よくお客さまから「ソムリエって、いいお店知ってるんでしょ?教えてよ。」と言われます。
しかし残念ながら僕、あんまり知りません。
なぜなら、たいていの場合、お店の営業時間がウチとかぶっているから。
他の店のいい評判を聞いて、行きたいなあと思うことはよくあります。でも、その店の人がいい評判をつくるために頑張って働いている時間は、僕も頑張って働いています。
だから、僕の場合「いい店を教えてよ」と言われたら、すかさずウチの店に置いてある雑誌や本を差し出します。(もちろん、その雑誌や本にはウチの店が掲載されているから、ウチにあるわけです)。
なんでか。これにはちゃんと理由があります。
それは、ウチを取材してくれる人たちは、お金をもらって店の宣伝をするタイプの人はいないから。顔が浮かぶあの取材陣が、自分たちの足で稼いだ情報で作った雑誌・本ならば、そんなに間違いがないだろうと思うわけです。
とはいえ、そんな世間知らずな僕にも一応、自分の足で稼いだ情報はちょっとだけ持っています。それが、表題の「名古屋のソムリエが「仕事終わりに通うワインバー」3選」、です(少なっ笑)。
言い換えると、僕がたまに夜な夜な出かけると、同業者に遭遇する可能性が高いお店です。
こんなマニアックな情報にどれくらい需要があるかはわかりませんが・・・ 終電過ぎちゃったけど、今日はタクシーでいいからしっぽりと飲みたい。しかもプロも唸るくらいのハイクオリティなワインが飲みたい。
もしそんなシチュエーションがあれば、参考にしてみてください。
1. wine&cafe non(ノン) 名古屋市中区錦3丁目
名古屋のワイン業界でものすごく重要なお店だと思ってます。シニアソムリエの今浦紀恵さんがやっているワインバーです。
この今浦さん、日本ソムリエ協会主催の第3回ブラインドテイスティングコンテストで全国2位になったツワモノです。そのコンテストがどれくらいスゴいのかはここでは割愛しますが、傍から見てる僕の感想は「全国2位もぜんぜん不思議じゃない」。
だって、めちゃくちゃワインの勉強されてるんだもの。昨日は名古屋の試飲会で会ったと思ったら、今日は東京で勉強会、明日は大阪でセミナー。遠征しても日帰り戻って、平気な顔をして深夜まで営業をやっています。鉄人か!
出しているワインは、最前線の面白いところを世界中から取り寄せました、という感じ。ほほうと唸るマニアックなのもあれば、押さえておくべきスタンダードなのもあります。ワインをもっと知りたいという気持ちがあれば、ウキウキすること間違いなしです。
ただ、僕は実はこの店のいちばんの売りは、実はワインじゃなくて、今浦さんの人柄だと思ってます。とんでもない知識を持っているのに、ぜんぜん押しつけがましくない。ニコニコ冗談まじりになんでも教えてくれる。初心者もワインバカも、みんなウェルカム。みんなのお姉さんって感じで、まじ素敵。いつも遅くまでほんとお疲れさまですと言いたいです。
それから今浦さん、たまに海外のワイナリーにも遠征に行っています。だから、行く前にはご予約が吉でしょう。
ニュージーランドワインは多くはないですが、さすがのセレクションの1本があります。きっとグラスで出してくれます。
名古屋市中区錦3-7-5 シャインシグマビル B1F → Google Map
052-971-0787 営業時間: 15:00~翌2:30(L.O) 定休日: 日曜日
2. Presente(プレゼンチ) 名古屋市東区泉
扉を開けると長いカウンター席がどーん。つまり、お一人様歓迎スタイル。BGMのジャズが心地いい、気取らないワインバーです。
一宮市で長らくやっていたお店が、今の東区・東片端に引っ越したのが2015年。そこから僕はここのファンになりました。
初めてのときはちょっとビビりました。だって、ワインリストなし、フードメニューなしなんですもん。印刷物や黒板の類はこの店にはいっさいありません。なんという潔さ。
それだけに、マスターの伊藤さんのワインへの情熱は一点集中。かなり熱いです。
