木村滋久さん

「前から歩いてくるヤンキーに目は逸らすけれど、バンジージャンプは飛べるタイプ。」

木村さんはご自身のことをそう言っていました。

昨日、ニュージーランドのワインメイカー・木村滋久さんが4年ぶりにボクモにやってきました。

コロナをジャンプしての再会、嬉しかったです。

満席の店内で、お客さんに向けてご自身がつくるキムラセラーズのワインの話をたっぷりしていただきました。

終始丁寧な話しぶりで、ご自身のこだわりや思い、自社畑のオーガニック製法などについて詳しく聞くことが出来ました。

こんな機会はなかなかないと、遠くからはるばるいらっしゃった方も。みなさん、本人からお話を聞きながら飲むワインは格別だとおっしゃっていました。

それにしても、ホテルマン時代にワインをつくってみたいと思い立ち、夫婦でニュージーランドに移住して、大学で栽培と醸造を学び、そして大手ワイナリー勤務を経て独立。

なかなかそんな行動ができる人なんていないですよ。

僕がそう言ったら、木村さんは「僕は基本臆病者なんです。でも、思い切りは良い方なんです」と言い、冒頭の言葉が出てきたのでした。

なるほど。こういう性格の方が自分の思いを成し遂げるんだな。

まあ、僕だって昔は前からヤンキーが歩いてきたら、すれ違わないように曲がりたくない角を曲がるタイプではありました。

にしても、海外で農業をやるなんて、僕からすると度を超えた特大のバンジーです。

そしてワインについて知れば知るほど、そのバンジーの飛距離が途方もないことがわかるのです。

ワイン業界の端くれにいると、「自分もワインをつくってみたいな」という思いが頭をかすめることがなかったとは言えません。

でも、ワイナリーを訪れたり、こうして実際にワインをつくる方の話を聞くと「無理無理」と正気に戻ります。

毎日土にまみれて地道な作業の繰り返し。栽培や醸造について勉強すべきことは山ほどある。

常に自然の脅威と隣り合わせ。

丹精込めてつくったものの、思い通りのぶどうにならない、発酵が進まない、香りや色が出ない、余分な菌が入ってくる。そんなこともあるでしょう。

なのに、ぶどうは1年に1回しか収穫できない。どんなに凄いワインメーカーも年に1度ずつしか経験値は貯まらない。

・・・難しすぎるだろう!

だから、こうして素晴らしいワインをつくっている方が、もうそれはそれは神々しく、キラキラ輝いて見えるのです。

特に今回新入荷したドライ リースリング、相当良いです。リンゴのコンポートのような香り、ピュアな飲み口、そして余韻にミネラル感と塩味。たまりません。

ボクモワインでも数量限定で入荷していますので、気になった方はぜひ。

キムラセラーズのアイテムはこちら

最後に、ずっと気になっていた質問をしてみました。

「日本の甲州をニュージーランドに持っていったら、うまく育つと思いますか?」

すると、木村さんは

「余裕で育つと思います。きっと美味しいワインが出来ると思いますよ。」

とのこと。まじか!

固有品種の持ち出しや持ち込みはなかなかハードルが高いですが、将来、ニュージーランド産甲州ワインが誕生したら面白いですね、なんて話で締めくくりました。

未来の楽しそうなことが語れる時間って、いい時間です。

ああ、いい夜だった。木村さん、また会いましょう。それまでお元気で。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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