調光サングラス

ニュージーランドへの旅で、意外と見落としがちなこと。

それは・・・ウルトラ・ヴァイオレット。

UV。そう、紫外線だ。

南極に近いニュージーランドの上空は、オゾンホールがぽっかりあいている(厳密にはオゾン濃度が薄くなっていると言った方が正しい)。有害な紫外線を吸収してくれるオゾンは、我々人類の守り神。しかしニュージーランドでは、そのご加護が手薄なのだ。

渡航の準備をしながら改めて調べてみたら、ニュージーランドの紫外線量は日本の7倍だという。

な、7倍!

以前は日本の5倍くらいだと聞いていたのに、増えてるじゃないか。なに、紫外線量も昨今の物価みたいにどんどん上がっていくものなの?

ワインに例れば、1杯のつもりが7杯も飲んじゃってベロベロ状態。それとも、13%のつもりで飲んだワインが、実は91%のアルティメット・ヴァイオレンス(UV)な蒸留酒だった感じか。酔うとかじゃなくて気を失う。

(ただ、紫外線=悪者というわけではない。適度な紫外線はビタミンD生成のために必要。ワインと同じで、適量なら人生を豊かにする。と慌ててフォローを入れてみる。)

とは言え、7倍アタックは度を超えている。

これは万全に対策せねばと、まずは薬局で日焼け止めを購入した。先日キムラセラーズの木村さんとやりとしたときに、日焼け止めマストですよと念を押されたので、強めのSPF50+にしてみた。

さらに目の保護も必要だ。10年前に買った度入りサングラスが合わなくなってきたので、今回の渡航をきっかけに新調することに。

「光や紫外線の量にあわせて色が変わる“調光レンズ”が人気ですよ」

眼鏡屋さんにそう言われて飛びついた。そんな魔法のレンズが当たり前に棚に並ぶ世の中になっていたとは。目が節穴過ぎて、目のいちばん近くにある眼鏡界隈の常識がよく見えていなかった。

サングラスと眼鏡をいちいち取り替える必要がないなんて、旅のお供として完璧じゃないかしらん。

と言うわけで、渡航前に慣れておこうと、最近おニューの調光眼鏡ばかりをしておる。山登りにもなかなかいい。と最初は思った。しかし、写真を撮ってみて、あら?となった。

晴れているから、少しはサングラス機能を発揮しているんだろうなと思って写真を撮ると、レンズが真っ黒。もうそんなに色が付いているなんて、かけている本人はまったく気付かなかった。

つまり、こちらが気付かぬ絶妙な速度でじわじわ濃くなるので、かけている本人は今どれくらいの濃度になっているかがさっぱりわからないのだ。

まあ、外ではいい。知らぬうちにしっかり仕事をしてくれている頼もしいやつだと思える。しかし問題は、外から屋内に入ってワインのテイスティングをするときだ。テイスティングにおいては、色調は極めて重要な要素だ。

部屋に入り、眼鏡を外してレンズの色の変化を見てみる。なるほど、じんわりと透き通ってくる。しかし室内の光にも反応するため、完全な透明になるのにはけっこう時間がかかってしまうことがわかった。当然、色つきのレンズ越しではきちんとした鑑賞ができない。

・・・これはいかん。普段の眼鏡にかけかえなければいけない。今回は20以上のワイナリーを廻るってことは、最低20回眼鏡チェンジをすることになるのか。

これって。

最初から「眼鏡とサングラスの併用」でよかったのでは・・・。

旅の知恵とは、実際に経験してはじめて身につくものだなあ、と旅に行く前から、またひとつ学んだのであった。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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