マニア同士

今日はまったりモードだったなあ。ノーゲス(店内お客さんゼロ)になっちゃったし、早起きして低山登りをしたせいで、まぶたがずっしり重くなってきた。今日くらい早仕舞いしても良いかなあ。

なんて悪魔の囁きが聞こえてきたのも束の間、ひとりの男性が。

「ずっと来たかったんですよ。何回か通販でワイン買わせてもらっていて。」

カウンターに座るなりそうおっしゃる。

聞けば、名古屋に来たらボクモに寄ろうと思っていて、たまたまお子さんがレゴランドに行きたいと言うので、これはチャンス!とばかりに、お子さんを寝かしつけてからホテルを抜け出して来てくれたんだとか。

「どちらからお越しなんですか?」

「実は今ニュージーランドに住んでいます。」

なんと、少し前までは日本にいたけれど(そのときに通販を利用してくださった)、会社を休職し、ニュージーランドに移住して大学院に通っているそうで。

そして、大学院で学んでいるのは、ワインビジネス!

「な、なんですとーー!」

一気にぱっちりと目が覚めた。

日々の勉強の内容、研修で訪れた場所など、たいへん興味深い話のオンパレードに、わくわくが止まらない。

中でも驚いたのは、今ニュージーランドのワイナリーが抱えている問題について。「ワインをつくることもさることながら、ディストリビューター(流通業者)を見つけるのが難しい」とのこと。

ニュージーランドワインの主な売り先は、アメリカ、イギリス、オーストラリアで、この3カ国だけで輸出の8割を超える。すなわちこれらの国に卸している業者と契約できると経営は安定する。しかし、採用されるための競争はかなり激しい。

話を伺っていて、もしかすると、ニュージーランドワインはこの3カ国ではやや供給過多になりつつあるのかもしれないなと思った。

ということは、次に「よく買ってくれる人たち」を探している。そこに日本が食い込めたら良いんじゃないの。ボクモ&ボクモワイン、日本での需要が増えるようにもっと魅力発信、頑張らねば!

そして、話が最高潮に達したのが、ここ最近で「飛び抜けて美味しいと思ったワイン」の話。

ニュージーランドワインおたく同士が、ポケモンカードでバトルをするみたいに(やったことないけど)、これぞ、というワインを出していく感じ。いやあ、楽しかった。

その方の切り札は、フェルトン・ロード、僕はちょっと前にも書いたテラ・サンクタ。奇しくも双方ともセントラル・オタゴのワイナリーを選んだ。引き分け?いや、勝ち負けはそもそもない。好みの銘柄を出し合って「ああ、それ!確かに」「まだ飲んでないけど良さそうですね〜」なんて言い合うの、めちゃくちゃ興奮することがわかった。

やっぱりこれだから飲食店はいいな。面白い出会いは不意にやってくる。ぼーっとしている場合じゃない。目をしっかり開いて準備していよう。そう思った夜だった。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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