僕はめちゃくちゃ緊張していました。
司会の人、はやく名前呼んでくれないかな。目の前に置かれた料理、せっかく久々のフルコースなのに、ほとんど味がしないよ。
そう、僕は披露宴のスピーチを仰せつかったのです。
僕は、新郎の大学のサークルの先輩であり、新郎新婦のふたりがデートを重ねた店の人でもある。まあまあ関係性は強い。それから、僕には普段からカウンターやイベントなどでべらべらと喋っているイメージがあるんだろう。たぶん、頼みやすい人だったんです。
僕自身も、これまでに3回ほど披露宴でスピーチをさせていただいたことがあるので、「お願いしてもいいですか?」と言われたときには、「まかせとけ!」くらいの勢いで快諾しました。4回目ともなると、まあ、さほど緊張せずにいけるだろうと踏んでいました。
しかし、それは踏み間違いでした。本番3日前から、めちゃくちゃドキドキしてきたのです。
理由はただひとつ。
ボクモでは、最近よく20歳のシンガーソングライター、カズミナナの配信ライブをやっています。すごく良いので、音源聴いて欲しいです。
僕のインスタに、ライブのアーカイブがあります。 ▶bokumo_tencho|Instagram
音源はこちら。 ▶カズミナナ Nana Kazumi|soundcloud
ある日、ライブが終わったあと、ぽろっとナナちゃんが言いました。
「今日は、いっぱい練習してきたので大丈夫だって思ったんですけど、歌詞、間違えちゃいました。」
そのとき僕は、反射的に言いました。
「まあ、そういうこともあるよね。」
しかし、家に帰って、スピーチの原稿を推敲しているときに、ナナちゃんの言葉が脳内でこだましたのでした。
「大丈夫だって思ったけど、間違える。」
やばい。スピーチ、4回目だから大丈夫だって思ってるけど、もしかして、大失敗するんじゃないか。そうだ、大丈夫は、慢心のはじまりだ。ナナちゃん、ありがとう。俺、おごり高ぶっていたよ。おごったまま本番に臨んでいたら、きっとえらいことになっていたよ。
間違えるくらいならまだいい。真っ白になって放送事故になる可能性もある。なにか、アホなことを口走ってしまい、ふたりの晴れ舞台を台無しにする可能性だってある。そう思ったら、汗が出てきた。台本を見て、繰り返し練習。いや、台本なんか見ない方が良いか。どうしようか。ああ、ドキドキする。
そして、当日。
本当は、テーブルで一緒になったシェフや常連さんたちともっとわいわい盛り上がりたかったです。でも、なんだかそわそわが止まらなくて、口数が少なくなってしまうし、酒もすすまない。
出番前、司会の方が、こっちにやってきます。そして、耳元で言いました。 「ラジオの構成のお仕事やってるんですって?スピーチ楽しみにしています。」
おい!!なんだよ!!そのプレッシャーのかけ方!
そこからは、あんまり覚えていません。
覚えているのは、自分の出番が終わったあとの感覚。 「大きな緊張のあとの大きな緩和」。
ガチガチに固まった体から、ふーっと力が抜け、止まっていた血が流れ出します。めちゃくちゃ気持ちが良い。
寒さをこらえにこらえてから、温泉につかったみたいな感じ。湯船に浮かんだフルコースの中盤から料理は、それはそれは美味しく感じました。
そのあとの、「4色のマスクの中から好きな色をつけて、実は、それがお色直しのドレスの色当てになっていた」という演出、新郎が自ら作ったプロフィールのVTRの完成度の高さ、新郎のお父さんがいきなり加山雄三を熱唱して、一番を歌ったあとずっと自分の思い出を語っていたこと、完全にお父さん目線で涙した新婦の手紙。
すべてが、温泉の中の出来事で、ものすごく心地よい。あったかい気持ちがずーーっと続きました。これは、緊張タイムがあったからこその体験だなと思いました。
だから、結果、スピーチをやらせてもらってよかったなあ、と。
司会の方のだめ押しのプレッシャーも、まあ、そのあとの楽しい緩和タイムのためだったと思えば、まあ、よかったです。
良い経験させてくれて、ありがとう。いがちゃん、ゆいちゃん。末長くお幸せに。あのあと、店に来てくれたふたりを見て、またあの余韻が蘇ってきて、あったかい気分になりました。なんなら、今も思い出して、ぽかぽかしています。
そして、これ。僕がこれまでいただいた中で最高の引き出物だと思いました。
リーデル・オー。
ペアのワイングラスです。リースリング・ジンファンデルというモデルで、ちょっと小ぶりなかわいい形。脚がなくて、安定性が高いので、食卓でワインを飲むのにぴったりです。
これを使うたびに、ボクモで仲良くワインを飲んでいるふたりを思い出すことになりそうです。
(ちなみに、脚のないワイングラスについて、あれこれ書いた記事はこちら。)
▶ソムリエブログ|ダイソーにとんでもなく本格的なワイングラスがあった!? ただ、ちょっと気になることも…
今週のワインとおつまみ
INSIEME ROSSO 2019 NELSON
いわゆるヴァン・ナチュール。自然派ワイン。NZではまだ珍しい存在ですが、ナチュール生産者はNZにも点在しています。
これは港町ネルソンのワイン。生産者は、Grape Republic&Alex Craighead。ピノ・ノワール70%、リースリング30%の混醸法という、なかなかぶっとんだ作りをしています。
ピノ+リースリングというだけあって、渋みはかなり少ない印象。さらりと飲めます。が、正直、ちょっとブレタノマイセス(酵母の一種)によると思われる独特の香りがやや多めのような気がしました。もちろん、これがこのワインの個性を作っているのは間違いないのですが。ナチュールに慣れている人向けかも知れません。
4日間かけて飲んだのですが、香りや味わいの特徴はさほど変化せず、という感じでした。香りに慣れてしまえば、すいすいいけるワインだなあと。
あわせてみたのは、鰹のたたき+モッツァレラチーズのサラダ。 酸味のある赤ワインと鰹の相性、悪くない!