鳥インフルエンザの影響で卵が不足している日本。飼料の価格高騰などもあり、値上がりが家計を直撃しています。
実はニュージーランドでも同じように、卵不足や値上がりは起こっています。ですが、その理由は日本とは異なるようで、値上げ幅も日本よりはるかに大きくなっています。
卵不足の原因の一端にもなっている、10年前に決まった法律についても見ていきましょう。
卵の価格が5年で倍に
こちらはニュージーランド定番のスイーツ「カスタード・スクエア」。パイ生地に固めのカスタードをたっぷり挟み、それを四角にカットしてつくります。卵を大量に使用するこのスイーツも、もしかするとカフェのメニューから消えてしまうかもしれません。
現在ニュージーランドで販売されている卵は安いもので1パック約550円。平飼いの卵だと1パック約850円以上します。なんと、ここ5年で卵の価格は倍になりました。卵価格の高騰は採卵鶏不足、そして飼育コストの上昇によるもの。
ニュージーランド国内で卵を自給自足するためには、3,800万羽の採卵鶏が必要ですが、現在は3,500万羽に留まっています。
この採卵鶏や卵不足の大きな理由は、今年からバタリーケージでの飼育が禁止となったことにあります。
バタリーケージが禁止に
「バタリーケージ」とは鶏に卵をより多く、安価に産ませるための飼育装置で、日本でも一般的に採用されているケージです。
とても狭いスペースに鶏を閉じ込め、劣悪な環境の中で鶏が本来産むとされる数以上の卵を産ませる装置であり、動物福祉の観点から近年問題視されていました。バタリーケージはEUでは2012年から既に禁止されており、ニュージーランドも2012年に2022年までに禁止とすることを決定していました。
この10年で、養鶏場はバタリーケージよりも好ましいとされるコロニーケージや飼育小屋、または平飼いに飼育方法を変更。どの飼育方法であっても、バタリーケージより広い飼育スペースを必要とするため、飼育羽数を減らすことが余儀なくされます。また新型コロナウイルスの影響もあり、バタリーケージから移行することなく閉業を選択する養鶏場も多数あり、採卵鶏不足に拍車がかかっています。
また飼育コストの高騰だけでなく、昨今のインフレの影響で様々な経費が上がっていることもあり、卵の高騰には歯止めがききません。
移行期間が10年あったものの、多くの養鶏場では設備不足が否めず、飼育を拡大できない状況。採卵鶏不足はまだ4ヶ月〜半年は続くと見られています。
すべての卵を平飼いに
昨年12月の時点でニュージーランドでは、34%が平飼い、29%が小屋での飼育、33%がコロニーケージでの飼育、そして10%がバタリーケージで飼育されていました。今年の1月から全てのバタリーケージは廃止されたものの、コロニーケージでの飼育は現在も行われています。
メジャーなスーパーマーケットでは消費者の声をうけ、2027年までにはケージ飼育による卵の販売を一切行わない事を目指しているそうです。中には2025年までに、すべて平飼いの卵に切り替えると明言している大手スーパーも。
また、国としてもケージ飼育を禁止すべきという声が高まっています。もともと野生動物や飼育動物への虐待等に対する罰則が厳しいニュージーランド。今後家畜動物への動物福祉の考えに対する関心は、国民の間で益々強まっていきそうです。