どうやったらこの香りや味わいになるのか?そもそもワインってなんだろな?そんなことを日々考えている、ミスターワインホリックです。
得意ジャンルはフランスです。特にブルゴーニュやシャンパーニュへは何度も訪れて、いろんな畑や生産者を見ているので、リアルな情報を持ってます。
それから、どんだけ在庫を持ってるんだろうって不思議になるくらい、熟成もののワインがいっぱいあります。熟ワインが好きな方はきっとハマります。
さらに、最近は日本ワインの啓蒙にも力を入れていて、生産者を招いての勉強会をやったりしてその魅力を発信しています。伊藤さん曰く、
「海外のワイナリーの生産者だと、どうしても言葉や文化の壁があって、ワインづくりの本質を知るのが難しい。でも日本の生産者に直球で質問すると、ぼくらの知らなかったワインの一面が見えてくるから面白い」
とのこと。
ただね、あんまりこういうことを書くと、ワインオタクしか行っちゃいけない堅苦しい店って思われるかもしれないですが、実際は全くそんなことないです。冒頭に書いたとおり、基本はお一人様歓迎の気取らないスタイル。肩ひじ張る必要なし。雰囲気がいいからデートのシメにも使える。でも、そこに隠されたワインの奥行きはずどーんと深い。そんな感じです。
それから伊藤さん、名古屋の名門ライブハウス「ジャズ・イン・ラブリー」のご出身と言うこともあって、かなりジャズ好きです。ジャズのいろはを知りたいって方にもおすすめです。深夜3時までやってます。
ニュージーランドワインは、ソーヴィニヨン・ブランはあることが多いかな。
名古屋市 東区 泉2-1-28 Viare Storia 2C → Google Map
090-3939-1951 営業時間: 20:00~翌3:00 定休日: 不定休
3. IL MATTO(イルマット) 名古屋市千種区池下
池下駅から北に歩いて5分。このエリアって以前は下町っぽいムードもあったけど、近年タワーマンションがドカドカ建って、かなりハイソ化しています。
「街並みはずいぶん変わりましたね。まあ、ウチはあんまりスタイルを変えずにやってますけどね。」
そう語るのはヒゲの店主・岩月さん。
でも岩月さんをカウンター越しに見てると、むしろうまいこと変化してきたからこそ、この地でワインバーを10年やっているんだろうなと感じます。
出過ぎないけど、物足りなくない。アットホームだけど、適度なテンションが張られている。そんなタイプだと感じます。
街が変われば、当然人も変わる。店はその変化を受け入れ、新しく来た人が楽しめるような空気をつくる。だけど昔からの人も心地よく過ごせるように気を配る。
その細かいチューニングを10年やり続けるって、なかなかできることじゃないですね。
きっとそうやって微調整をし続けているから、大筋では「あんまりスタイルを変えずに」やれてるんだろうなあ。
ちなみに岩月さん、シニアソムリエの資格をお持ちです。業界内では、年々激ムズになっていると評判のこの試験をパスしているってことは、相当マニアックな知識を持っているということ。しかし、その一方で、ワインスクールで初級者向けの講師のお仕事もされていています。
つまり、ワインの端っこと端っこを知っているってわけです。だから、いろんなお客さんに柔軟に対応できるんですな。
毎年秋には、そんな岩月先生を頼ってソムリエ試験のテイスティングの勉強をする生徒さんが、カウンターでうんうん唸っている光景を見ることができるでしょう。
ニュージーランドワインは、あるときもあるし、ないときもあります。
BGMはなし。案外それも落ち着きます。
名古屋市千種区池下町2-55 → Google Map
052-734-3335 営業時間: 19:00~翌2:00 定休日: 月曜日
以上、3つのお店は、いずれもワイン愛のある店主がおひとりでやってる店です。
ワイン愛のある人って、ワイン好きが増えたらめっちゃ嬉しい人種です。
だからもし訪れたら、臆することなくどんどんワインのことを尋ねてください。きっと目をキラキラさせて語ってくれるはずです。