最近、ぺしゃんとなることがありました。
僕たちサービス業の人が、気にするなと言われても気にしてしまう、あれ。
「ネット上でのネガティブな口コミ」です。
ボクモは、開業して12年がたちますが、ありがたいことにポジティブな口コミが多く、おかげさまで、みなさんの応援、善意を感じながら営業を続けられています。
もちろんたまには、ネガティブなご意見をいただくこともありますが、誰にとっても完璧ってものはないと思うので、ある程度は仕方のないことだろうと思います。
耳が痛い意見だからと言って、無視はダメ。やはり、なんらかの理由があるはずです。
ただ、そういうとき僕は、その意見そのものよりも、その人が書こうと思う動機の方に、まず着目します。
僕は、そのネガティブな口コミを書いた人の動機は、主にこの3つだと思います。
- この店にもっとよくなってほしいという「思いやり」から苦言を呈する
- 心のコンディションがよろしくない方が、はけ口として悪口を書く
- 思いやりとコンディション不良のハイブリッド
文面から、この人はどのモードで書いたのか、まずそれを探ります。
1. だと判断した場合は、真摯に受け止める努力をします。それが的を射た僕らの課題であれば、とてもありがたいこと。内側からは気づかない視点で指摘してくださったことに感謝します。
2. だと思ったら、まあまあ、心のコンディションを整えてくださいね、という気持ちで、それ用のフォルダへとそっと移動します。
3. これがいちばん多いかもしれません。「ちょっとイマイチな店だったなあ。なんだかちょっとモヤッとするなあ。普段は書き込みってしないけれど、書けば気持ちがすっきりするだろうし、店のためにもなるだろうし、ええい、書いてしまえ」という感じ。
これも、内容が改善ポイントとして考慮すべきことならば、大いに感謝です。
で、今回です。
今回の場合は、Googleで「ボクモ」と検索したときに出てくる「Googleマイビジネス」への口コミです。
そこで、「自慢のワインは予想以上にグラスの種類が少なくて残念。」という書き込みを頂きました。
これを見た瞬間、固まりました。
や、やってもうた・・・。ぺしゃん。
しかし、すぐにこれは、1.だと判断しました。
だって、「残念」とは書いているけれど、評価のところで、★を3つも付けてくださっているのです。5段階評価の3は、今後に期待の3でしょう。体育の成績はだいたい3だった僕ですが、先生は「だらだらやってるから3」じゃなくて「伸び代に期待しての3」をつけていたはずです(勝手な解釈)。
なので、ぺしゃん、からの、ぺこり!です。 ありがとうございます!
だって、よく読めば「自慢のワイン」と、店がワインに力を入れていることをしっかり認知していただき、その上で「予想以上にグラスの種類が少なくて残念」と、期待を下回ったことを素直に表現されている。これは、間違いなく「もっと頑張れよ」のエールです(再び勝手な解釈)。
たぶん、書き込みの日付を見るに、コロナ休業から明けて間もない頃にいらっしゃった方でしょう。
あの時期は、ご来店数がなかなか安定しない頃でした。今もあんまり安定していませんが、もっともっと平日がヒマだった頃でした。
そんな中で、たくさんの種類のグラスワインを用意するのは、正直・・・とても難しかったのです。本当は10種類くらいはいつも用意していたいけれど、あの時期は、5〜6種類くらいにしていました。
そして、ときどき、口頭で「今はグラスワイン、やむなく少なめにしていますので、申し訳ありません」と言っていましたが、それではダメでした。すべてのお客さまに、きちんとした形でお伝えすべきでした。反省。
書き込みしてくださった方!すみません、今回はご期待に添えず、たいへん申し訳なかったです。次からは、常時10種類くらいは楽しんでいただけるようにスタンバイしておきますので、よかったらまたご利用ください。
ちなみに、店のオーナーからのコメントとして、Googleではこう返しました。
グラスワイン、コロナ禍の中、やや数を絞らざるを得ない時期がありました。少ないと感じさせてしまい申し訳ありません。(中略)3つ★、ありがとうございました。
どうしてヒマだとグラスワインの数が少なくなるのか。
