など)
NZ最大の都市でもあるオークランド。幻のNZワインと呼ばれる「プロヴィダンス」のワイナリーがあるマタカナや、高級ワインを生み出すワイナリーが立ち並ぶ島・ワイヘケ島などを有する重要な産地です。
ホークス・ベイ地方
ホークス・ベイ地方は、国内第2位の栽培面積を誇る産地。赤ワインの主要品種はメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのボルドー品種やシラーです。
ワイララパ地方(マーティンボロなど)
ワイララパ地方の中で、特に有名なのはサブリージョン「マーティンボロ」です。ブルゴーニュにとても良く似た栽培条件を持ち、プレミアムなピノ・ノワールのワインが生み出されています。
マールボロ地方
マールボロ地方は、NZワインの最大にして最重要産地です。主要品種はもちろん白のソーヴィニヨン・ブランですが、赤のピノ・ノワールの名産地でもあります。NZのピノ・ノワールの生産量では、このマールボロがトップです。
カンタベリー/ワイパラ地方
南島の東部に位置する、カンタベリー/ワイパラ地方は、多様な土壌を活かし、タイプの異なるピノ・ノワールが生産されています。
セントラル・オタゴ地方
セントラル・オタゴ地方は、NZ南島のピノ・ノワールの名産地。南緯45度に位置し、世界最南端のワイン産地の一つです。
南島を南北に走るサザンアルプス(山脈)が雨雲を防ぐため、山の東側に広がるこの地域は、極端に乾燥しています。また、昼夜の寒暖差があり、ピノ・ノワールを育てるのに適した気候条件が揃っており、アメリカのオレゴン、フランスのブルゴーニュと並ぶ「世界三大ピノ・ノワールの産地」として知られています。
赤ワイン好きの方は主に、「濃い味わいが好きな方」と「優しい味わいが好きな方」に分かれると思います。
そこで今回は、優しい味わいのピノ・ノワールと、濃い味わいの赤ワインを、それぞれご紹介していきます!
シャングリラ ピノ・ノワール
ワイナリー名 | ブラッケンブルック(Blackenbrook) |
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ぶどう品種 | ピノ・ノワール |
産地 | ネルソン |
ヴィンテージ | 2020 |
希望小売価格 | 2,970円(税込) |
まずご紹介したいのは、フルーツ感たっぶりの「シャングリラ ピノ・ノワール」です。
ワイナリーのブラッケンブルックがあるのは、年間を通じて日照量が豊富な「ネルソン」。
こちらのピノ・ノワールは、黒いベリー系の果実の風味が豊かで、渋味は控えめ。お食事とも合わせやすい、コスパの高い一本です。
食卓に一本あると、とても重宝すると思います。
パリサーエステート ペンカロウ ピノ・ノワール
ワイナリー名 | パリサーエステート (Palliser Estate) |
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ぶどう品種 | ピノ・ノワール |
産地 | マーティンボロ |
ヴィンテージ | 2020 |
希望小売価格 | 4,235円(税込) |
パリサーエステートが拠点を置くマーティンボロ地区は、NZの中で最もブルゴーニュに似た気候や土壌の条件が揃うといわれる産地。
ここでは、NZの特徴である「フルーティー志向」のピノ・ノワールではなく、その他の要素をバランス良く仕上げたワインが多くつくられています。
このピノは、とても柔らかい風味が特徴です。合わせる料理は、ハンバーグやラグーソースのパスタなどの挽肉料理や、ローストポークや豚の角煮などがおすすめです。
インヴィーヴォ セントラル・オタゴ ピノ・ノワール 2019
ワイナリー名 | インヴィーヴォ(Invivo) |
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ぶどう品種 | ピノ・ノワール |
産地 | セントラル・オタゴ |
ヴィンテージ | 2019 |
希望小売価格 | 4,620円(税込) |
こちらは、世界でも有数のピノ・ノワールの名産地「セントラル・オタゴ」から届いたワイン。
カシスやアメリカンチェリーのようなベリー系の果実味が強く、バニラやアーモンドなど、木樽に由来する香ばしい風味もしっかりと感じられます。
また、口当たりはソフトですが旨味が強く、飲み込んだ後も旨味と渋みがじんわりと口の中に残ります。この余韻をより楽しむには、少し脂身のあるお肉とあわせると良いでしょう。
マ・メゾン マーティンボロ ピノ・ノワール
ワイナリー名 | マ・メゾン (Ma Maison) |
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ぶどう品種 | ピノ・ノワール |
