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未来の飲食店

ソムリエブログ

来年のことを言うと鬼が笑うというけれど、鬼って基本的に恐い存在だから、笑ってくれるならばそっちの方がいいじゃん、などと思ってしまう岩須です。どうも。

今日はちょっと未来について考えてみたいと思います。

 

AIの登場によって、いろいろな職業が奪われるという話はよく聞きますよね。一方で、どれだけ技術が発達してもAIでは代替できない職業もあるからそっちを目指した方がいい、なんてのもよく聞く話です。

飲食店はどっちか。

すでに、タッチパネルや配膳ロボットの導入などで、スタッフが少なくても回る店をつくっている大手チェーン店が増えてきています。

麺類の全自動調理ロボットなんかもあるし、AIで来客予測をして適正な発注をするシステムもある。

おそらく今年から来年にかけては、コロナ禍の揺り戻しで飲食店需要が伸び、設備投資できる会社が増えて、自動化がどんどん進むと思います。

ですが、やはり「人に寄り添う」仕事だけは、依然としてAIや機械が不得意なジャンルの仕事です。

作っている人の思いがこもった料理。あったかいサービスや人とのふれあい。そういう人間くささが好きだと思うお客さんも依然としていると思います。

だから今後は、「自動化が進みまくっている超合理的な店」が増える一方、「中にいる人の人間くささこそが価値になっている店」の存在感も増す。お客さんはそのときのモードによってそれらを使い分ける。僕らは後者の方向性を頑張る。

そんな感じになっていくのかなと思いますが、どうでしょう鬼さん。

 

じゃあ、ソムリエの仕事はどうなのか。

ソムリエの業務内容には「自動化できる部分」と「自動化できない部分」があると思っています。

自動化できるのは、たとえば、発注管理、在庫管理、ワインリストの更新。それから、お客さまの趣向を覚えて、次回来店時にお好みのものが提案できるデータを用意することも機械でできそうです。

自動化できないのは、飲み物や料理の提案。ワインの鮮度管理。テーブルの空気を読んで、説明の仕方や長さを変えること。旅行客にこの町のおすすめを伝えること。今日は記念日なんですね、おめでとうございます、と一緒に喜ぶこと。そして笑顔。

そんな感じかな。

さらに自動化の流れが進むならば、これから磨くべきなのは自動化できない部門の仕事ということになるでしょう。

中でも考えなきゃいけないのが、ワインの提案方法です。

ソムリエの仕事の大きな部分を占めているのは、ワインのことをお客さまに伝えながら提案することです。

ただ、ワインの情報って、ラベルの写真を撮ってアップロードすれば、そのワインがどんなワインかある程度わかるアプリがすでにあります。ワインは、ソムリエにしかわらかないもの、という時代は終わっちゃったのです。

今の時代、下手をすると、お客さまのほうがワインに詳しいなんてこともあります。

なので、情報を頭に入れているだけでは、ぜんぜんダメなのです。

やるべきなのは、「ワインを提案する」ことだけではなくて「お客さまの様子を察知して、今日の食事がいいムードになりそうな提案をする」ことだと思います。

僕の場合、ボクモでやっているのは、たとえばボトルワインならば、まず泡、白、赤、をヒアリングします。そして、おすすめのワインを通常3本くらい、多いときで5、6本をテーブルに並べて、お客さまに説明をします。するとそこから会話が広がっていきます。

「今の説明だとたぶんこれが好みの味だよなあ」

「いや、この可愛いラベルも気になるよ」

「じゃあソムリエさん的には、注文した料理といちばんあうと思うのはどれ?」

そんなことをわいわい話しながら決めていくと、スタートからテーブルの雰囲気があったまり、そのあとの食事の盛り上がりにスムーズに繋がっていくことが多いです。

これからは、このやり方を発展させた形を作ってみたいな、と。

たとえば、ちょっとずつテイスティングしていただきながら、ワインを決めていただけるような仕組みなんかが作れたらいいなと思ってます。

そして、NZワイン通販のボクモワイン。これもやはり、「自動化の推進+自動化しないあったかさ」が鍵になるんじゃないかと思います。

通販なんだけど、あったかい。僕やスタッフがお客さんとコミュニケーションをとる通販。これがボクモワインが今目指しているところです。

お客さんにとって、「飲食店でソムリエのアドバイスを聞きながら選ぶのに近いイメージでワインが選べる」ようになっていければいいな、と思いながら、日々改善をしています。ザ・人力通販。

結局、ボクモもボクモワインも、これから頑張るべきは「人間がちゃんとやってる」の方向性。となると、やっぱり、最も大事になるのは、中にいる人の人間的な魅力ということになり・・・

ちょっと冷や汗が出てきました。

そうじゃん。

大手チェーン店が日々改善して作っているシステムの魅力に負けないくらい、すんごく魅力的な人が店をやっている必要があるってことじゃないの。

困ったぞ。

なんせ、2023年現在、わたくし岩須、たまに半日くらいチャックが空いています。

こないだは、店から帰宅するときに、地下鉄のホームまで行ってからカバンを店に忘れていることに気付いて、慌てて取りに戻りました。

酔っ払った夜に、ポテチを大量買いしてしまう癖も健在です。

うーむ。不安だ。魅力的な人からはほど遠い。

まずはチャックを確認するところからはじめたらいいのかなあ。

どう?鬼!笑ってくれよ。

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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