エドワードさんはそう笑って言った。
先日、ニュージーランドのワイナリー「ペガサス・ベイ」からマーケティング・マネージャーのエドワードさんをボクモにお招きしたときのこと。
ボクモの他にニュージーランドワインのオンラインショップも運営しているんですよ。そう伝えると、彼は興味津々で、「どんなサイトか見せてくれないか?」と言ってきた。
iPadを手に取り、通販サイトを見せる。彼は、知っているワイナリーを見つけるたびに「うん、なるほど」と頷きながら、画面に釘付けだ。
「ノース・カンタベリーのワイナリーだけでソートできる?」
彼のワイナリーが位置するのはノース・カンタベリー。どうやら日本で他にどんなワイナリーが扱われているか知りたかったらしい。さすがマーケティング・マネージャー、他社の動向のチェックにも余念がない。
「もちろん」と言ってページを見せた瞬間、彼はにんまり。
「そのままでいい」
そう、ノース・カンタベリーのワイナリーはペガサス・ベイだけ。競合なし、というわけだ。
僕は「いや、それは実はですね…」と言いそうになって口をつぐんだ。
正直、ノース・カンタベリーのワイナリーは数が少なく、扱っている日本の輸入業者も限られている。だから、うちでも積極的に他のアイテムを揃えられていないだけ。
なのだけれど、まあ、そんな言い訳は不要だなと思い直した。彼の満足げな顔が全てを物語っているではないか、と。
用意した牛頬肉のパスタに、ペガサス・ベイの赤ワインを合わせると「これ、最高に合うね!」と絶賛。元々ワイナリー併設のレストランで働いていた彼は、日本でのペアリングもしっかり確認していた。
トークは想定以上に盛り上がり、ときに会場は笑い声に包まれた。お客さんとのコミュニケーションもしっかり取ってくれて、会の終わりには即売&サイン会も実施。彼は終始にこやかで、良い「ノリ」があった。
そう、盛り上がる会には必ずゲストの良いノリがある。
昔、ラジオのディレクターをやっていた頃も、そう感じていた。番組のゲストが心から楽しんで話していると、その感情がリスナーにも伝わり、場の空気が一気に弾む。
ディレクターからソムリエになり、海外のワイナリーを迎える立場に変わったけれど、結局、根本は同じだ。ゲストが楽しいと、お客さんも楽しい。その関係があってこそ、会は成功するんだと改めて思った。
ただ、ひとつ反省点がある。
それは、「名古屋の人は一度気に入ると、末永く愛してくれるんですよ」と伝えそびれたこと。
実際のところ、海外からのプロモーションツアーの中に、名古屋が入ることはなかなか多くない。それでも、わざわざ来てもらった以上は、「名古屋に来てよかったな、また行きたいな」と思ってもらわなければならない。これ、地味に大事なポイント。
今回は幸運にも、熱心なワイン愛好家やニュージーランド好きが集まり、エドワードさんの話を真剣に聞いてくれた。彼らの目の輝きを見て、きっと今後訪れる特別な日に「ペガサス・ベイで乾杯しよう」となると思った。
そう、名古屋の人たちは情が深い。気に入ったものは、長く愛し続けるタイプなのだ。これは自信を持って言える。
だからこそ、エドワードさんにそのことをちゃんと伝えるべきだった。「名古屋に来てくれたから、あなたのワインはこれからも大切にされますよ」と。もしそう言っていたら、彼ももっと名古屋を特別な場所として感じてくれたかもしれない。
でも、まだチャンスはある。来年、僕はニュージーランドに行く予定で、もちろんペガサス・ベイにも足を運ぶつもりなのだ。その時には、きっとこう伝えよう。
「名古屋の人たち、あなたのワインに夢中になりましたよ。これからも、ずっと愛され続けるはずです。」
そう伝えるときのエドワードさんの表情を、今から想像している自分がいる。
・・・と、今回「です・ます調(敬体)」でなくて、「だ・である調(常体)」にしてみました。