ニュージーランドワインといえば ソーヴィニヨン・ブラン。
ソーヴィニヨン・ブランといえば マールボロ。
これは、NZワインを語る上で欠かせない重要な認識です。
日本で例えるなら、
- 八丁味噌といえば愛知
- 泡盛といえば沖縄
- リンゴといえば青森
といったように、ソーヴィニヨン・ブランというぶどう品種はマールボロ(Marlborough)地方の名産品なのです。
そして、それはマールボロという一つのエリアには収まらず、国を代表する特産品となっています。
ヨーロッパのワイン生産国と比較すると、まだまだ歴史の浅いNZのワイン。しかし、この地で素晴らしいワインが生まれることが知られると、国内のみならず世界中から「ニュージーランドでワインをつくりたい」という情熱を持った生産者が集まりました。
「ワインづくりに適した気候と土壌」という恵まれた環境と、それを活かそうとする生産者たちのたゆまぬ努力によって進化を続けるNZのワインづくり。
今回の記事では、そんなマールボロの魅力をお伝えしていきます。
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なっちゃん
Web系の会社に勤める29歳。もっとワインを楽しめるといいな、とワイン勉強中。
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みかさん
アパレル会社に勤務する35歳。ワインにハマり始めてる今、ワイングラスが気になってしょうがない。
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岩須
このサイトの監修を担当する、ソムリエ。自身が名古屋で営むバーでは、ニュージーランドワインを豊富に取り揃える。
NZワインの8割以上がマールボロ地方でつくられている
まず最初にお伝えしておきたいのは、
「NZワインの8割以上がマールボロ地方で生産されている」
ということです。
だから、「NZワインといえばマールボロ」なんですね。
NZワインは日本での流通量がまだまだ少なく、目にする機会もそれほど多くありません。その数少ないNZワインを、幸運にも酒屋さんやスーパーなどで見つけたら、おそらくそのラベルには「Marlborough」と書いてあるはずです。
この間コンビニで見つけたNZワインもそうでした!
そう、最近はコンビニでもちらほら見かけるようになりましたよね。編集部で確認している限りでは、それらはやはりすべて「マールボロ地方のソーヴィニヨン・ブラン」です。
マールボロ地方を、そしてNZを代表する白ワイン用ぶどう品種、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)。
この地域で育つソーヴィニヨン・ブランは、果実味がとてもゆたか。さわやかな柑橘系やパッションフルーツを強く感じられ、親しみやすい美味しさが魅力です。
ボトルのキャップを開けて注ぎ口に鼻を近づけるだけで「おっ」という声が漏れるほどの香り。
「白ワインってスッキリしていて好き」といった印象を持っている人に、ぜひとも一度体験してもらいたいワインなのです。
もちろんその他のワイン用ぶどうも、量こそ少ないものの高品質なものがつくられています。ソーヴィニヨン・ブランに次ぐ品種としては、赤ワイン用ぶどう品種のピノ・ノワールが挙げられるでしょう。
その他にも、シャルドネ、リースリング、ピノ・グリなどが生産されています。
マールボロ地方のソーヴィニヨン・ブランの魅力
まずはマールボロでつくられる、ソーヴィニヨン・ブランの香りや味わいの特徴をみていきましょう。
品種が持つさわやかさに加え、強烈な果実味が特徴
ソーヴィニヨン・ブランは、フランスのロワール地方とボルドー地方で古くからつくられてきたぶどう品種です。フランスのソーヴィニヨン・ブランは、当地の気候の影響から青草、ハーブ、レモンなどの爽やかな香りが特徴です。
しかし、マールボロ地方で生産されるソーヴィニヨン・ブランは、品種がもともと持つそれらの香りに、
- グレープフルーツなどの柑橘系フルーツ
- パッションフルーツなどのトロピカルフルーツ
