
ニュージーランドで合法化された「安楽死」。実際に法律が施行された2021年11月7日から約半年の間に、92人が安楽死を選択したことがわかりました。そして、そのほとんどの人が自宅で最期を迎えたそうです。
日本では認められていない安楽死。その詳細と現状をお伝えします。
「安楽死法」とは
“The End of Life Choice Act”、直訳すると“死を選択できる権利”。
日本経済新聞では、「安楽死法」と訳されているこの法律は、2019年に議会で可決され、2020年10月17日の総選挙と同時に実施された国民投票で賛否が問われました。
そして、国民投票の結果65.1%が賛成であった為、ニュージーランドで安楽死が合法となることが決定し、その約一年後となる2021年11月7日に施行となりました。
この法律による安楽死が認められる条件には、
- ニュージーランドの国籍、または永住権を保持していること
- 18歳以上であること
- 治療の余地がなく、余命6ヶ月以内を宣告され、肉体的な苦しみが大きいこと
- 安楽死を希望する本人が「安楽死」を理解し、それを選択することができる状態であること
などがあります。精神的・肉体的な障害や認知症、加齢を理由に申請することはできません。
安楽死を希望する人は、自分で申請を行い、主治医と第三者の医師が申請内容を審査します。要件を満たしていると判断されると、精神科医の審査・承認後、安楽死を行う日や使用する薬物の決定、審査機関によるコンプライアンスの見直しが行われます。
3月末までに206人が安楽死の希望を申請
保健省はこの法律に関する2022年3月31日までのデータをWebサイトで公表しています。この保健省のデータによると、安楽死を希望する申請した人は206人でした。
このうち
- 59人が申請中(25人が審査中、34人が安楽死への準備中)
- 81人が申請を取りやめ(40人が要件が不十分、11人が申請取り消し、30人が申請中に死亡)
との詳細が出ています。
また206人のうち
- 79%がヨーロッパ系
- 55%が女性
- 74%が65歳以上
- 65%ががんを宣告
- 80%が申請時に緩和ケアを受けている
とのデータも。
年齢別に見てみると
- 18-44歳が9%
- 45-64歳が21.4%
- 65-84歳が53.4%
- 85歳以上が20.9%
申請受理の課題
政府は、安楽死が認められている他国のデータを元に、年間約950人の申請、350人の安楽死を予想していました。現状は結果的には予想よりも少ない数字になっていますが、今後、申請数も増えていくのではないかとのこと。メディアでは、実際に安楽死を選択した人と家族の体験談を紹介することもあり、今後の申請数にも影響がありそうです。
しかし政府の公式データによると、安楽死の申請が取り消しになった人の多くが申請中に死亡という現状もあり、申請をスピーディに行う必要があるのではという意見も出ています。
安楽死は大変難しい問題で、やはり複数の医者や精神科医による十分な検討が必要とされています。必要な人に、いかに安楽死という選択肢を確実に届けられるかが、今後の課題となっています。