ちなみに、ここからは、言い訳の解説みたいになっちゃって、非常にダサいのですが…なぜ、お客さんが少ない時期にグラスワインがたくさん用意できないのかについて、勝手ながら野暮な釈明をさせてください。
なぜ、ヒマな店はグラスワインの数が少なくなるのか。
簡単に言うと、ワインは、開けたらすぐに風味が変わっちゃう飲み物だからです。
もうちょっと丁寧に言うと、ワインは開栓後、酸化によって風味が急激に変化し、その限界点を超えると売り物にならない商品なのです。
たくさんのワインを開栓し、それらが限界点を超えてしまうと、全部おさらばです(料理酒ならば使えると判断したときはキッチン行きのこともあります)。そんなことばかりやってる店はつぶれます。
栓をされた瓶の中でも、酸化をはじめとする化学反応は起きています。しかし、それはとてもゆっくりとしたものです。よく「高級なワインは、寝かせておくと美味しくなる」と言われますが、その一因が、「瓶内でゆっくりと化学反応が起きているから」なんです。
しかし、ひとたび栓を開けて、ワインが空気中の酸素に触れると、その香りや味わいは一気に変わります。その急激な変化こそが、ワインの楽しみの醍醐味のひとつでもあります。
まだ、ワインがそれほど良い香りがしない場合、ワインが「閉じている」という表現を使ったり、グラスの中でぐるんぐるん回して空気に触れさせて、酸化を促進させると良い香りが出てくることを「ワインが開く」と言ったりします。
ワインをグラスに注いで販売する場合は、そのワインが、閉じていてもよくないですし、逆に開き終わって、本来の香りや味わいのゾーンを通り過ぎていると、それはお客さんに出すべきではありません。
つまり、お店の人は、そのワインが「本来持っている味わいが、現在ちゃんと成立しているかどうか」をチェックして、お出ししなければいけません。
ものによっては、2日でダメになるものもあります。3〜4日くらいもつものもありますし、甘口ワインだと1ヶ月以上もつものもあります。
もちろん、一度開けたワインをどのように保管するかでも、大きく賞味期限は変わってきます。窒素ガスを充填したり、特殊な器具を使って酸化を遅らせるということもできます。そのへんのテクニック、そして味の判断がソムリエの腕の見せ所となります。
よって、「たくさんのグラスワインが飲める店」は、「お客さんがグラスワインをいっぱい頼んでくれる繁盛店」、あるいは、「窒素充填などの特別な処置を施している店」、またはその両方に当てはまる店です。
正直、10月のボクモは、繁盛していなかった。活性炭を使って酸化を防ぐ措置をしていたものの、それでもたくさんのグラスワインを開けるリスクは大きいと判断して、数を絞っていました。
今は反省して、10種類くらい出しています。
以上、ダサい言い訳でした。
「ボクモ」に、ニューアイテムを入れます!
1.のタイプの苦言は、本当に素直に聞けます。思いやり(と僕が感じた書き込み)は、人を良い方向に動かします。
僕は、今回の口コミを受けて、ある決意をしました。
それは、「コラヴァン」の導入です。
コラヴァンとは、ワインの栓を抜くことなく、栓にプスッと針を刺し、その針からワインを吸い上げて、グラスに注ぐ器具です。このときにアルゴンガスを瓶内に送り込むので、驚くほど酸化のスピードを遅らせることができるのが特長です。
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ものによっては数ヶ月、品質を保つことができるようです。
が、めちゃくちゃ高価なので(3.5万〜9万)、ずーーーっと導入に躊躇していました。
しかし、今がタイミングです。グラスワインのニーズがあること、書き込みによってよくわかりました。そして、もし、僕がお客さんなら、ちょっと高級なNZワインをグラスで飲める店があったら、行きたいなと思います。
もちろん、レギュラーのグラスワインのラインナップを充実させつつですが、NZワインの山の上の方がどうなっているのか知りたい、という方向けの高級なワインも、これがあればグラスで楽しんでいただけます。
高額なので、ちょっとドキドキしますが・・・
ええい、押すぞ、押すぞ。
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ボクモでの登場に乞うご期待!