最近、わかったことがあります。
「人はなぜ感動するのか」ということ。
いや違う、「人は」ではなく「僕は」です。自分が感動するときの仕組みがわかったのです。
手元にある旺文社の国語辞典によると「感動」とは、「深く物事に感じて心が動くこと」とあります。
そこにある言葉を加えると、感動という現象が起きる仕組みが説明できることを発見しました。
それは「その物事の当事者であるという意識を持っていたとき」。
当事者として、今目の前で起きていることに巻き込まれていると思っているとき、心は強く揺さぶられるんだ、と思ったのです。
例えば、運動会で一生懸命組み体操をやる子どもを見て、親が泣けてくるのは、産まれてからここまで育てた当事者だから。
映画で感動するのは、登場人物の中に自分と同じ感性を持つ人を重ね合わせ、疑似的な当事者になれるから。
当事者でなければ、身のまわりで起きる出来事はだいたい他人事。
でも、自分が関わっている、と感じると、一気に自分事になる。そして感動が起きる。
そんな考えを導き出すに至ったある体験を、今週しました。
場所は、Zepp Nagoya。ライブハウスです。
僕は以前、ラジオ番組のディレクターをやっていました。
あれは29歳のとき。生放送終わりで、当時の上司からたまたまあるバンドのCDをもらい、スタジオでそれをかけてみました。
「ちょっと待て、これは凄すぎるぞ。」
次の日から毎日そのバンドのCDを番組でかけました。そして、どうしてもそのバンドと一緒に番組がやりたいと企画書を書きました。当時の彼らは19歳です。
たまたまうまく転がって、メジャーデビュー前の半年とデビュー後の半年、深夜番組をいっしょにやらせていただきました。
栄の観覧車の中でのロケや、テレビ塔の下でメンバー自らによる街頭インタビューもやりました。企画の罰ゲームでセンブリ茶やノニジュースもいっぱい飲んでもらいました。ボウリングにもよく行ったなあ。
彼らのライブはいっぱい見ました。年を追うごとに会場が大きくなり、ell.FITS ALLから、Zeppになり、あっという間に日本ガイシホールになりました。
僕は店をはじめ、ディレクターを辞め、業界の人ではなくなりました。それでも彼らとスタッフの皆さんは優しくしてくれています。ありがたいです。
そして、今年はワールドツアー。
北米ツアーに次いで、ヨーロッパツアー。SNSに上がってくる現地のライブレポートを見て驚きました。現地のファンが押し寄せ、大合唱している。BTSと彼らくらいしかこの現象はない、と現地スタッフが言っていたそうです。
そして、ヨーロッパから日本に戻ってきて、今やっているのがライブハウスのツアーです。
すでにドデカいホールやドーム会場クラスの彼らが、バック・トゥ・ザ・ライブハウス。そのツアーの初日が名古屋でした。
そして、「感動」です。
感動で震えました。体がこわばって、ぷるぷると震えました。そんなこと、人生の中ではじめてだったかもしれません。
目の前に繰り広げれたのは、あの観客が10人程度の小さな箱で対バンライブをやっていた頃、18年前の曲の演奏です。
世界ツアーで現地ファンを熱狂させ、日本凱旋。今の彼らからしたら小さすぎるハコで、全然無名だった頃のあの曲を、それはそれは楽しそうにやったのです。
あのときの点と、現在の点。遠く離れたふたつの点が、僕の目の前で、火花を散らして結びつきました。
気付けば涙が出ていました。
ライブが終わって、会場をあとにしても、ずっと体がこわばっていました。
店に戻ってきて、ワインを一杯飲んだら、ようやく少しほどけました。
そして思いました。
「当事者の気持ちでいさせてくれてありがとうございます。」と。
僕なんか、最初の方にちょろっと関わらせていただいただけの、ただの過去の1スタッフです。ほとんど、ただのファンです。当事者と言うには図々しい。
でも、たまたま彼らが羽ばたいていく様子、少しだけ近くで見させていただきました。僕的には、自分の人生に関わっている大きな存在でなのです。
その大きな存在が、あの日の出来事と、今の出来事を、目の前で一致させている。
そんなことを感じ、心と体が震えたんだと思います。
なんだか、うまくまとまっていない気がしますが、今日はそんな心の動きがあったことを書き留めておこうと思って、こんな文になりました。
バンドの名前はRADWIMPSです。
ボクモという店名は彼らの「夢見月に何想ふ」という歌詞の一部からいただいています。
今頃、持って行ったニュージーランドワイン、楽しんでくれているといいな。