産地 | ワイララパ |
ヴィンテージ | 2018 |
希望小売価格 | 4,950円(税込) |
マ・メゾンは、ワイララパ地方のマーティンボロのワイナリー。このエリアは、ピノ・ノワールの本場であるフランス・ブルゴーニュ地方によく似た気候条件が揃っており、上質なピノ・ノワールが生産されています。
こちらのワインは、“NZの正統派”ともいえる一本。果実感が全体にありながら、複雑味はきれいにまとまっています。さらに飲み口がすっきりしているので、ワイン単体でも十分楽しめるスタイルです。
お祝い事や記念日など、ハレの日にもふさわしいピノ・ノワールだと思います。
キムラセラーズ マールボロ ピノ・ノワール
ワイナリー名 | キムラセラーズ (Kimura Cellars ) |
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ぶどう品種 | ピノ・ノワール |
産地 | マールボロ |
ヴィンテージ | 2021 |
希望小売価格 | 6,050円(税込) |
日本人生産者の活躍が目覚ましいNZでは、国内外で注目を集めるワインメーカーが誕生しています。キムラセラーズの木村滋久さんも、その一人。
世界最大規模の酒類コンペである「インターナショナル・ワイン・チャレンジ (IWC)2020」では、「キムラセラーズ マールボロ ピノ・ノワール2019」が見事ゴールドメダルを受賞しました。
木村さんによると「今回の2021も同じ手応えを感じている」とのこと。
その言葉通り2021ヴィンテージも、チェリーの果実味と樽のバランスが絶妙な見事な仕上がりになっています。もちろん今飲んでも十分美味しいのですが、熟成による変化も楽しめるでしょう。
フェルトンロード ピノ・ノワール バノックバーン
ワイナリー名 | フェルトン ロード (Felton Road) |
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ぶどう品種 | ピノ・ノワール |
産地 | セントラル・オタゴ |
ヴィンテージ | 2021 |
希望小売価格 | 8,800円(税込) |
フェルトン ロードは、セントラル・オタゴのピノ・ノワール人気の火付け役となったワイナリーです。
1997年に初リリースされたピノ・ノワールが、アメリカ、イギリスを中心に話題となり、瞬く間にその魅力が世界中に伝わりました。
こちらのワインは「エレガントとはこのこと」と実感できる一本。
プレゼントにも最適ですし、ワイン好きの方にも喜んで頂けるでしょう。
ここからはちょっと濃い目の赤ワインが好き!という方に向け、ピノ・ノワール以外のワインをご紹介していきます。
サザンクロス ホークスベイ・メルロ・カベルネ
ワイナリー名 | ワインポートフォリオ(Wine Portfolio) |
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ぶどう品種 | メルロー51%、 カベルネ・ソーヴィニヨン43%、 カベルネ・フラン6% |
産地 | ホークス・ベイ |
ヴィンテージ | 2016 |
希望小売価格 | 2,420円(税込) |
こちらのワインは、NZでは珍しい「熟成感がありながら、手頃な価格」のバリューワイン。
メルローの滑らかさ、穏やかさが楽しめます。南十字星を思い浮かべながら飲みたい赤ですね。
このワインは、鶏の照り焼きや豚の角煮など、醬油とみりんを使ったお肉の料理に合います。
また、鯖の味噌煮や茄子の味噌炒めなど、味噌を使った料理とも好相性です。
ヴィラマリア プライベートビン メルロー / カベルネ・ソーヴィニヨン / マルベック
ワイナリー名 | ヴィラマリア (Villa Maria) |
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ぶどう品種 | メルロー49%、カベルネ・ソーヴィニヨン45%、 マルベック6% |
産地 | ホークス・ベイ |
ヴィンテージ | 2020 |
希望小売価格 | 2,200円(税込) |
非常にコスパの高いワインとして定評がある「ヴィラマリア」。
こちらのワインは、本場フランス・ボルドー地方のスタイルを踏襲していて、コクと渋みがはっきりとあるタイプに仕上がっています。このヴィンテージはカベルネの比率が上がり、飲みごたえがアップ。この価格でこの味わいは他のNZ産とは一線を画します。
ボルドーワインとの違いは、NZワインの特徴である「フルーツのニュアンス」がしっかりと感じられること。そのフルーツ感を中心とした濃厚な味わいと、余韻に残る心地よい渋みが絡み合い、素晴らしくバランスの取れた味わいとなっています。
ぜひ、お肉料理と合わせてみてください。
