驚きと暖かさ

「ケーキの持ち込みって大丈夫ですか?」

たまにあります。

断るお店もけっこう多いみたいですが、ボクモはご予約時に申し出ていただければ、基本OKとしています。

先日、若い女性のお客さまが開店直後にひとりでいらっしゃいました。

「あの、電話でお願いしていた者です。今日、ケーキの持ち込み、すみませんがよろしくお願いします。冷蔵庫に入れていただいても良いですか?」

そう言って、スタッフにケーキの入った箱を渡すと、いったん退店。

そして、予約の時間になると、同じ年くらいの男子といっしょに入店されました。

お食事の終盤、彼女はお手洗いに立ち上がり、厨房に合図。

そして、「お誕生日おめでとうございます!」とスタッフがケーキを持っていくと、満面の笑みで彼氏に「おめでとう」と言って拍手をしました。

その姿、本当に可愛らしかった。

ただ、男子!もうちょっと嬉しそうなリアクションしてよ、と思っちゃったな。

だって、そのケーキ、彼女の手作りなんですよ。前日から準備して、わざわざ彼氏よりも先に店にケーキを届けて、そして満を持してのサプライズ。

ハグとまでは言いませんが、なんか、もうちょっと嬉しさを体で表現しないと彼女の愛情に釣り合わないんじゃないの。

まあ、いきなりの展開に反応できずに、固まっちゃったのかな。そう考えたら、コチコチ男子もまあまあ可愛いですね。

いずれにせよ、その空間はとても暖かかった。

その温度が隣の席へ、店全体へと広がった気がしました。

そして、改めて思いました。

「ああ、本当にコロナ禍、明けたんだな。」と。

あのときは、手作りのケーキを飲食店で渡すサプライズなど、まずできなかったもんな。

前にも書きましたが、僕らはコロナが5類になった5月から、ようやく飲食店の復活劇がはじまるかと手ぐすねを引いていました。

が、結果は惨敗でした。特に9月や10月のボクモは、かなりピンチでした。お客さんが来ない毎日に、「ああ、この仕事はもう必要のない仕事になってしまったのかな」と落ち込んでいました。

しかし、12月。一気に忙しくなりました。

あのサプライズのカップルをはじめ、お初ボクモの方がかなり多かった。久しぶりの方にもいっぱい会えました。常連さんがちょっと遠慮するくらいの盛況ぶりでした(常連さんすみません)。

この12月は、来年に繋がる希望を頂きました。お越し頂いた皆さん、本当にありがとうございました。

やはり需要がある仕事ができているという実感は、なにものにも代えがたい。

それを改めて思い知った年末となりました。

苦しい時期もなんとか乗り越えられたのは、シェフのおかげです。腐らずにいっしょに走り続けてくれてありがとう、ありがとう。スタッフのみんな、とても頼もしいです。来年も頼みます。

そして、通販のボクモワインも、おかげさまでこの12月は過去最多のご注文を頂きました。ああよかった。

スタッフ佐藤さん、たくさんの出荷作業お疲れ様でした。

お届けしたそれぞれのお宅で、テーブルに置かれた美味しいニュージーランドワインを囲んで乾杯している絵を想像すると、やっぱりニヤけてしまいます。

さあ、2024年。

あの彼女のサプライズを見習って、周りの温度がちょっと上がるような、なにか素敵な仕掛けをやってみたいな。

通常営業、イベント営業、通販。

それぞれの仕事に、驚きと暖かさを。

皆さんには、ハグとは言わないまでも、良い感じのリアクションをお願いします(笑)

今年1年も、お世話になりました。ありがとうございました。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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