の強烈な香りが加わり、さわやかさと飲みごたえを両立。果実味と酸味のバランスが素晴らしいワインが生まれるのです。
フランスではよりハーブが、NZではより果実が全面に出てくるのが特徴です。
この強烈な特徴が「独特なキャラクターを持った新しいワイン」として世界各国で評価され、どんどん栽培面積や生産量を増やしていくことになるのです。
豊かな自然、ゆったりとした時間が流れるマールボロ地方
マールボロ地方は南島の北東に位置する、自然豊かな地域です。ワイン産地としてあまりにも有名になりましたが、いまでも人口は少なく、ゆったりとした時間の流れる土地。
南北150kmに及ぶ海岸線は「マールボロ・サウンド(Marlborough Sounds)」と呼ばれます。
それはまるで絵葉書のように美しく、ボートやダイビング、釣りやハイキングなど、自然を満喫することのできるアクティビティも人気を集めています。
交通面では、NZでの主要な交通手段である飛行機の玄関口として、マールボロ空港があります。日本からの直行便はないものの、オークランドやクライストチャーチといった国内の主要都市間を結んでいます。
南島の北東に位置することで、北島からのアクセスも容易。クック海峡を渡るフェリーがピクトンという小さな港町に発着しています。
この地方の中心となる町は、ブレナム(Blenheim)。人口は3万人ほどの小さな町で、ここがマールボロ地方のワイナリー巡りやその他ツアーの拠点となります。
この地方には大小130余りのワイナリーが存在しています。
NZのワイナリーは「ブティックワイナリー」と呼ばれる家族経営の小規模なものがほとんどですが、ここマールボロには、恵まれた自然条件を求めてNZでは珍しい大規模ワイナリーも集まっています。
ワインづくりに恵まれた自然環境
マールボロ地方は、ワインづくりをする上で非常に恵まれた気候や土壌の条件を満たしています。
ただし、ワインをつくる上では、みなさんが想像する「恵まれた自然」とはちょっと違うかもしれません。
その条件とは、
- 豊富な日照量がある
- 1日の中で寒暖差がある
- 水はけの良い、痩せた土地である
です。
ワイン用ぶどうのお話をするときに、3つめの「痩せた土地」に驚かれることが多いんですよね。
痩せた、って栄養がない荒れた土地ってことですよね・・・?
そうですね。痩せた土地で育ったぶどうは、糖度が高まり、複雑な味わいになる傾向があるんです。
この「痩せた土地」に加え、北にある山「リッチ・モンド」や、南にある丘「ウィザー・ヒルズ」が、ワイン用ぶどう栽培には多すぎる雨や強すぎる風から守ってくれる。そして1、2で挙げた日照量や寒暖差もある。
これらの条件が合わさっていたからこそ、高品質な特徴のあるぶどうづくりが可能になったのです。
豊富な日照量がある
マールボロ地方は晴天率が高く、日照量が非常に豊富です。
そもそもNZでは、ほとんどの地域で年間日照時間が約2,000時間を超えますが、マールボロではなんと2,400時間を超えます。
ちなみに東京は1,900時間ほど。
マールボロの日照時間がいかに長いかがわかりますよね。
東京と比べると500時間も多いんですね!
この豊富な太陽の恵みが、果実味あふれるワインを作り出してくれるんですよ。
ぶどうも他の植物と同様に、太陽の光で光合成をします。その光合成によって糖がつくられ、実に送られます。
実に糖がたくさんあることが、アルコール発酵を要するワインづくりでは非常に重要になるのです。
1日の中で寒暖差がある
1年を通して寒暖差が少なく穏やかな気候が特徴のNZですが、地域によっては「1日の中に四季がある」とも言われます。
その特徴はマールボロ地方でも顕著で、昼夜の気温差が30℃になることもあるのです。日本にいるとちょっと想像しづらいですが、昼間は半袖の服で過ごせていても、夜になれば厚手の服が必要になるほど。
どうしてこの寒暖差が、いいワインにつながるんですか?
良い質問ですね〜 ぶどうは当然、適度に暖かいことを好みます。ただしその暖かさが光合成のない夜まで続くと、糖分を使ってしまうんですよね。
気温が下がると、その糖分を使わないということですか?
