秋も終わりに差し掛かり、そろそろ真冬に突入しようとしているニュージーランドですが、夏の香りがするニュースが届きました!
北島の首都ウエリントンから車で北に2時間ほど行ったところにある、人口4,500人ほどの小さな町、Foxto。この町で、NZでは本来夏に旬を迎えるいちごの出荷が、オフシーズンにも関わらず今の時期に行われています。そして真冬に、その出荷のピークを迎えるようです。
こちらは国営放送で紹介された時の映像です。
真冬でも国産いちごを
NZでは秋から冬はいちごの収穫ができないため、その期間はオーストラリアから多くのいちごを輸入しています。しかし、これを国内で生産しようと思い立ったのが、室内で農業を行っている会社、26 seasonsです。
26 seasonsは2017年に、ウェリントンの小さなガレージからはじまった会社です。ベビーリーフを室内で水耕栽培する事業を行っていましたが、現在はいちごの栽培をメインに行っています。
この会社が目指すのは、美味しい農作物をサスティナブルな環境で栽培する農業。土を全く使わず行う「水耕栽培」では、リサイクルされた水を80%使用しています。パッケージもリサイクル可能な素材でつくられており、出荷は北島内に限定することで輸送距離の削減にも努めています。
カーペット工場を改装
いちごの水耕栽培が行われているFoxtonの工場は、もともとカーペットを染めるために使われていました。そのため、空気の循環ができる環境は最初から整っていたそうです。
ハイテクに頼るだけでなく、ガムテープや結束バンドを駆使するなど、“ニュージーランドらしい巧妙さ”で、いくつもの失敗や困難を乗り越え、試行錯誤を繰り返し、栽培は軌道に乗り始めました。
工場内では、パイプが設置された背の高い棚を使うことで、スペースを有効活用。パイプには穴が開けられていて、苗が一つづつ植えられています。植えられている、といってもそこに土はなく、
“いちごにとって栄養たっぷりな液体肥料が入った水を循環させているだけです。”
と26 seasonsのスタッフはコメントしています。
当然、気候に左右されることもなく、省スペースで多くのいちごを効率よく栽培することができます。
地元の雇用にも貢献
いちごの栽培をはじめた当初は8,000苗程度でしたが、今年は50,000苗を栽培中。いちごの収穫作業などには、地元の人材が雇用されています。
“まだまだ改善できる点はいくつもありますが、スタッフ全員、誇りをもって取り組んでいます。いちごはもう間も無くスーパーに並び始めます。”
と、創業者のケルティさんは語ります。
国営放送で紹介された映像の中で、街の人が試食している様子を見ると味もかなり美味しいようです。
また、この技術は、食品衛生などに問題や課題を抱えている諸外国でも活用するべく、開発が続いています。
ちなみに、このFoxton、実は筆者が高校時代の4年間を過ごした町なのです。Kiwiたちにすら、ここにいたことを驚かれるくらいの田舎の小さな町なのですが、ニュースにできるようなことがあるとは…!