今回ご紹介するのは、2016年公開のドキュメンタリー映画「すっぱいブドウ」です。
今までドキュメンタリー映画ってほとんど見てきませんでしたけど、ワインを好きになってからいくつも見ました。ちょっと大人になった気がするな…(笑)
イイ感じ!大人の階段をのぼってますね。この作品はワインを題材にしたドキュメンタリーの中でも、ぐっと引き込まれる内容だと思いますよ!
この作品は、実際に起きたワイン偽造事件が題材となっています。
超高額取引が行われるワインオークション界隈で出回ってしまった、大量の偽造ワイン。その製造と流通を行った犯人は、当時ワインコレクターとして有名だったルディ・クルニアワンでした。
主に彼の事件発覚前の実際の映像と、事件に直接関わった人々のインタビューで構成された、臨場感たっぷりのドキュメンタリーです。
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なっちゃん
Web系の会社に勤める29歳。もっとワインを楽しめるといいな、とワイン勉強中。
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岩須
このサイトの監修を担当する、ソムリエ。自身が名古屋で営むバーでは、ニュージーランドワインを豊富に取り揃える。
「すっぱいブドウ」詳細情報
映画ジャンル | ドキュメンタリー |
テーマ | ワイン、偽造ワイン |
制作年/国 | 2016年/イギリス |
時間 | 85分 |
監督 | ルーベン・アトラス、ジェリー・ロスウェル |
配信サイト | Netflix(現在配信停止中) |
2012年に起きた「ルディ事件」とも言われる、偽造ワイン事件のドキュメンタリー映画です。
詐欺師ルディの本人映像がふんだんに使用されていることにまず驚きます。もともと業界で注目されていた人物なので、残されている映像が多かったんでしょうね。
タイトル「すっぱいブドウ」の意味
タイトルの「すっぱいブドウ(Sour Grapes)」というのは、イソップ寓話のひとつ「狐とぶどう」から生まれたことわざです。
狐が木に実ったぶどうを取ろうとするが、どうしても取れない。 それを悔し紛れに「どうせあのぶどうは酸っぱいに決まっている。」と言って自分を正当化したことから、「酸っぱいぶどう」は「負け惜しみ」という意味で使われるようになりました。
このタイトルはおそらく、ワインコレクターを自負する収集家たちが、偽造ワインに騙されても悔しがったり怒ったりしておらず、本人たちも意識しない「負け惜しみ」になってしまっていることを皮肉ったタイトルなのではないかと思います。
詐欺の被害者はしばしば、裏切られたことのショックから、加害者を擁護したり、憎みきれないと言う人がいるといいます。まさにその現象が起きたのでしょう。
「すっぱいブドウ」の題材となった偽造ワイン事件
被害総額120億円といわれる、業界を揺るがせたワイン偽造事件。
2012年に発覚したこの事件の犯人は、中国系インドネシア人、ルディ・クルニアワンでした。
当時有名ワインコレクターとして名を馳せていた彼は、世界の富豪や資産家が参加するアメリカのワインオークションで超高額ワインを次々と競り落としていました。そして、自身のコレクションからもオークションに出品。しかし、その多くのオールド・ヴィンテージのワインは、彼が偽造したものでした。
つまり、手に入れた本物の高級ワインを手本にし、その味に近いワインをブレンドしたりハーブなどを加えたりして、偽物を作っていたのです。
アジア人でしかもまだ30代で若かったルディは、アメリカのワイン界隈では非常に目立っていたようで、社交的な人柄からワイン仲間も多かったそう。
偽造ワイン問題はもともと世界中で起きてきましたが、この事件が衝撃的だったのは、有名なワインコレクター本人が、ワインを偽造した張本人であったからでしょう。
そして、精巧な偽造ワインは回収に非常に時間がかかります。おそらく、全て回収するのは不可能に近いのではないでしょうか。
未だにルディが製造した何万本もの偽造ワインが世界中に存在しているという事実は、ワイン醸造家、販売業者、ワインコレクター、オークション主催者など、ワインに携わる人々にとって大きな問題となっています。
2020年現在、アメリカの刑務所での刑期を終えインドネシアに送還されるというニュースも出ており、今後の動向も注目されているようです。
「すっぱいブドウ」の見どころと感想
高額な取引が次々に行われるワインオークションの世界。そこに彗星のように現れたワインコレクターとしてのルディの姿が、ミステリアスに描かれています。
インタビューが主体となり話が進んでいきますが、出演者は実際にルディとワイン会を開催していたワインコレクター、詐欺の被害者、捜査に関わった人物など多岐にわたります。
事件発覚後のルディ本人のインタビューはないものの、彼の人物象がリアルに伝わってくるのは、全てのインタビューがいわゆる「又聞き」のようなものではなく、実際に関わった人物の本当の言葉だからでしょう。
特に被害者達がどのような経緯でルディに疑いをかけたのか?どのように調査していったのか?ということが語られている部分は興味をそそります。
ドキュメンタリーだから難しいかな?と思いましたが、テンポが良いのでとても見やすく、引き込まれました!
登場する人物たち、本当にノンフィクション?と思うくらいキャラが濃くて面白いです。インタビュー中に飼い犬と戯れたりとか、マイペースだなって(笑)
このリアルな事件を題材にして、脚色や演出を加えたら、さらにおもしろいエンタメ作品になるのではないかな?なんて思います。ワイン版「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のような。
たしかに!
後半には、ルディの自宅から押収された偽造ワインを製造するための素材や道具の全貌、そして偽造ワインを廃棄物処理場で粉砕するシーンなど、ちょっとドキッとするシーンもあります。
しかしながら、なぜかルディを完全な悪人と思えないのは、本物の詐欺師の為せる技(罠?)なのかもしれません。
まとめ
「すっぱいブドウ」は、タイトルからは想像できないほど内容が濃く、エンターテイメント性の高いドキュメンタリー映画です。
ワインオークションや偽造ワイン問題などについて勉強にもなります。 気軽にワインを飲みながら、楽しんでみてください。
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