知らない人同士が隣になって、ひょんなことから「好きなものが同じ」と知る。
そうなると一気にその場が盛り上がる。カウンターでそんな光景をたくさん見ています。
うちの店にない食べ物で盛り上がるのってどうかとも思うのですが、まあそれはそれ。他の飲食店の話って、うちみたいな店では定番の話題なので。
あんかけスパと言えば、名古屋のB級グルメの代表格です。が、名古屋に住んでいる人同士だと、あまりあんかけスパにまつわる話ってしないと思います。
好きな人はごく普通に自分の好きな店に通っている。僕もそうです。でも、それは日常的な行為なので、あえて話題にすることもない。自分の家の味噌汁の味を説明する機会がないのと同じかな。
しかし、そんな生活の中にあんかけスパが入っている人の輪の中に、名古屋以外出身の「あんかけスパ未経験の人」が入ったとき、面白い現象が起きます。
「僕、名古屋に引っ越してきてだいぶ経つけど、あんかけスパってまだ食べたことないんですよ。」
「え?それはもったいない。ヨコイくらいは行っておかないと!ミラカン食べておかないと!」
「パスタ・デ・ココとか、普通にうまいですよ。」
「入りやすさで行ったらチャオもいいんじゃない。店もたくさんあるし。」
「チャオと言えば、最近、チャオと名城食品が共同開発した自宅で食べられるあんかけスパセット、スーパーで売ってますよ。なかなか美味しかったです。」
「僕は25年前から通ってる「る・るぽ」のピカタが人生No.1ですね。あれはあんかけスパと言うより、ちゃんとした洋食なんです。」
こんな具合に、名古屋人の日常に潜り込んだ、それぞれの生態があぶり出されるのです。外の人が入ることで、隠されたあんかけライフをさらす機会を得るわけです。
そして、愛する気持ちはいっしょだけれど、その中の細かいこだわりの部分に少しズレがある。こういうのがいちばん盛り上がります。
その日は、あんかけ未体験の方がいたおかげで、みんなが自分のこだわりを話したくなるモードになりました。盛り上がったなあ。
そして思いました。
「る・るぽ」のピカタ、近いうちに食べに行きたいぞ!と。
「ナイフとフォークでお肉を食べる感じがたまらないんです。それから、たまに炒めすぎて麺が焦げているときがあるんですよ。あれに当たるとラッキーです。香ばしくて最高なんですよね。」
行く!絶対に行く!
ちなみに、あんかけスパにあうワインは、フルーティー系のピノ・ノワールかサンジョヴェーゼだと思います。