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店をやっているとミラクルが起こります

ソムリエブログ

飲食店をやっていると、ミラクルが起こります。

たとえば、お会計を計算したら7,777円だったとき。テーブルに伝票を持って行く僕は、思わずにやっとしてしまいます。

たとえば、「あ、テーブルにお忘れ物がある」と思ってよく見てみたら、小さな折り鶴だったとき。え!うちのほっそい箸袋で折ったの?なんという神業。

たとえば、「このお客さま、どこかで会ったことがあるような・・・」と思って、思い切って高校名を訪ねてみたら、やっぱり高校の同級生だったとき。そっか、3年間クラスは違ったけど、部活が隣だったからほんのり覚えていたんだ!

小さな日々のミラクルの積み重ねが、人生を面白くしてくれる。やっぱり店をやって良かったなと思います。

 

先週、大学時代のサークルのA先輩から「今日、このあと席空いている?」とメッセージが入りました。

その先輩は大学時代からとても仲良くしてくださって、いっしょに旅行に行ったりもしました。

ちなみにサークルは放送系のサークルで、そこを出てマスコミ関係に進む人もそこそこいます。僕もそのひとり。

僕がラジオディレクターになったとき、担当番組で海外の情報を扱う機会がありました。たまたまそのとき海外に赴任していたA先輩に連絡して、現地の情報を送っていただいたりもしました。あのときはだいぶ助かったなあ。

店をはじめてからも、名古屋出張のたびに寄ってくださるようになり、先週のその日は数ヶ月ぶりのご来店。

さて今日はどんなワインをご用意しようかな、と思っているときに、1本の電話が入りました。

「たまたま今日、旦那と二人で名古屋にいてね。お店に行きたいんだけど、予約ってとれるかな?」

声の主は、A先輩と同期の女性のB先輩!

おお、これはだいぶミラクルだぞ!

迷わず、A先輩のカウンター席の横をおさえます。そして、むふふと声が漏れます。

たぶん、相当久々の再会のはず。二人の先輩、ボクモのカウンターでばったり会ったらどんな顔をするかな。

まず先にA先輩が席に着きます。

そして僕が、「実はこのあと、先輩がご存じの方が隣にいらっしゃいますよ」と言うと、「ええ?誰かなあ」とそわそわするA先輩。

たまりません。これから起きるハプニングを、僕だけが先に知っている楽しさよ。

そして30分後、旦那さまとともにB先輩が到着。

カウンター席にいるA先輩に気づき、「え!!!!!!」

たまりませんぞ!

A先輩も、B先輩がまさか名古屋に来るとは予想していなかったようで、とても驚いていらっしゃいました。

会うのは8年ぶりだそう。SNSでは繋がっているので、近況はなんとなく把握している感じでした。

そこから2時間ほど。学生時代の話や今の仕事の話で、とても盛り上がりました。

B先輩はずっと声のお仕事をされているし、A先輩も今の部署でカメラに向かって喋る仕事を任されたりしている。

なんだかんだ、学生時代にやっていたことの延長に未来の今があるんだなあ。そしてこの瞬間、過去と現在がこのカウンターで繋がったんだよなあ。

これをミラクルと言わずして何と言う。

店をやるって、本当に楽しいよ。

と、その日の出来事をにやにやと振り返りながら、地下鉄のホームで終電を待っているとき。

あることに気づきました。

待てよ。今日の僕のやり方、非常に問題ありだった可能性があるぞ。

だって、万が一、A先輩とB先輩、僕の知らないところで、学生時代にいろいろあった関係だったとしたら・・・。

これはまずい。当然、大学のサークルというのは恋愛が発生しがちです。夜、部室に集まると恋愛の話か、マリオカートか、どちらかしかやっていなかった気がする。

先輩方とは2つ違うから、当然僕が入学前の知らない期間が2年もある。いや、同じサークルに在籍していたときにも、すべての恋バナが部室に流れてくるわけではなく、おそらく秘められたあれやこれやもあったことでしょう。いかん!いかんぞ!

もし過去に何かあったとしたら、カウンターでのんきに「ほらほら、びっくりしたでしょう?」なんて、二人のリアクションを楽しんでいた僕は、とんだお子ちゃまです。

でも。

今日の話からは、そんなムードはいっさい感じなかったよな、そうだよな!な!

終始にこやかだったし、B先輩の旦那さまも交えて3人で和気あいあいと話していたもんな。たぶん取り越し苦労だよ!な!な!

というか、学生時代ってもう30年も前だもん。仮に何かあったとしても、まあ、笑って話せる昔話だよね。きっとそうだ。そうに違いない。ことにしよう!

 

地下鉄を降りて家まで歩く僕の背中は、ひいたばかりの冷や汗ですこし涼しかったです。

そして思いました。

いずれにせよ、次からこういうことがあったら「僕だけがむふふとなるような再会の演出」はやめた方がいいなと。

開店14年目、またひとつ学びを得ました。

お子ちゃまなおじさんが、まだまだ学べる場所。それが店。やっぱり店はいいもんです。

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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