あれから10年

あの日から10年が経った。

久しぶりの同窓会は、お葬式だった。

10年前、高校の部活の仲間が突然亡くなったと連絡があり、僕は慌てて黒いネクタイと香典袋を買いに行った。

亡くなったのは、高校時代、軟式テニス部で僕とペアを組んでいた彼だった。

高校を出てからはたぶんほとんど会ったことがなかったと思う。その他の部活のメンバーも、個々で会うことがあっても、みんなが揃うことはなかった。

ずいぶん久々に会う彼は、安らかな顔をしていた。そしてまだ38歳だったが、だいぶ禿げていた。

部室で

「誰がいちばん早く禿げるんだろうな。」

「お前じゃない?」

「いや、俺もだけど、お前もやばいだろう!」

皆でそんな話をしたことを思い出した。

そして、彼はぶっちぎりでいちばん早く禿げて、棺に横たわっていた。

おいおい、あの日の答え合わせがこんな形って、悲しすぎるだろう。

いよいよヤバくなってきたぞ、とか、ケアどうしてる?とか笑いながら話したかった。

あっちに行くにはぶっちぎりで早すぎる。

予期せぬ部活同窓会の二次会は、葬儀場の近くのファミレスだった。

お酒もない、静かで重たい会だった。

帰り際、メンバーの中からこんな声が出た。

「俺たち、年に一回くらいは会わないとな。」

みんな口々に、そうだな、会おうと言った。

あれから10年。

年一の会は、続いている。言い出しっぺの友人が、毎年部活メンバーに連絡してまとめてくれているおかげだ。

お墓にお参りしてから、亡くなった彼の実家にお邪魔して、お母さんと話す。

そしてご飯を食べて、他愛ない話をする。明るい会だ。

テニスコートや部室で過ごしたあの濃密な頃とは違うけれど、年に一度の定点観測で、ゆるやかだけれど強い繋がりを持てている実感がある。

彼が去ってからの10年は、僕らの繋がりが強くなる10年になった。

今年は墓参りの前日にボクモに集合してくれて、みんなでワインを飲んだ。嬉しかったな。

高校のときは、こんな未来があるとはまったく思わなかったよ。寂しいけれど、ありがとう。そんな気持ちに毎年なります。

ちなみに今回のハイライトは、数年前にこの会で「俺、YouTuberになる」と宣言した友人。

思いもよらぬ方向に行ったもんだ、と思ったけれど、今年、「ちょっと見てよ」と持って来たものにたまげた。

10万フォロワーを達成すると贈られる楯だそう。

僕も来年は、ちょっと見てよと言える何かを、みんな(もちろん彼と彼のお母さんにも)に見せられたらいいな。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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