トリニティ ヒル ホークス・ベイ シラー
ワイナリー名 | トリニティ ヒル (Trinity Hill) |
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ぶどう品種 | シラー |
産地 | ホークス・ベイ |
ヴィンテージ | 2021 |
希望小売価格 | 3,850円(税込) |
NZの赤ワインは「ピノ・ノワール」「ボルドーブレンド(メルローやカベルネ)」がほとんどですが、「シラー」をつくる生産者もちゃんといるんです。
シラーの生産は北島に集中していて、このトリニティ ヒルもホークス・ベイ地方を代表するワイナリーのひとつです。
トリニティ ヒルがつくるワインはどれも個性豊かで上質ですが、中でもこのシラーはとてもコスパが高いと感じる一本です。はっきりとしたスパイシー感があり、ステーキなどのお肉料理と相性抜群です。
デスティニーベイ デスティナイ 2012
ワイナリー名 | デスティニーベイワインズ(Destinybay Wines) |
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ぶどう品種 | メルロー51%、カベルネ・ソーヴィニヨン21%、カベルネ・フラン15%、マルベック8%、プティ・ヴェルド5% |
産地 | オークランド |
ヴィンテージ | 2012 |
希望小売価格 | 23,430円(税込) |
ボブ・キャンベルMWがNZナンバー1と評した(2021リアルレビュー)ワイナリー、「デスティニーベイ」は、NZ屈指のリゾートアイランド「ワイヘキ島」にあります。
この島は別名「ワインの島」とも呼ばれ、島内には高級ワインをつくるワイナリーがひしめき合っていて、フランス・ボルドーのスタイルを踏襲した、凝縮感と渋みのある重めの赤ワインが名産です。
デスティニーベイがつくるのは3種類のボルドーブレンドのみというとてつもないこだわりを持っていて、このデスティナイはエントリーワイン。
この赤ワインは、メルロー由来の滑らかな旨みが特長です。脂身の旨いステーキ、すき焼きなどはとてもよくあいます。ぜひ記念日に味わってください。
最後に:NZピノ・ノワールの魅力をもっと!急成長した理由は?
「おすすめワインの紹介」ということで、うんちくは控えめにしたかったんですが…最後にもう少しだけ、伝えさせてください(笑)
NZワインの歴史は浅く、本格的にワインづくりがはじまってからまだ40年ほどしか経っていません。しかし、なぜこのような急成長を遂げることができたのかというと、その理由の1つに「力を入れて生産するぶどう品種を絞った」ということがあります。
白ワインは「ソーヴィニヨン・ブラン」に的を絞ったことで、その爽やかでフレッシュな味わいと香りが話題となり、あっという間にNZワインの名を世界に知らしめることとなりました。
そして、赤ワインも「ピノ・ノワール」に生産を集中させます。
ピノ・ノワールはワイン愛好家の中でも根強い人気のある品種ですが、その反面育てるのが難しい品種でもあります。しかしNZには、気候や土壌の条件が栽培に適している土地がいくつもあることが判明し、世界中からピノ・ノワールをつくりたいという熱意をもった知識や技術のある生産者を集めるきっかけとなりました。
その結果、NZは世界でも有数のピノ・ノワールの産地となり、ワイン愛好家も認める高品質なワインが次々と生まれています。
また地元の生産者もピノ・ノワールの栽培技術を学ぶため、積極的にフランスなどの海外に行って経験を積み、帰国後はNZのワインづくりの技術を総合的に上げることにも寄与しました。
さらにNZでは、ここ数年は新型コロナウイルスの影響で開催されていないものの、生産者同士の情報交換ができるイベント「Pinot Noir NZ」や、セントラルオタゴ地方のピノ・ノワールのお祭り「Central Otago Pinot Noir Celebration」が開かれるなど、地元の人々がピノ・ノワールを盛り上げようとする活動が積極的に行われています。
ピノ・ノワールに一極集中させる作戦は大成功!栽培品種を大胆に絞ったことで、NZでは白ワイン同様、赤ワインもまた短期間で急成長できたんです。
まとめ
「白」のイメージが強いNZワイン。ですが、実は赤ワインの名産地でもあり、特に高品質なピノ・ノワールで世界から注目を集めています。
繊細で優しい香りと味わいで人気を得ているピノ・ノワールには、デリケートで大量生産に向かないという一面がありますが、NZの生産者は小規模生産者が多く、彼らの丁寧なワインづくりがピノ・ノワールの栽培や醸造にも活かされています。
NZでつくられるワインは、ピノ・ノワール以外の品種もフルーティーな香りと味わいが特徴です。ぜひ、一度NZの赤ワインの魅力を体験してみてくださいね。