「ニュージーランド・ワイングロワーズ」(New Zealand Winegrowers)より、2022年版の「ヴィンテージ・インジケーター」(ヴィンテージ指標)が発表されました。
今回はそのデータに基づき、NZワインのヴィンテージ情報をお届けまします。
「ヴィンテージ・インジケーター」って、どういうものなんですか?
その年のワイン用ぶどうの収穫量などを、まとめた指標のことです。 NZは南半球なので2〜4月にはぶどうの収穫が終わり、6〜7月頃になると「ぶどうの年間収穫量ランキング」が発表されるんですよ。
昨年の記事はこちらです。
▶NZのワイン用ぶどう2021年「年間収穫量ランキング」発表!今年は大幅減
それでは、2022年のNZのワイン用ぶどうの収穫量や、それに関する動向を簡単にお伝えします。
2022年ぶどうの収穫量や、近年の生産に関する動向
昨年2021年は、NZでは春の天候不順の影響でワイン用ぶどうの収穫量が前年比で19%ダウンしました。これは、今までにあまり見たことがないような大幅な減少でした。
しかし今年は一転し、一気に前年比44%増へと転じています。昨年の下げ幅の回復どころか、一昨年の2020年と比較しても16%の上昇となっており、2022年はNZのワイン用ぶどうの豊作の年になったと言えます。
収穫年 | 全体の収穫量 |
---|---|
2021年 | 370,000t |
2022年 | 532,000t |
※収穫量の表示単位 t=トン
参照データ:https://www.nzwine.com/en/media/statistics/vintage-data/
去年から44%も増えたんですね!価格面でなにか影響はありそうですか?
2021年はぶどうの大幅な収穫量減少の影響で、当然、ワインの生産量も減っていました。
個人的な印象になりますが、その中でも特にリーズナブルな価格帯のワインがぐっと減ったように思います。
でも、今年は生産量がかなり増えたので、リーズナブル路線のワインもまた多く流通するのではないかと予想しています。
地域別の収穫量ランキング
地域別の収穫量は、下記のようになっています。
地域 | 収穫量(割合) | 前年比 |
---|---|---|
マールボロ | 414,649t (80.6%) | +54% |
ホークス・ベイ | 40,172t (7.8%) | -2% |
ギズボーン | 19,334t (3.8%) | +11% |
セントラル・オタゴ | 12,575t (2.4%) | +22% |
ネルソン | 10,967t (2.1%) | +39% |
ノース・カンタベリー | 9,779t (1.9%) | +34% |
ワイララパ | 5,363t (1.0%) | +71% |
オークランド | 1,343t (0.3%) | +8% |
参照データ:https://www.nzwine.com/en/media/statistics/vintage-data/
マールボロでも大幅増!生産量の8割を超える
NZを代表する一大産地マールボロでは、なんと前年比54%増の収穫量となりました。このマールボロの収穫量の大幅なアップが、NZ全体の生産量増大の最も大きな要因となっています。
そして、今年のNZ全体の収穫量のうちマールボロが占める割合は80.6%となりました。
8割以上という数字は圧倒的ですね!NZって、ほとんどのワインがマールボロでつくられているということなんですね。
はい。こんなにひとつの産地に生産が集中している国は珍しいと思います。
最近まで「NZの約3/4のワインをつくっているのがマールボロ地方である」と言われていましたが、最新情報では「マールボロは、NZの8割以上のワインをつくっている産地である」が正しい表現となりますね。
マールボロ地方には、他の産地とは比べものにならないほどの大きな農園があり、それらの多くの畑では、効率のよい機械収穫を採用しています。
つまり、マールボロは、比較的リーズナブルなワイン(日本での小売価格2000円前後のワイン)を生み出すのが得意な産地と言えます。
そんなマールボロの生産量が2022年、飛躍的に伸びたということは、「2022」とラベルに表記されたマールボロ産のワインは、「2021」よりもぐんと増えるはず。
手に取りやすい価格帯のNZワインの流通量が増える可能性も高そうです。
一方で、気になるのは、北島のホークス・ベイの収穫量が微減したことです。
ホークス・ベイは、マールボロに比べて温暖で、濃厚な赤ワインの産地として知られています。
現在も収穫量においてNZ国内2位の座はキープしていますが、3位のギズボーン、4位のセントラル・オタゴに徐々に差を詰められてきている印象です。
ぶどう品種別の収穫量ランキング
続いて、ぶどう品種別の収穫量をみていきましょう。
品種 | 収穫量(割合) | 前年比 |
---|---|---|
ソーヴィニヨン・ブラン | 393,956t (76.5%) | +47% |
ピノ・ノワール | 34,569t (6.7%) | +57% |
ピノ・グリ | 30,465 (5.9%) | +45% |
シャルドネ | 29,762t (5.8%) | +27% |
メルロー | 7,535t (1.5%) | -24% |
リースリング | 5,024t (1.0%) | +14% |
参照データ:New Zealand Winegrowers NZ Wine Vintage Indicators by Variety 2021
ピノ・ノワールが収穫量第2位。ピノ・グリの人気も上昇傾向
ぶどうの品種別のランキングを見ると、やはりソーヴィニヨン・ブランの収穫量は安定しており、全体の76.5%を占めています。2021年は74.8%だったので、今年は昨年よりも占有率を少し上げる結果となりました。
特筆すべきは、ピノ・ノワールの収穫量の増加です。昨年と比べて12,540トンも収穫量がアップし、実に1.5倍以上の伸び率となりました。品種別ランキングでも昨年より順位を一つ上げ第2位となり、2022年はNZピノの大豊作の年だったと言えるでしょう。
逆に人気に陰りが出はじめたのが、シャルドネです。2021年は品種別ランキングで第2位でしたが、2022年は、2ランクダウンし4位という結果に。収穫量自体はそれでも昨年比で1.26倍増えているのですが、他の品種と比べると増加率が控えめであった為、やや見劣りする形になりました。
その代わりに台頭してきたのがピノ・グリ。これまでも白ぶどうの生産量第2位の座を、シャルドネと競っていましたが、2022年はついに逆転しました。全体の収穫量で第3位に、白ぶどうだけで見るとシャルドネを抜いて2位に躍り出ました。
個人的には、NZらしい個性はシャルドネで表現するはなかなか難しく、ピノ・グリならば「これぞNZのピノ・グリ」という味をつくりやすいのかも?と感じます。
世界でNZのピノ・グリは美味しい!と認められてきた証拠かも知れませんね。
まとめ
2022年はNZのワイン用ぶどうの収穫量が大幅にアップしたというニュースをお届けました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、労働力が不足しぶどうの収穫量も減少していたNZでしたが、今年はそれらの課題を乗り越え、これまでにないほど大幅に収穫量が増大。これはNZのワイン業界にとっては、朗報と言えるでしょう。
今年2022年に収穫されたぶどうで仕込まれたワインは、ヌーヴォーとして一部日本でも販売が開始されていますが、本格的に入荷するのは、白ワインで2022年秋以降。赤ワインは2023年以降にリリースされるアイテムがほとんどとなります。
豊作の年のぶどうがいったいどんな味わいのワインになっているのか。到着が待ち遠しいですね。