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気にしない、気にしない

「マッチングアプリでいいなと思った人と、2回食事に行って、2回とも楽しかったなって思っていたんです。

でも、急に連絡が取れなくなってしまって。私、何か悪いことしちゃったのかなって、かなり落ち込みました。」

以前、女性のお客さんにそう言われて、僕は、

「それって、相手の人が複数人と同時進行で会っていたんじゃないですか。きっと、たまたまもっと気があう方に行っただけですよ。

あなたが悪いとか、そういうことじゃないと思います。気にしない、気にしない。」

なんて言いました。

その方に、今、ちょっと謝りたい。

急に別のところに行かれるのって、やっぱりガーンときますよね。今になって、沁みてわかります。

ボクモは、席の予約をネットで受け付けています。

今、ざっくり言って、全体のご来客数の7割くらいがネット予約をしていただいた方です。

そして最近増えたなあと実感しているのが、キャンセルです。こないだは1日に5件もキャンセルがありました。

それ自体まあまあ凹むのですのが、もっと凹むのは、予約サイトから飛んでくるお知らせメールの文面です。

そのサイトでのキャンセルは、「お客さまがキャンセルした理由」が店側にメールで通達される仕組みになっています。

理由は選択式になっていて、「予定がなくなったため」「予約内容の変更のため」が選ばれていることが多いです。あと「その他」を選んで「体調不良のため」と書き込んでくださる方もいます。

しかし、たまにあるのが「他のお店に変更するため」です。昨日もありました。

・・・つ、つらい。

そりゃあ、うちが持っていない魅力を備えた店はいっぱいあるだろうよ。

でも「おたくより素敵な店を見つけたので、やーめた」なんて教えてくれなくてもよくない?もう、意地悪なんだから。

どこが気に食わなかったんだろう。

そもそも、来店前に気に食わないところがわかったりするのかな。

もしかしたら、食べログの点数がもっと高い店を見つけたからそっちにしよう、なのかな。

そんなことがチラチラと頭に浮かんでは消えます。

カウンター越しに、僕は

「きっと、その人とはいずれうまく行かなくなる運命だったんですよ。だから、早めに切り離せてよかったんじゃないですか?時間の節約になったと思いましょうよ。」

なんて言いました。

店に置き換えれば、やーめたの方は、いらっしゃったとて、うちの店じゃあ満足できなかった方なんだ。

だから、他の店を選んでもらってよかった。ああそうだ、切り離してもらって正解なんだ・・・って。

当事者になると、そんなにふうにはなかなか思えないもんですね。

やっぱり「自分が選ばれなかった」って、自分の存在を否定されている気持ちに多少なってしまいます。

で、カウンターにいらっしゃったあの女性のように「聞いてくださいよ、こんなことがあって」なんて、誰かに聴いてもらいたくなる。そして、今こうして書いちゃっている。

こういうときこそ、あのときの言葉を、ブーメランにして、自分自身に大声で浴びせなければ。

「気にしない!!気にしない!!」

そう、気にすべきは、来てくださっている方々なのです。たくさんある店の中から、他の店じゃなくて、うちを選んでくださった皆様がいるじゃないか。

そっちに目を向けなくてどうするよ。

ありがたさを胸に、今日も店に立ちます。

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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