「俺、シャルドネが好きだから なんかテキトーなシャルドネ、出してよ。」
たまに言われます。
正直それ、ちょっと困るな・・・と一瞬思います。
でもいいんです。
僕の場合、2〜3くらい軽い質問をして、お口にあいそうなものを出します。
ただね。
世の中、シャルドネに対しての誤解がちょっと多い気がするんです。もうちょっとシャルドネを知ると、より自分好みのワインに出会える確率があがるのになあ。
そんな話を今日はしてみます。
まず、今の日本でシャルドネと言えば。
ワインをそれほど知らない人でも、名前くらいは聴いたことがあるでしょう。スーパーやコンビニでも名前をよく見るようになりました。白ワインに使われる品種の中で最もメジャーで、ワイン界のザ・オーソドックス。
だからこうなる。
「以前飲んだことのあるワインが美味しくて、それがシャルドネっていう名前がついていた」
↓↓↓
「シャルドネが好き」
と。
その経験値自体はとってもよいと思います。
ただ、ワインの業界でよく知られていて、一般には知られていない重大な事実があるのです。
それは・・・
実は、シャルドネっていうぶどうは「個性がない」のです。
香りの分類で言うと、シャルドネは「ニュートラル」に入ります。
意味は「香りがやや弱く、平凡である」。(対義語は「アロマティック」で、「香り成分が強く、華やかである」。)
でもだからと言って、価値が低いわけではありません。
むしろ、他と比べて個性が乏しいからこそ、育てる場所や人によって大きく味が変わるというのが特徴になっている。
特に、個性を補うために「木樽の中で熟成させて、樽の香りをワインに付加する」というやり方を採用する生産者も多いです。
つまり、めっちゃ高級なものも作れるし、めっちゃお値打ちなものも作れる。
味わいもシャープ、フルーティー、まったりと、作りによって千差万別で、こんな変幻自在な白の品種はシャルドネだけです。
ここまで話せば、わかりますね。
靴屋さんで
「スニーカーが好きだから、テキトーになんか持ってきて」
だと、店員さんは困っちゃう。ナイキの量販品は4千円で、エアフォースワンは4万円です(ものによるけど)。
だから、「以前飲んだシャルドネが好き」から、もう一歩踏み込んで、シャルドネのバリエーションについて知ると、コミュニケーションがスムーズになります。
そのバリエーションをざっくり言うと・・・
- フランスのシャブリ → シャープできりり
- フランスのムルソーやモンラッシェ → 樽とコクの高級な味
- カリフォルニアのちょっと高めの → パワフルでまったり
- チリやオーストラリアの量販品 → シンプル or 果実味たっぷり
網羅はできませんが、僕の中ではこんな感じの印象です。
そして、ニュージーランドのシャルドネは・・・
- お値打ちなものは、果実味が豊か、ジューシーである
- 少々お高いものは、樽のバニラの香りと果実味があわさってコクが強い
こんな印象です。(ただ、ニュージーランドでは、国を挙げての品種ソーヴィニヨン・ブランに隠れた存在なので、現状、日本でみつけるのはなかなか難しいですけど。)
どうでしょう。なんとなくシャルドネっていうぶどうが、おわかりいただけたでしょうか。
というわけで、次からはワインバーでこう言いましょう。
「シャルドネって、いろんな種類があるけど、 この店はどんなタイプがいちおし?」
ソムリエは俄然よろこんで、自分のラインナップのシャルドネを紹介してくれることと思いますよ。