その通り。気温が下がると植物は活動をしなくなり、糖分が保持されます。糖度の高いぶどうは良質なワインづくりには必須ですから、寒暖差がある場所というのは、とても有利な条件なんですよ。
水はけの良い、痩せた土地である
マールボロ地方では、古代に起きた氷河の侵食によって地表にあった栄養分の多い土壌が削られて、痩せた土地が現れました。
また、この地に流れるワイラウ川によって運ばれた小石混じりの土壌が多く、水はけが良くなっています。
水はけが良く、痩せた土地というのは、多くの植物にとっては決して好ましい環境ではありません。
しかし、水分や栄養を求めて地中深くまで根を伸ばし、生き延びようとする性質があるぶどうは、その根から地中の様々な地層の養分を吸い上げる力があります。
地中の奥深くから吸い上げた養分を使って実った果実は、非常に複雑な味わいになると言われているんですよ。
↑こんな感じが痩せた土地。岩須が実際にNZで撮影。
こうした、良いぶどう(特に冷涼な気候でよく育つ品種)を育てるための絶好の条件が、非常に広範囲にわたって揃っている場所、それがマールボロ地方なのです。
柔軟な発想で行われるワインづくり
NZは、ワイン生産国としては最後発の国に分類しても良いでしょう。
一方、非常に長いワイン生産の歴史を持ち、オールドワールドと呼ばれるヨーロッパの国々や、アメリカやチリ、オーストラリアなどニューワールドの先駆者たちは、技術や知識、経験を蓄積してきました。
NZ国内でもさらに後発ながら、その優れた土壌が注目を集めたマールボロ地方には、地元や国内の人びとだけではなく、世界中から情熱を持った優秀なワインメーカーたちが集まっています。
彼らは世界各地で長い間かかって培われた知識や技術を、最初から取り入れて、より効率的なワインづくりからスタートすることができました。
それはぶどうの栽培やワインの醸造に関するものだけでなく、生産後のプロモーションなどの商業面にも及びます。
長い歴史と近年のテクノロジーが融合して、ものすごいスピードで発展したのがマールボロのワインなんです。
機械やステンレスタンクも上手に使う
例えばこの地方では、大手ワイナリーが大量生産するために、現代のテクノロジーを上手に利用しながらぶどうの栽培やワインの醸造を行っています。
この写真は、僕が実際にマールボロを訪れたときに撮影した写真です。
これは・・・・なんていうか、トランスフォーマーっぽいですね(笑)
ヨーロッパの歴史ある国ではワイン生産に関する法律が非常に厳しく、機械での収穫を規制しているところもあります。一方、マールボロの、とくに平地にある広大な畑でぶどうを収穫するには、機械の手を借りたほうが確実に効率的です。
また、NZで出来た新しいワイナリーは、ヨーロッパで従来から使われてきた木樽でなく、より温度管理や衛生管理が容易なステンレスタンクを採用したというのも大きな特徴です。
これは、NZではもともと酪農が盛んで、生乳の管理にステンレスタンクを使っていたことが関係しています。酪農からワインづくりに参入した農家が多いNZでは、彼らがそれまで扱い慣れていたステンレスタンクを、ワインの醸造で使うときにもすんなり導入できたという背景があるのです。
ステンレスタンクは、木樽などに比べて、醸造の要である「微生物」の管理がしやすいのが特徴です。
また、フルーティーな香りのワインをつくる場合には、ステンレスタンクの方が向いていると言われています。
このように長い歴史を持たない分、古い慣習にとらわれすぎること無く、より柔軟な発想でワインづくりに取り組んでいるのが新しいワイン産地の特徴と言えるでしょう。
爆発的に発展したマールボロのワインの歴史
さて、ここからは少しだけ、マールボロの歴史にも触れていきましょう。
まずは簡単な年表から。
1973年 | 当時の大手ワイナリー「モンタナ社」が行った地質調査の結果、 ぶどう栽培に適していることがわかった。 同社はマールボロ地方に広大なワイン畑を購入する。 |
1975年 | モンタナ社がソーヴィニヨン・ブランの栽培をはじめる。 |
1985年 | オーストラリアのワイナリーが、クラウディ ベイを開設。 その年に収穫されたソーヴィニヨン・ブランのワインが 英国市場を中心に、国際的に評価される。 以降、NZのソーヴィニヨン・ブランの人気は年々上がっていく。 |
年表を見てわかるように、マールボロ地方でのワインづくりが本格化したのは、ここ30〜40年ほどの出来事なのです。
地質調査で明らかとなった、ぶどう栽培地としての適性
