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情報量が多すぎる日

人生には、情報量が多すぎる日がある。

上手な人は、その情報をひとつひとつ仕訳して、折りたたんで、自分の中の収納スペースに綺麗に納めるのだろう。

でも、僕はド下手だ。

目の前に山盛りになった情報を、ああ、量が多いなあと眺めて突っ立っている。そして、山にちょっと手をつっこんで、ごにょごにょ丸めるも、まったく片付かない。

あの日に自分に起きたこと、そしてそこから湧き上がった感情を上手に片付けることが、今も出来ないのだ。

それは先週の土曜日。

大学時代に所属していたサークル「SBF中日本学生放送連盟」の70周年の記念パーティーがあった。

その日の膨大な情報からちょっとだけ抜き出し、ごにょごにょと丸めてみることにする。

乾杯の発声は、86歳の大先輩の女性だった。

「それぞれの立場で、今の社会をしっかり見ましょうね。社会に参加し続けましょう。乾杯!」

うわあ、とその言葉の力に圧倒された。

大先輩の時代は、メディア黎明期。放送とは何か。社会の中でどういう役割を果たせばよいのか。連盟室(サークルの拠点の部屋)で、そんなことを話していた世代なのだろう。

僕らはと言えば、イデオロギーのイの字もない活動だった。夜な夜なマリオカートをやり、たまにイントロクイズを作ったりしていた。

お恥ずかしい、とも思いつつ、それが僕らの世代だ、と開き直る気持ちもある。

共通しているのは、あの連盟室で青春時代を過ごしたこと。その事実が、目の前の立派な先輩と僕らを繋いでいる。

それぞれ、青春をあの場で過ごしたことが胸に刻まれている。そして、その場が今も存続していることを嬉しく思っている。

そんな人たちがそれぞれの人生のステージで、この会のために時間を割き、今この瞬間集まっている。

現役生たちはみずみずしく、見ていて気持ちが良いし、プロのアナウンサーの司会進行はさすがに素晴らしい。

最後に全員で合唱したサークルの歌は懐かしすぎたし、OB会長は感極まってむせび泣いている。

情報が多い!

パーティーの二次会は、我が店ボクモで(正確にはもう1軒途中で挟んでいるので三次会なのだけれど)。

パーティーには出ずボクモから参加の面々も合流し、合計20人以上が狭い店内にぎっちり。みんな学生時代に戻ったテンションで、それはそれは盛り上がった(静かなボクモを期待していらっしゃった他のお客さま、本当に申し訳ありませんでした)。

近況報告をしたり、懐かしい写真を見たり、昔みんなが書いていた呆騒録という名の連絡ノートを回し読みしたり。

久しぶりに会った先輩に言われた。

「岩須くんのブログ、読んでるよ。あれさあ、いつも伏線をちゃんと回収してるね。」

・・・わ、嬉しいけれど、恥ずかしい!

でも、あの、、、これ、伏線を回収するぜ、と勇んで書いているわけじゃないんです。

前段があり、その後、書きたいストーリーを点と点を線で繋ぐ。最後に、前段を踏まえた結論めいたことを書く。

長いことラジオの原稿を書いていると、そんな自分の型みたいなもんができていて、そのフォーマットが楽だからこのブログでも使い回している。そんな感じなのです。

そもそもそんなに綺麗に回収できてることって滅多にないし。

でも、こんな駄文を読んでくださってありがたいです。

その後の三次会(正確には四次会)も濃密だったなあ。ド深夜なのに先輩方は、学生かと思うほど元気だし、後輩は真面目に語っていた。謝りたかった同期に、あのときはすまなかったと言えたのもよかった。

帰りのタクシーに揺られながら、みんなの顔が浮かんだ。ああ、BIG DAYとは今日のことだなあ、と思った。

あれから1週間経った今も、まだ余韻が続いている。

懐かしさ、嬉しさ、驚き、希望、安心。なんかそういうのがごちゃ混ぜになった、こってりした、だけどあったかいものを山盛り食らって、ちょっと胃もたれしている感じ。

当然、伏線を張って回収するような文章に落とし込むほど、自分の中で消化できていない。一部分を抜き出して丸めるので精一杯。

ただ、消化不良の中でも、ひとつ思ったのは・・・

あの学生時代、みんなでわいわい騒がしく過ごした連盟室。

そして、先輩と同期と後輩がワインを飲みながら楽しそうにしている自分の店、ボクモ。

二つの空間が、時を超えて繋がった。そんな気がした瞬間が、あの日あった。

僕は学生時代、途中からアルバイトが忙しくなって、それほど積極的にサークル活動に参加できなくなった時期がある。

そして、同期の友人たちに役割を任せっきりで、自分がやるべきことを果たせなかった後悔がある。

そんな僕だけれど、こうして場を提供させてもらえた。ボクモの中にいるみんなは、本当に良い笑顔だった。あの連盟室の続きの時間を、ここで過ごしているんだと思った。

70周年という節目に、みんなの集合場所になることで、ほんの少しだけれど罪ほろぼしできたような気がする。

あの当時の申し訳なかった気持ちを、四半世紀越しに少し回収したと言えるのかも知れない。そして僕は救われた気分になった。

またいつか、岩須のところで集まろうと思ってもらえるように、しっかりと続けていこう。と、今日は小さく丸めておく。

 

PS 先週書いた、間違えて1週早くボクモに来た同期の彼は、当日来ませんでした。おいおい、やってもうた、からのリベンジっていう回収はないんかーい。

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この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。
ニュージーランドワインと多国籍料理の店「ボクモ」(名古屋市中区)を経営。ラジオの原稿書きの仕事はかれこれ29年。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。

一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ

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ボクモワイン代表 岩須直紀

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