9月8日にエリザベス女王が逝去されたことを受け、チャールズ新イギリス国王が誕生。ニュージーランドでも9月11日、チャールズ国王を新しいニュージーランド君主とすると認め、宣言の儀式が行われました。
英連邦(コモンウェルス)の加盟国かつ立憲君主制であるニュージーランドにとって、イギリス君主は同時にニュージーランドの君主でもあります。
日本では天皇が変わると年号が変わりますが、ニュージーランドでは君主が変わると、日本以上にたくさんのことが変わります。
現在ニュージーランドでは国内の至る所でエリザベス女王の存在が見てとれますが、今後はどうなっていくのでしょうか。
通貨は徐々に変更
まずは通貨について。ニュージーランドの硬貨には1953年から、紙幣には1967年からエリザベス女王の肖像が印刷されています。
現在は20ドル紙幣、そして1991年に紙幣から硬貨に変わった1ドルコインの2種類です。
ニュージーランドの国営ラジオ、RNZは
“For most of us, seeing her face on our cash is the closest we get to the Queen.(我々のほとんどにとって、女王に最も近づけるのが、通貨上の女王の顔を見ることくらい。)”
とコメントし、通貨に関するニュースを伝えました。
紙幣は今すぐ全てがチャールズ国王の肖像に変更されるわけではなく、現在流通しているものや、ストックされているものが無くなるまではもちろん有効です。
そのため、現在エリザベス女王の肖像が印刷された紙幣が、全てチャールズ国王の肖像に変わるまでにはこれから何年もかかる見込みです。
国歌の曲名・歌詞が変更に
ニュージーランドは、二つの国歌がある世界的に見ても珍しい国。
その一つは、スポーツイベントなどでよく耳にする、私たちもよく知っている“God Defend New Zealand(神よニュージーランドを守り給え)”。そして、もう一つが“God Saves the Queen(神よ女王陛下を守りたまえ)”です。
この”God Saves the Queen”は、現在、女王や王室関係者の前でしか歌われないため、あまり馴染みがないのですが、もともと国歌として制定されたのはこちらの歌でした。
しかし1977年に、それまで100年以上も聖歌として歌われていた”God Defend New Zealand”が国家として認められたという経緯があります。
そして“God Saves the Queen”は、チャールズ3世がイギリス君主=ニュージーランド君主となったことによって“God Saves the King(神よ王を守りたまえ)”に変更されました。
パスポートも更新時に変更
ニュージーランドでは、パスポートにもエリザベス女王について触れている部分があります。表紙の裏側に記されているメッセージには、
“The Governor-General in the Realm of New Zealand requests in the Name of Her Majesty the Queen all whom it may concern to allow the holder to pass without delay or hindrance and in case of need to give all lawful assistance and protection.”
とあり、簡単に訳すと、
“ニュージーランド政府は女王陛下の名において、関係各位にこのパスポート保持者に対し、いかなる時にでも、妨げなく速やかに法的な支援と保護を与えることを要請する“
ということが書かれています。
現在発行されているパスポートは、期限が切れるまで有効。すぐに変更する必要はありません。今後発行されるパスポートでは、“女王陛下の名において”の部分が“国王陛下の名において”と変更されます。
クイーンズバースデーはそのまま?
ニュージーランドでは6月の第一月曜日をクイーンズバースデーのため祝日と定めています。実際のエリザベス女王の誕生日は4月21日ですが、女王は祝賀行事が行われるこの日を、良いお天気に恵まれやすい夏の6月に公式誕生日を移動しました。
6月はニュージーランドでは冬になりますが、イギリスと同じく6月の第一月曜日をクイーンズバースデーとしています。
そして、今後このクイーンズバースデーは、日付はそのままで、来年2023年からはキングスバースデーとなり、チャールズ国王の誕生日が祝われることが決まりました。
女王の逝去、そして新国王の誕生で、様々な変化が起こるニュージーランド。
実は、「立憲君主制から共和制へ移行すべきでは」といった意見も出ているのです。長く女王として務め、イギリス国民だけでなく世界中の人々から敬愛されてきたエリザベス女王。
現在は、安定した経済と平和の維持を目的に存在している英連邦ですが、旧植民地の国々、とくにその原住民からするといろいろと複雑な事情も。英王室が大きな変化を迎える今、再び議論が大きくなりそうです。