1973年に当時の大手ワイナリーであったモンタナ社が広大な敷地を取得したのは、この土地がぶどう栽培に適していると分かったからです。
モンタナ社はぶどう畑を広げる為に政府の研究機関に地質調査を依頼。その結果、マールボロ地方が国内で「2番目」にぶどう栽培に適した土地であるという結果が出たのです。
え、1番目じゃないんですか?(笑)
1番目は、よーく似た名前の、北島のマーティンボロという地域だったんです。しかしそこは、土地面積が狭く大量生産には向かなかった。
そうしてマールボロが選ばれたんですよ。
地質調査では、何が基準にされていたかというと「フランスのブルゴーニュ地方の自然条件と似ているかどうか」ということでした。
ブルゴーニュ地方と気候がよく似ている、北島のマーティンボロについては、詳しくはこちら↓をご覧下さい。
▶ワイララパ|NZのブルゴーニュ「マーティンボロ」はピノ・ノワールで世界からの高評価を得る
最初はカベルネ・ソーヴィニヨンやミュラー・トゥルガウなどが植えられていました。しかしその後植えられたソーヴィニヨン・ブランが、極めて特徴的な香りと味わいになることがわかり、その後は、ソーヴィニヨン・ブランについての研究が重ねられました。
クラウディ ベイの功績
マールボロ地方にソーヴィニヨン・ブランが植えられて約10年後、この地方のワインにとって大きな出来事がありました。1985年にクラウディ ベイ(Cloudy Bay)というワイナリーがつくったソーヴィニヨン・ブランが世界で高い評価を得たのです。
クラウディ ベイは、マールボロ産のソーヴィニヨン・ブランに感銘を受けたデイヴィット・ホーネン氏により開設されました。
ホーネン氏はオーストラリアのワイナリー「ケープ・メンテル」の醸造責任者でした。
クラウディ ベイによる1985年のソーヴィニヨン・ブランは、パッションフルーツやトロピカルフルーツなどの果物の香りが、ハーブや青草の香りと上手く融合した、当時唯一無二のもの。
その後チリなどが、こぞってそのスタイルを真似するようにもなりました。
このようにクラウディ ベイのワインは、世界のワインファンに「新しい産地・ニュージーランド」を注目させる大きなきっかけとなりました。
その後クラウディ ベイは、2003年に「モエ・ヘネシー・ルイヴィトン」の傘下に入ることになります。
そして今もなおその存在感は大きく、日本でもクラウディ ベイのワインは人気です。
名門中の名門で、NZワインを代表するようなワイン。値段は少々張りますが、毎年間違いのない味わいのワインをリリースし続けています。初めてのNZワインにもおすすめのワインですよ。
新しくできた認証制度AMW
そんなNZワインの代表的な産地である「マールボロ」で、ワインに関する制度が2018年新しく誕生しました。それは「アペラシオン・マールボロ・ワイン(AMW)」という認証制度です。
少し難しい話になるので、ここでは簡単にお話をさせて下さい。
アペラシオン・マールボロ・ワインは、マールボロ地方の“手作りの本格派”の生産者達のワインを守るためにできた制度です。
NZにはワインに関する厳しい法律がなく、ラベルにMarlboroghと記載があっても、実は「15%未満であれば他の産地のぶどうをブレンドすることが許されている」のが現状です。
しかし、それではこだわりをもつ生産者たちがつくるワインとの区別が困難であり、品質の担保も難しいということで、その品質がしっかりと守られたワインであることを証明するためにAMWという制度ができました。
アペラシオン・マールボロの認定条件は下記の通りです。
- マールボロで育ったぶどうを100%使用すること
- ニュージーランド国内で、ボトリング(瓶詰め作業)がされていること
- サステイナブル認証を受けた畑で育てられたぶどうを使用すること
- ぶどうの作付の条件が守られていること(低収量)
AMWに認定されたワインのラベルには、認証マークがつけられています。
▶︎アペラシオン・マールボロ・ワイン(AMW)について詳しくはこちら
マールボロ地方のワイナリー
マールボロ地方には、それぞれの地域の個性を活かした素晴らしいワイナリーが沢山あります。
サブリージョン(ワイン産地をさらに細かく分類した小地域)は、北側に位置しワイラウ川に沿うようにあるワイラウバレー、中央のサザンバレー、南部のアワテレ川沿いのアワテレバレーの3つに分かれています。
サブリージョンの大まかな特色は下記の通りです。
ワイラウバレー Wairau Valley | 川石の多い土壌。 成熟が早く、果実味が豊か。 |
