南半球に位置するニュージーランドでは、そろそろぶどうの収穫が終わります。今年は、ワイン生産量第2位のホークス・ベイ地方を襲ったサイクロンの影響により、ぶどうの収穫量が減少したため、ワインの生産量にも影響が出る見込みです。
しかしそれらの問題は今年に限ったことではなく、近年の気候変動により、今後ぶどうの品種や味に影響が出ることが懸念されています。
その様な事態を事前に防ぐため、ワイン業界は団結し様々な取り組みを行っています。
業界全体が支える研究機関
今、ニュージーランドのワイン業界が力を入れているのが品種改良です。ワイン専門の研究機関では「完璧なワイン」を作るべく、研究が重ねられています。
「ブラガート研究所(Bragato Research Institute)」は、「ニュージーランド ワイングロワーズ(New Zealand Winegrowers)」によって運営されている研究機関。
「ニュージーランド・ワイングロワーズ」は、ニュージーランドの600人以上のぶどう農家と700人以上のワイン醸造家からなる全国規模の団体で、ワイン業界において世界レベルのマーケティングを提供し、持続可能なワイン製造を目指しています。
そして業界をタイムリーに盛り上げるため、地域や国、そして国際的なレベルで様々な活動を行っており、消費者向けのイベントの企画や運営なども行っています。
そんなニュージーランド・ワイングロワーズが運営するブラガート研究所(Bragato Research Institute:BRI)では、国内外の研究機関と協力もしつつ、品種改良だけでなく、畑のエコシステム、低アルコールワインの開発、害虫対策、微生物によるぶどうの治療、環境に良い土地の活用など、様々な研究を行なっています。
ソーヴィニヨン・ブランの改良
今回ニュースになったのは、ニュージーランドを代表するワイン、ソーヴィニヨン・ブランの品種改良。現在BRIではなんと12000種ものソーヴィニヨン・ブランのバリアント(変異種)が研究されているそうです。
BRIのCEO、ジェフリー・クラーク氏は
気候変動は当然、ぶどうの味に影響を及ぼすと考えられています。気温に変化があると、一部のぶどうは現在栽培されている土地で上手く生産ができないのではという懸念があります。
現在ラボでは、気温の変化や、あらゆる害虫、そして病気などの気候変動による影響に、最も強い品種がどれなのかを研究しています。
と国営放送のインタビューで語っています。
すでに一部ではイタリアやスペイン系の品種のソーヴィニヨン・ブランの栽培が始まっているそうですが、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランはかなり特徴的なため、今後はニュージーランド・ソーヴィニヨン・ブランの特徴を最大限活かした品種の改良が期待されています。
悪天候の影響を乗り越えるために
ホークス・ベイにあるワイン栽培地区、Gimblett Gravels(ギムレット・グラヴェルズ)は、幸いにもサイクロンの被害が最小限で済みました。
しかし、それでも今年は非常に雨の多い栽培シーズンとなりました。そして雨がほしい時に降らず、逆に降ってほしくない時に降るという、ぶどうにとっては悪天候と言える天気が続いたのです。そんな気候が影響してか、今年は収穫が例年より2週間も早くスタートしたそうです。
この気候変動による悪影響を乗り越えるためにBRIが行っている研究は、ワイン業界と政府が約16億円を投じて行っているプロジェクトの一部ということ。
今後研究が進むと、今までぶどうが栽培できなかった地域での栽培や、違う種類のぶどうが栽培できるようになる可能性も出てきそうです。