天敵から鳥たちを守ろう 自然保護にAIが参戦

 

今年はAIが大きく取り上げられた年になりましたが、ニュージーランドの森林公園、国立公園等の環境保全地区を管理し、自然を守るためのありとあらゆる活動を行なっているDepartment of Conservation(自然保護局)も例外ではなく、AIを活用した鳥たちの保護に乗り出しています。

人間によって絶滅させられた鳥たち

かつては哺乳類が存在せず、鳥たちの天国だったニュージーランド。ですが1200〜1300年代にポリネシアからマオリ族の祖先がニュージーランドに上陸。人間が住むようになって、森林伐採や鳥たちの乱獲が進みました。

そして1769年にイギリスから海軍士官であり海洋探検家であるキャプテン・ジェームス・クックがニュージーランドに到達、ヨーロッパからの移住が始まった際に、外来の鳥や鹿、山羊、豚、うさぎ、羊、ポッサムなどありとあらゆる哺乳類が持ち込まれました。

外敵がいなかったがために「飛ばない」鳥となった巨大な鳥、モアをはじめ、50種類もの鳥が絶滅したと言われています。

またニュージーランドを象徴する飛べない鳥・キウイや、同じく飛べないオウムのカカポなど、今も多くの鳥たちが絶滅の危機に瀕しています。

カカポはこんな鳥です。ずんぐりしていて可愛いですね。

AIが外敵を分析

鳥たちを外敵から守るため、クライストチャーチにある非営利団体、Cacophony Project(カコフォニー・プロジェクト)が、AIを活用して映像を分析するソフトウェアを開発しました。

“人間が長い時間、モニターの前に座って、カメラがとらえた映像をみて、「昨日の夜はポッサムが7匹、イタチが3匹写っていた」など、鳥たちに危険を及ぼす外敵の数を数える必要はありません、代わりにAIがやります。”

とディレクターのヘリカーさん。

AIが森林の中に設置された赤外線サーモグラフィカメラの映像を分析し、写っている外敵の種類を判別、頭数を一つのレポートにまとめて出力。またAIが判別しきれなかった部分はアラートをだしてくれるので、人によるさらなる調査が行なえるという仕組み。

“2050年までに鳥たちの脅威となる外来種の駆除を行うという大きな目標を達成するには、いまからこのようなテクノロジーに投資していくことが不可欠です。常に新しい技術を投入していますが、映像分析など、毎日の単純作業はAIに向いています。”

と環境省の担当もコメントしています。

現在はクライストチャーチ近辺で運用中ですが、今後は国中の森林監視カメラの映像分析に導入される見込みです。また、もっと小さくて安く、かつメンテナンスが少なくて済む高性能な赤外線カメラの開発も進んでいるそうです。カメラが自動的にクラウドに映像を送れるようにし、人間が頻繁に森林を巡回しなくてもいいようにするのが目標。

カコフォニー・プロジェクトは環境を守るためにさまざまなツールの開発をおこなっている団体。AIをいち早く導入し、外敵の監視だけでなく、鳥たちの鳴き声の分析なども進めているそうです。

カカポ、40年ぶりに本土へ

先日はカカポが40年ぶりに本土へ移動されたばかりなのです。

外敵から鳥たちを守るために、哺乳類が生息していないニュージーランドの離島に鳥たちの聖域が多くつくられています。そのうちの一つ、フェヌア・ホゥ/コッドフィッシュ島という離島から、カカポたちはニュージーランド航空の飛行機に乗って、クイーンズタウンからオークランドまで運ばれました。そして北島・ワイカト地方にある3,400万平方メートルの鳥の保護地区に、お引越し。

カカポは1995年にはたった51羽まで減少。そこから248羽まで数を増やすことに成功しています。

離島にいたカカポたちが、本土に定着できるかはまだまだ未知数ですが、本土での保護まで辿り着けたのは大きな成果です。

カカポはカモフラージュがとても上手なので、保護地区を訪れてもその姿を見ることは難しそう。ですが、その鳴き声が聞ける日は近いかもしれません。

この記事の筆者

石黒
石黒 沙弥
高校・大学時代を過ごしたNZを故郷と愛する。購入するワインは100%NZで、常備しているのはSILENIのソーヴィニヨン・ブラン。マーマイト大好き。歴代彼氏の半分以上がKiwi。
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