サザンバレー Southern Valley | 粘土質の多い土壌。 柔らさがでる。 |
アワテレバレー Awatere Valley | 山岳地帯。 実が熟するまでが長く、酸が豊富。 |
すべては紹介しきれませんので、ここではみなさんに是非知ってほしいワイナリーを、厳選して4つご紹介します。
ウィザーヒルズ
ワイラウ・ヴァレーには、「ウィザー・ヒルズ」という山の麓に、その山の名前がそのまま付けられた老舗ワイナリーがあります。
ウィザーヒルズ(Wither Hills)のワインづくりは、この地方では歴史が古く、1978年にぶどう栽培が始められています。
ワイナリーの創業は1994年で「最高のワインは最高の畑から造られる」という信念のもと、丁寧なワインづくりがなされてきました。数多くの国際的な賞の受賞歴もあり、マールボロ地方でのワインの発展に大きく寄与してきたワイナリーの1つであると言えます。
グレイワッキ
グレイワッキ(GREYWACKE)はケヴィン・ジュッド氏が2009年に始めたワイナリーです。
彼は、ソーヴィニヨン・ブランで世界を虜にしたあのワイナリー「クラウディ ベイ」で創業当初から長きにわたってワインづくりに携わってきた人物。
クラウディ ベイで養った技術や信念を活かし生み出されたワインは、すでに世界中で高い評価を得ています。
また、彼は写真家としても活躍しており、NZ全土のぶどう畑を1冊にまとめた写真集や、ワイナリーで飼っている犬の写真を集めた写真集を出版しています。
ジュッド氏は、僕のお店「ボクモ」にも来てくれました。
全種類をご本人の解説付きで試飲するイベントは、たいへん盛り上がりました!
キムラセラーズ
キムラセラーズ(KIMURA CELLARS)は日本人・木村滋久さんによる家族経営のワイナリーです。
木村さんはNZでワイン醸造、ぶどう栽培学を学び、現地のいくつかのワイナリーで栽培、醸造の仕事を経験したのち、2009年にマールボロでキムラセラーズを設立しました。
2018年からは念願だった自社畑でのぶどう栽培もスタート。
「造り手の顔の見えるワイン」「消費者に近い距離の生産者」をコンセプトに、手間暇をかけたオーガニック農法にこだわり、細部まで気を使った職人仕事によるワイン造りをしています。
主なリージョンはマールボロで、ワインのラインナップはソーヴィニヨン・ブランの他に、ピノ・ノワール、メルロー(これのみホークス・ベイ産のものを使用)があります。
自分のワインをつくるという夢をNZで叶えた木村さん。その実行力は本当に凄いと思います。
IWCという国際コンペでゴールドメダルを獲得するなど、品質も素晴らしいです。海を渡って頑張る日本人生産者、応援したいですね!
マヒ
マヒ(Mahi)はブライアン・ビックネル氏が営む、バイオダイナミック農法にこだわったワイナリーです。ビックネル氏は、ボルドー、ハンガリー、チリ、そしてNZではバビッチなど、世界中の名だたるワイナリーで経験を積み、栽培・醸造の研究を続けていました。
そしてここマールボロの地で、2001年に満を持して自身のブティックワイナリー「マヒ」を創業。
マールボロ地方では異なるサブリージョンのぶとうをブレンドしてつくるのが主流ですが、ビックネル氏は、マールボロの中にある様々な個性をワインに反映するため、単一畑で育てられたぶどうでワインをつくることにこだわっています。
このマヒは僕が大好きなワイナリーのひとつです。
ブライアンさんは、訪れたときは本当にフレンドリーに接してくれましたが、ワインに向き合う姿は真剣そのものでした。
自然との調和をはかりながら、最新のテクノロジーを駆使したワインづくりをしているというそのスタイルは、とても「今風」だなと思いましたね。
ソーヴィニヨン・ブラン以外のワインは?
白ワインの印象が強いマールボロ地方ですが、赤ワイン用のぶどう品種ピノ・ノワールも見逃せません。
ややフルーティーで凝縮感のあるイチゴやチェリーを感じさせるような、親しみやすい味わいのものが多く、芳醇でやさしい味わいが絶賛されています。
こちらはマールボロ産のグレイワッキのピノ・ノワール。
その他にもフルーティーなシャルドネや中辛口〜辛口のリースリング、ピノ・グリなど、気候を活かした香り高いワインが生産されています。
現地でのワインの楽しみ方
日本でマールボロ産のワインを楽しむのもいいですが、現地に行きたくなってきませんか?(笑)
ちょっと遠いですが、現地でワインを味わうという体験も是非してみたいです!
