ワイン業界がざわつくシーズンがやってまいりました。
ボジョレー・ヌーヴォー?いや、まだヌーヴォーにはちょっと早い。
この時期のざわつきと言えば、「ソムリエ試験、ワインエキスパート試験」の「二次試験」で「どんなワインが出題されたか」です。
この試験、ワインに明るい方はご存じでしょうが、そうでない方もいらっしゃると思いますので、簡単にさらっておきます。
日本ソムリエ協会が認定する「ソムリエ試験」というのは、飲食サービス業や種類関係の業務を通算3年以上やっている人向け。
もうひとつの「ワインエキスパート」は、そのハードルのない、誰でも受けられる試験。その難易度はほぼ同じと言われています。
「ソムリエ試験の勉強って大変なんでしょ?」とよく言われますが、いやいや。ワインエキスパートの方がもっと大変です!!!
僕らは、日常的にワインに触れる仕事をしているので、業務の延長として勉強に取り組むことが出来ますが、エキスパートに挑戦するみなさんは、普段、別の仕事をしている中に、ぐぐぐっとワインを取り込まなきゃいけない。
そして、試験の難易度は、飲食のプロであるソムリエと同じ。これは、相当勉強をやりこまないと受からないやつですよ。
だから、僕はエキスパートの資格を持っている方は、無条件で「僕なんかよりはるかに頑張った人」と尊敬します。
試験内容は、「ソムリエ」「ワインエキスパート」は、ともに一次試験が、知識を問われるマークシート出題。
「ソムリエ」の二次試験は、「テイスティング」と「論述試験」、三次試験が「サービス実技」です。
「ワインエキスパート」は、二次試験の「テイスティング」まで。これで合否が判定されます。
で、話を戻すと、今年の場合、きのう10月12日(月)が、「ソムリエ」と「ワインエキスパート」の二次試験、つまり「テイスティング」の日。
ここで、どんなワインが出たかが、毎年ワイン界隈では、話題になります。
「えー、まじか!そんなマイナーな品種が出るの!?」
「なるほど、やっぱり、王道の分かりやすいものは1問は入ってるね。」
「ここ数年、あの産地は出題されていないと思ったら、今年やっぱり出た!」
などなど、出題されたワインに対して、あーだこーだ、受験生や、有資格者がのべるわけです。で、その話題がまたワインのつまみになったりするんですな。
試験は、ワインの外観や、香り、味わいの表現を正確に選びながら、最終的に、そのワインの産地とぶどう品種、ぶどうの収穫年を当てるというものです。
その中でも、フォーカスが当たるのが、試験当日に速報でウェブに正解が掲載される「収穫年、産地、品種」の3要素です。
僕の場合は、普段なら「へえ、最近の傾向はこんな感じか」くらいに横目で見ています。「もしこれが出題されたら、自分なら自信があるかも」とか、「いや、こんなのが出たら難しいな」くらいのことを思っておしまい。
ただ、今年の場合は、違う。大きく違うのです。
なぜなら、「ワインエキスパートのテイスティング試験」で「ニュージーランドのピノ・ノワール」が出題されたから!!!!
ワインエキスパートの4問目です!
まじか!と思いました。
実は、2015年に「ソムリエのテイスティング試験」で、ニュージーランドのピノ・ノワールが出題されています。このときも「おお!NZのピノが、受験生が知るべきワインとして、ついに選ばれたか!」と、思いました。
しかし、5年後の今年。今度は、ワインエキスパート向けでまた出題されるとは。これは、いよいよ、ですよ。
なにがいよいよと言うと、わかるでしょ?そう、ブレイクです。
ニュージーランドの白ワイン「ソーヴィニヨン・ブラン」は、ワインを知っている方には、「世界に類を見ない特徴的な味わい」ということが知れ渡っています。試験では、この10年で3回も試験に出題されていて、いわば、ラッキー問題的な扱いのワインです。
ただ、それゆえ、どうしても、「ニュージーランド=ソーヴィニヨン・ブランだけの国」というイメージがぬぐえなかった。あまりにその個性が際立っているもんですからね。
そんなワンパターンな国という印象をぶち破るのが、赤ワイン「ピノ・ノワール」です。実際に、プロの間では、ニュージーランドのピノ・ノワールの品質の高さはよく知られるようになっていて、世界三大ピノ産地の一角に入ったりもしています。
ただ、一般層への認知はまだまだぜんぜん足りていないのが現状。そこへきて、今回の出題です。ワイン業界へのエントリー試験である、ソムリエ・ワインエキスパート試験で、2015年に続いて、2020年も出たとなると、「とっても大事な産地と品種」であることが広く認知されると思うのです。
いやー、これはブレイクの予感びんびん。いよいよ、ニュージーランドワインが、日本で大注目を集めるときがくるんじゃないの!!!
そうなったらいいなあ。このサイトもたくさんの人に見てもらて、ニュージーワインを知りたい人の役に立ったらいいなあ!
なんて、思いを馳せてしまいます。
ただひとつ、個人的に気になるのは、出題されたピノ・ノワールが、ニュージーランドの「どの産地のものか」です。
ちょっと解説。ニュージーランドのピノ・ノワールの名産地は、主に3つあります。
1)セントラル・オタゴ
最南端の寒い産地。でも夏の日照量は豊富で、乾燥している。気むずかしい品種のピノ・ノワールが、この地だと非常にうまく育つ。しかし、値段はやや高い。高級ワインは普通に1万円オーバー。
2)マーティンボロ(ワイララパ)
本場ブルゴーニュと同じような気候条件を持つ、奇跡のピノ産地と言われる。非常に小さな産地で、やっぱりワインはめちゃ高い。
3)マールボロ
NZワインの約8割を生産するオバケ産地。白のソーヴィニヨン・ブランの圧倒的な人気に隠れているが、ピノもちゃんとあって、ちゃんと美味しい。値段はリーズナブルなものもある。
これを踏まえると、1)2)は、うまくて高い。3)は、それほど高くないものもある。全国16カ所の試験会場で、まったく同じワインを使うとなると、少量生産品や高級品は使いにくい。だから、3)のマールボロ産が本命かなと思います。
マールボロ産のピノ・ノワールの典型スタイルは、ラズベリー、ダークチェリーのようなフレッシュな果実のムードがたっぷりで、口に含んだときのフルーツ感が強い。後味はやさしく、渋みはやわらかい。そんな感じです。
でも、実際に試験に使われた「銘柄」までは明らかにされないので、本当にマールボロ産かどうかはわかんない。
うーん、知りたい。
知ってどうなるってもんでもないですが、日本ソムリエ協会が試験で選んだワインって、きっと「ニュージーランド産っぽさが出ているから、そこをちゃんと捕まえなさい」というメッセージが込められていると思うんです。
NZ国内の、「あっちのピノ」や「こっちのピノ」やら、色々雑多に触っている僕からすると、今の日本ソムリエ協会って、「どのピノ」を「これぞニュージー」って思ってるんだろう。それが、めっちゃ気になるんです。
え?みんな、ぜんぜん気にならない?
あ、そう。そうですよね。熱くなりすぎましたね。
ほとんどの方にとってどうでもいいゾーンの話になっていることに、薄々気づいてきたところで、今日はおしまいにしたいと思います。
言いたかったのは・・・・
ニュージーランドのピノ・ノワール、5年のうち2回も試験に出るくらい「知るべきワイン」になったぞ!きっとブレイクするぞ!っていうこと。
次回は、もっとマニアックじゃない話題がいいかなあ。バランスをとらないとね。この時期のポップな話といえば・・・やっぱり、ボジョレー・ヌーヴォーの話にしようかな。