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ウクライナのニュースを見て

 

今日はちょっと短めに。

ロシアのウクライナへの侵攻のニュースを見て思ったこと。

それは、戦争を経験した祖母が、このニュースを見なくてよかった、ということ。

僕の祖母は、大正生まれ。戦時中は、竹槍で敵兵を突く訓練をさせられていたそうです。

祖父は、中国へ出兵していました。鎖骨に銃撃を受けて重傷を負ったものの、一命を取り留めて、終戦後、日本に戻りました。

戦争が終わってすぐに二人はお見合いして、結婚しました。

祖父はもうずいぶん前に亡くなりましたが、祖母は一昨年、コロナ禍でなかなか面会もできない中、97歳で亡くなりました。

こんなことを言うのは不謹慎かも知れないですが、今の戦争を見ずに亡くなったのは、悪いタイミングではなかった。

人の気持ちに敏感な、たいへん思いやりのあった祖母の性格を思うと、悲惨な映像を見たら、人生の中でもう開けなくてもよいはずだった引き出しが開いてしまうかもしれない。

だから今の戦争のニュース、僕は見なくてよかったと思ってしまいます。

祖母の優しい笑顔、そして、くの字に折れたままくっついていた祖父の鎖骨を思い出し、平和を祈って、お彼岸のお墓参りに行こうと思います。

 

戦争関連でもうひとつ思ったこと。

テレビでプーチンが演説している後ろに大きく「Zа Россию」と書かれた看板が、何度も写っているのを見ました。

ロシア語は、アルファベットは読めるけど、意味はあまりわからない程度の知識なんですが(大学時代、ロシア語をちょっとやっていた)、あれ、訳すと「Z for Russia」つまり「ロシアのためのZ作戦」を指すようですね。

今回、ウクライナ侵攻の作戦のシンボルとして「Z」がいたるところで使われはじめています。ロシア軍車両に「Z」の文字が大きく書かれていたり、国の政策を支持する人たちの衣服や車にも見られます。体操ワールドカップで活躍したロシア選手の胸のマークにも「Z」がありました。

これを受けて、スイスの保険大手チューリッヒ(ZURICH)が企業ロゴの「Z」をSNSで使うことを辞めたというニュースもありました。ロシアのウクライナ侵攻を支持していると誤解されるのを防ぐためだそうです。

そんなところにも影響が出るんだ、と驚きましたが、そのとき、頭をよぎったのは、ワインの「Z」。ワイン業界だと、Zinfandel(ジンファンデル)というぶどうを「Z」と略すことがあります。アメリカで盛んに栽培されている品種で、濃厚でまろやか。日本でも人気があります。

そして、実際に「Z」とラベルに大きく書かれたワインもたくさんあります。今頃、その生産者はどんな気分なんだろう。自分たちが丹精込めてつくったものが、戦争賛成の印と同じと言われてしまいかねないわけです。たまったもんじゃないですよね。もうこれ以上、「Z」の悪用は広まらないで欲しいと思います。

 

ちなみに日本ソムリエ協会では、ウクライナの人道支援の取り組みとして、ウクライナワインを購入することで、ワインを通じて経済を間接的に応援するという取り組みをするようです。

ウクライナのワインづくりは、紀元前4世紀頃から続くといわれる伝統産業です。でも実は、ソ連の時代、ウクライナを初めとして、今独立している東ヨーロッパの国々では、ソ連によってワインづくりが禁止されたり、ぶどう畑が破壊されたりしました。つまり、東ヨーロッパのワイン産業は、これまでもずっと侵略戦争に翻弄されてきた経緯があります。

今回の侵攻で、市民への犠牲がこれ以上広がらないことを願うと共に、ワイン産業がダメージを受けないことを願わずにはいられません。

ソムリエ協会では、田崎真也会長によるウクライナワインセミナーも開催されるということ。僕もワイン業界に関わる一人として、ワインから見た世界の情勢を知っておきたいので、Zoomでセミナーに参加してみようと思います。

ニュージーランドワインの専門家である前に、ワインに関わる人として。ワインに関わる人である前に、平和を願う人として。何ができるか、日々考えていきます。

 

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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