僕も6年前にこの地域を巡りましたが、本当に素晴らしい地域なんですよね。
ここでは、現地でのワインの楽しみ方をお伝えします!
ワイナリーを巡る場合、レンタカーや自転車を借りて回るというのが一般的な方法です。
しかし、土地勘がないと難しかったり、車の場合、ドライバーが飲めないという悲しい事実もあります。
そこで、ワイナリーツアーやイベント、立ち寄るのにおすすめの場所をご紹介します。
ワイナリーツアーに参加しよう
マールボロ地方では、中心地となるブレナムという町やピクトンという港町から出発するワイナリーツアーがあります。
ワイナリーツアーでは、半日や1日など希望の時間に合わせたツアーが用意されていることが多く、時間内に複数のワイナリー回ります。これをガイドの解説つきでワインの試飲をしながら行うのです。
中でもおすすめなのが、キムラセラーズの木村滋久さんが開催するワイナリーツアー。
1日1組限定のツアーで、キムラセラーズはもちろん、他社ワイナリーも巡ります。ワインづくりの裏話や、醸造のことなどのお話も聞くことで、NZワインについての理解が深まることが間違いなしです。
また、木村さんが経営するB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)に宿泊して、じっくりマールボロ散策を楽しむというのも、きっと楽しいと思いますよ!
ザ・ワインステーション
2018年、ブレナムの鉄道駅舎だった建物が「The Wine Station(ザ・ワインステーション)」というワインと消費者を繋ぐハブ施設に生まれ変わりました。
ここでは、有名ワイナリーはもちろん、セラードアを持っていないブティックワイナリーのワインも気軽に味わったり購入することができます。
テイスティングできるワインは80種類。イタリア製の最新の機械から注がれるワインは、徹底した品質管理がされています。
ワインフェスティバル
毎年2月の第二土曜日には、NZ最大のワインフェスティバル「マールボロ・ワイン&フードフェスティバル」が開催されます。
この催しには、各ワイナリーが出展しワインを販売していて、もちろんティスティングもできます。
ライブミュージックが流れ、お祭りのような雰囲気の中で味わう地元のグルメやワインは格別です。この時期を狙って、マールボロ地方を訪れるのもいいでしょう。
アクセスや観光情報
最後にマールボロ地方への日本からのアクセスや国内での移動の方法、観光情報などを簡単にお伝えします。
まず、現在日本からNZへの直行便は、オークランド行きのみになっています。
オークランドに到着してから、飛行機の経由便や乗り換えでマールボロ地方に向かうのが一般的です。
ウェリントンからピクトンまではフェリーも出ているので、時間に余裕がある場合はのんびりお安く船旅もいいかもしれません。
所要時間
- 日本からオークランド(飛行機):約10時間30分
- オークランドからブレナム、マールボロ地方(飛行機):約1時間30分
- ウェリントンからピクトン、マールボロ地方(フェリー):約3時間30分
ブレナム(主要都市)
ブレナム(Blenheim)は人口3万人ほどの、マールボロ地方の最大の都市です。マールボロ地方での宿泊や観光などの拠点になります。
ブレナムは活気の溢れた町で、この地域の特産物であるムール貝が食べられるレストランなどもあります。
ピクトン(フェリーの発着場所)
ピクトン(Picton)は小さな港町。北島と南島間のクック海峡を渡るフェリーの発着地点です。
海を見渡しながら食事を楽しめるレストランやカフェは、旅の疲れも癒やしてくれるでしょう。新鮮な貝料理や白ワインが楽しめるクルーズも人気です。
まとめ
NZを代表するワイン産地のマールボロ地方。
この地方で育てられるソーヴィニヨン・ブランが、NZワインを世界に知らしめました。
ワインの世界に遅れてやってきた利点を活かしながら、雄大な自然の下で育つワインは、NZの国をそのまま表すような多様な面を私達に見せてくれます。
まるで、ぶどうの神様に選ばれた様に恵まれた環境のマールボロ地方。その美しい自然の中、素晴らしい生産者によってつくられたワインを是非一度、あなたも試してみて下さい!