5年半にわたり首相としてニュージーランドを率い、2月に辞任したジャシンダ・アーダーン前首相が、議員としても辞職し、政界から引退しました。
10月に総選挙を控えた今年1月に突然『エネルギーが残っていない』と辞意を表明したジャシンダ・アーダーン氏。総選挙前6ヶ月を切ると補欠選挙を行わず総選挙を待つ期間となるので、その期間に入る前に引退を迎えました。
心を打つ退任演説
国会で印象深い退任演説を行ったアーダーン氏。
心配性でも、繊細でも、優しくても、そして感情が外にでてしまう人でもいい。母親でもそうじゃなくても、元モルモン教徒でもそうじゃなくてもいい。オタクでも、泣き虫でも。そのままでいいんです。ありのままの姿でも、国を率いることができる。私がそうだったように。
28歳で国会議員に初当選し、2017年には37歳でニュージーランド政治史上最も若く、女性としては3人目の首相となったアーダーン氏。
在任中には、51人が犠牲となったクライストチャーチのモスク襲撃テロ、ホワイト島の噴火、そして新型コロナウイルスの感染拡大と大きな危機にいくつも直面しました。
私は常に人々の嘆きやトラウマの中にありました。数々の出来事やその時の人々の表情は、私の心に深く刻まれていて、それは永遠に消えません。
退任演説のなかで、アーダーン氏は自身を「泣き虫で気弱」そして「心配性」と表現。
心配性ではとても首相でいられない、そう自分に言い聞かせていましたが、そうじゃない。私は変わりませんでした。この場所を去る今、私は前と同じように気が小さくて、悪い方に考えがちで、大嫌いな党首討論の前は食べ物が喉を通らなくなって。でも今、はっきりと言えます。それでいいんです、そのままで、ここにいることができるんです。
首相在任中に母になる
アーダーン氏は、首相の座に就き間もなくして妊娠がわかった当時の事も振り返りました。
アーダーン氏と、パートナーのクラーク・ゲイフォードさんは、不妊治療を続けていましたが、長い期間妊娠できずにいたそう。
不妊治療の甲斐もなく妊娠できず、かつ首相という役目を引き受けたことで、子供がいない人生を歩むことになると不安を感じたことも。でも驚いたことに首相となって2ヶ月程で妊娠がわかりました。
そして世界のリーダーとしては2人目となる、在任中の育児休暇を取得。その後も国連の総会に子連れで出席するなど、世界的にも注目の的となりました。
政治の世界に飛び込んだ理由を子供の貧困、あらゆる不平等そして気候変動だと明言していたアーダーン氏は、演説の中で環境問題にも触れ、
気候変動の問題に政治を持ち込まないで欲しい。二酸化炭素の排出を減らすためにあらゆる行動が必要。
と力強く訴えました。
新たなステージへ
今月初め、イギリスの王立財団が主催する「アースショット賞」の理事としての参画が発表されたアーダーン氏。アースショット賞は、環境問題に大きく貢献する取り組みを行っている個人または組織に与えられる賞で、2020に発足しました。
この賞を設立したイギリスのウィリアム王子は、
ジャシンダがこのアースショット賞チームに参画してくれたことをとても光栄に思います。ジャシンダが長く行ってきたサスティナビリティと環境問題への取り組みや、NZ首相としての経験は、私たちに新しい風を吹き込んでくれることでしょう。ジャシンダは、まだこの賞が設立される前に私が相談した最初の人でした。この賞が早く成功した理由の一つが、ジャシンダのアドバイスでした。ジャシンダがキャリアの新たなステージに、私たちを選んでくれたことにとても感謝しています。
とコメント。アーダーン氏も
このアースショットに参加でき、とても嬉しく思うと同時に恐縮しています。この賞は設立以来、私たちが必要とする革新を広げ、希望の光を灯してくれています。世界が一丸となり、問題への投資、サポート、そしてそれらの加速を促すことができれば、きっと問題は解決に導かれると考えます。
コロナ禍で世界中からその手腕に注目が集まったジャシンダ・アーダーン氏。今後の活動にも注目が集まりそうです。