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ご褒美はこれで十分

 

先日、中3の息子が学校のテストで良い点をとってきました。

「なにかご褒美買ってあげようか?」と言ったのですが、息子の返答に、僕は驚きました。

「いや、点数が良かったことがもうご褒美だから、それ以上のご褒美はいらない。」

・・・お、おお。そうなの?変わってるやつだなあ。

と、その時は思ったのですが、あとから考えたら、息子の言い分は、なるほど理に適っている気もします。

頑張って勉強したこと。それは自分がいちばんよく知っている、というか、自分しか知らない。

その頑張りが、「良い点数」という結果で、評価された。

だから、もらった評価そのものが、努力が認られたという証であって、それが嬉しい。逆にそれ以上の喜びはない。

どれだけ努力をしていたか、わかっていない父親から「ハーゲンダッツあげる」とか言われても、それはただ、たまたま出た結果に便乗して、ご褒美というアクションを起こしているだけに見えちゃう。

「結果に対する評価」ではなく、「頑張りに対する評価」が嬉しいのであって、よくわからずに結果だけを見てしゃしゃり出て褒められても、あんまり嬉しくない。

そんな気持ちだったのではないかと思いました。

そこまで深刻に捉えずに「じゃあ、モナ王買ってきて」とか「森永パリパリバー(バニラ)ちょうだい」くらい、軽い調子で言えばいいのに、とも思いましたが、まあ、ご褒美はべつに他の人からはいらないっていうのも、彼の個性ってことかな、とも思いました。

(ちなみに、アイスが欲しいとかは、ひと言も言ってない)

 

ご褒美と言えば、最近嬉しいことがありました。

ある夜、髪の毛を束ね、ピシッとフォーマルできめた女性がひとりで現れました。

わ、ちょっと緊張するタイプの美女だな、と構えたら

「私です、Sです!」

と、マスクをずらしてにっこり。

あ!

それは、大学生時代と大学院生時代に、ボクモでバイトしてくれていたSちゃんでした。

大学の友人の披露宴に出るために名古屋に戻ってきたようで、そのついでにお店に寄ってくれたのでした。

そのSちゃんはとてもできるタイプで、足かけ5年、うちの店で、テキパキ業務、お客さんとのふれあい、イベントへの参加など、多方面で頑張ってくれました。

さらに、就職で名古屋を離れるときには、置き土産のように、サークルの後輩の男子Kくんを欠員が出たボクモに送り込んでくれたのでした。そのKくんもすこぶるできる子で、お客さんにも可愛がられ、大学卒業まで頑張ってくれました。

で、その日は、Kくんも同じ結婚パーティーに出席したそうで、すこし遅れて彼もカウンターにやってきました。

つまり、大学の先輩Sちゃんと後輩Kくんが、思い出のバイト先であるボクモのカウンターに並んだわけです。そして、カウンターのこちらには、若き日の2人を知る僕。ちょっと大人になった今の二人の近況を聞いている僕の顔は、当然にやけっぱなしです

もうね、これをご褒美と言わずして、なにをご褒美と言いましょう。

飲食店をはじめて12年。

働いていたスタッフがまた来てくれて、近況報告をしてくれるというのは、たまりません。12年、良いこともそうでないこともあったけど、続けてきて良かったなあ。

僕とシェフがやってきたこれまでの12年を肯定してくれた。帰るべき場所として、評価してくれた。そんな気分になりました。

そうか。今、誰かに「続けてきてご苦労さん。なにかご褒美あげようか?」と言われたとしたら、「いや、もうご褒美はもらっているんで、大丈夫です」と答えそうな気がします。

息子、こういう気持ちなのかもしれないな。

ちなみに、Sちゃんは、カウンターで「いやあ、この状況、エモいですね〜」と言っていました。なるほど、こういうのをエモいって言うのね。勉強になります。

今度、息子が良い点を取ったら「どう?エモい?」って聞いてみようかな。

今週のペアリング提案

「サーモンパイ」。

サーモンパイ

サーモンとジャガイモのスタッフィングを、パイ生地で包んでオーブンで焼きました。

卵黄を使ったソースの上に乗せ、ボクモの定番スパイスとなりつつある「デュカ」をふりかけみたいにパラパラと。

コロナ禍でデビューしたこのメニュー、一躍人気〜レギュラー入りしています。

あわせたいのは、オレンジワイン。中でもピノ・グリがぴったりかも。

グリーンソングス アンバー ピノ・グリ2020

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こちらは、NZでワインをつくる日本人・小山浩平さんによるオレンジワイン。白ワインの爽やかさもありつつ、皮の渋みがもたらす複雑さがなんとも旨いです。

適度なスパイシー感は、デュカのかかったパイといい塩梅にまじわります。

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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