ニュージーランドから驚きの速報が。
ジャシンダ・アーダーン首相が1月19日、自身が率いる労働党の集会で、2月7日までに退任することを明らかにしました。
突然の退任発表
会見で2つの重要な発表があると話し始めた首相は、まず総選挙の日程を今年10月14日とすると発表。
そして
国を率いるのは最も栄誉のある仕事です。しかし同時にもっとも困難な仕事で、力が満タンにあり、かつ予想外の事態にも対応できる余力がなければ引き受けられる任務ではありません。この夏(北半球のNZは今が夏)、これからの1年だけでなく、次の任期へ向けて準備を行おうとしてきましたが、できませんでした。そして今日、首相としての役目を2月7日までには終えることをお知らせします。
と辞意を表明しました。
アーダーン首相は、自身の選挙区における国会議員としての役目は、4月まで続けるそう。首相退任と同時に議員職も辞任しないのは、総選挙が10月となったため、10月まで6ヶ月未満となる4月に議員を辞任すると補欠選挙を行わずに済むことが大きな理由。
アーダーン首相は
更なる4年の任期を務めるエネルギーが残っていない
と語り、退任を決意したのに「明確な理由」があるわけではなく、「私も人間だから」と述べています。
議員辞職後の身の振り方は決めていません。次なるステップは今のところなし。でも、何をするにしても、ニュージーランドのためになることを見つけようと思いますし、とりあえず今は、私のために間違いなく犠牲になってくれてきた家族とゆっくり過ごすことを楽しみにしています。
娘のニーヴへ、ママはあなたが小学校に入学する来年は一緒にいられることを楽しみにしている。そしてクラーク、やっと結婚できる。
と、やはり家族が大きな理由であるようです。
アーダーン首相は2019年にパートナーのクラーク・ゲイフォードさんと婚約しており、2020年の夏には結婚の予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に延期されていました。
アーダーン首相の歩み
アーダーン首相は1980年生まれ。2008年に初当選し、2017年、労働党の党首に就任、その直後の総選挙では議席を大幅に増やすなど低迷していた党の支持率回復に大きく貢献しました。議席は過半数にはおよばなかったものの、ニュージーランド・ファースト党との連立政権樹立が決まり、ニュージーランド史上最年少となる37歳3ヶ月、そして女性として3人目の首相に就任。
2018年には、ゲイフォードさんとの間に第一子となる娘のニーヴちゃんを出産。世界でも初めて首相任期中に6週間の産休を取得したことや、国連の集まりに娘同伴で参加したことも大きなニュースになりました。
2019年の3月にはクライストチャーチのモスクで51人が犠牲となる銃乱射事件が発生。首相として初めての大きな困難に直面することに。しかし、その3日後には法律を変え、銃規制を行うという素早い決断力が世界から称賛されました。
2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まると、いち早く厳しい入国制限と国中のロックダウンを決行。そのリーダーシップが世界で話題になったと同時に、国民の反発もありましたが、2020年の総選挙では大きな勝利をおさめ、労働党単独での政権獲得に成功しています。
しかし昨年末に行われた世論調査では、物価や金利の上昇といったニュージーランドの経済状況の悪化をうけ、労働党の支持率がアーダーン首相の任期中最低となる32.3%まで落ち込んでおり、首相の退任説も囁かれていました。
労働党の勝利を確信
アーダーン首相は、自身にはエネルギーが残っていないが、労働党には国を率いることができる同僚たちがいると語り、10月14日に行われる総選挙勝利への確信がなければ逆に退任することはなかったと述べています。
労働党の党首選は1月22日に行われる予定。そこで選出される新たな党首が首相となり、アーダーン首相の退任が正式に受理されます。
現在副首相を務めているグラント・ロバートソン氏は、自身が党首へ立候補する可能性はなく、アーダーン首相と同じように党内にふさわしい人材が多くいると語り、今後も党首を支えていく決意を新たにし、
知性、正義そして思いやりに溢れたアーダーン首相は間違いなく、ニュージーランド史上最高のリーダーだ
と、首相に称賛の言葉を贈っています。ちなみにロバートソン副首相は、閣僚で初めて同性愛者であることを公表しています。
アーダーン首相は会見で
首相を務められたことは人生で最も誇れること。この5年半、国を率いるという大きな名誉を与えてくれたニュージーランド国民に感謝しています。
と語っています。