地球におけるワインの産地は無数にあり、その産地一つ一つにそこにしかない個性的なワインが存在する。そして、どんなに博識なソムリエでも、世界中のワインを飲み尽くすことは出来ない。よって、世にあるワインの格付けやランク付けは、たいがい専門家がチームを組んで評価している。
ただ、ニュージーランドは世界のワイン生産量のわずか1%。それくらいならば、専門的にやっていればひとりでも網羅できるんじゃないか。専門店をやりはじめた頃はそう甘く見ていた。
が、実際はとんでもなかった。 今、ニュージーランドのワイナリー数は700ほど。そのうち、日本に輸入されているのは100〜150。それぞれが仮に平均5銘柄持っているとすると、500〜750銘柄。さらに、各ワイナリーは毎年同じものを出してくるわけではなく、次々に新銘柄を投入している。うむむ。
やはりニュージーランドのような小さな生産国であっても、全ワイン制覇は個人では到底不可能なのだ。
しかし、だからこそ面白い。専門的にやってきたつもりでも、まだまだ新しい出会いがいつもあるのがいいのだ。
「追いかけて、追いかけてもつかめない、ものばかりさ」とチャゲアスが昔歌っていたが、人はつかめないからこそ、そのもどかしさに楽しさを感じるのだ。
今年もまた、新しい出会いが山ほどあった。そのたびに胸がときめき、そのときめきが次の1本を追い求める原動力となった。
さあ、そんな前置きをしたところで、今年最もときめいたトップ3、脳内のチーム岩須たちの合議により、以下に決定です!
第3位
¥3,960
木村滋久さんのシリーズの中でも、この辛口のリースリングがいちばんグッときた。香りを嗅いで口に含んだ瞬間、背筋がピンとなった。
ペトロール香はほとんどない。ピュアな青リンゴの果実味と長く続く余韻のミネラル感。絶妙なバランスだと思った。飲み終えてまた背筋がゆるむ。ああ美味しかった。向き合うべき、幸せリースリング。
第2位
¥6,380
秋に来店しイベントをやったトリニティ・ヒル。上級キュヴェのこのシャルドネは、そのときに初めて試飲した。そして度肝を抜かれた。
ニュージーランドのシャルドネといえば「果実味と樽香がせめぎあった結果、果実味の辛勝」といったものが多い。そんな中、こちらはステンレスタンク熟成で、はなから樽香に頼っていない。シャルドネ本来の深みで勝負している。その心意気が気に入った。ミネラル感しっかりの余韻で、ついついおかずに手が伸びる。
シャブリ先輩にも胸を張れる「シャルドネの本懐」を感じたワイン。見事に心を打ち抜かれた。
第1位
¥7,590
夜中に自宅で試飲して、椅子から転げ落ちた。
セントラル・オタゴの「テラ・サンクタ」は、彼の地では古豪のワイナリー。なのにわたくし、NZ専門と自称しておきながら、恥ずかしながら、ようやく今年になってこのシングル・ビーチ(小石の河岸のぶどう畑産)を試飲した次第。
「出会うのが遅すぎたねと 泣き出した夜もある」とGLAYは歌った。しかし僕の場合は「床に転げた夜がある」だ。
酸味はほどよい。ベリーの果実味、幾層ものスパイス、なめし革やきのこ。渾然一体となったその旨みのるつぼに、床に頭を打ちつけた僕は、「お見事です・・・」とうなった。
出会いは遅くなったけど、インパクトはもの凄かった。これからも僕の好きなNZピノであり続けることでしょう。
それにしても、何歳になっても、素晴らしいものに出会えたときにもらえる衝撃はたまらんです。
というわけで、ごく私的ではありますが、特にときめいた3本でした。どこかで誰かの参考になったら幸いです(12/31までセールやってますのでよかったら)。
今年もご愛顧頂いた皆さん、見守っていただいた皆さん、ありがとうございました。また来年も、共にときめき体験を追い求めましょうぞ。椅子から転げ落ちるようなやつをね。