アーダーン首相率いる労働党、歴史的大勝利

ニュージーランドでは10月17日に総選挙が行われ、現首相のジャシンダ・アーダーン率いるLabour(労働党)が歴史的大勝利を果たしました。

労働党初の単独過半数獲得

ニュージーランドでは1996年の選挙からMixed-member proportional representation (MMP)、日本語で小選挙区比例代表併用制を採用。120ある議席を、政党が獲得した票数に応じて比例配分されますが、小選挙区で当選した候補者に優先して議席が与えられるシステムです。

このシステムが導入されて今回初めて、労働党が単独過半数を獲得しました。

今回のニュージーランド選挙が世界で初めてコロナ禍で行われた総選挙。この選挙の結果に、政府が行ったコロナ対策への国民の評価が反映されると言っても過言ではありませんでした。

ニュージーランドはコロナの陽性者数、死亡者数をかなり少なく抑えられており、現在は数万人を集めたラグビーの国際試合が開催されるほどに。テレビを見ていても、マスクやソーシャルディスタンスは全くと言っていいほど見かけません。

ニュージーランド政府が行なっているコロナへの対応は世界的にも評価されており、アーダーン首相はたびたび海外のメディアでも称賛を浴びていますが、ニュージーランド国内でも、アーダーン首相と労働党を支持する人が増えており、今回の選挙の結果に結び付いたと言えそうです。

また昨年、クライストチャーチで51人ものイスラム教徒がモスクで銃で殺害された事件が起こった時も、素早く銃規制に取り組んだことが評価されています。アーダーン首相は在任中に産休、出産を経て、子連れで国連会議に参加するなど、何かと話題だったため(NZは女性首相3人目なので女性首相である事自体は全く騒がれません)、労働党への支持というより、アーダーン首相の人気投票だと皮肉る人もいるようです。

とはいえ、初の単独政権、労働党の歴史的勝利であることは間違いありません。

また前回の2017年の選挙では、NZ Firstが労働党、国民党のどちらと連立を組むかが政権を左右しました。ピーターズ代表が労働党を選んだため、ジャシンダ・アーダーンはピーターズに選ばれた首相だと囁かれたこともしばしば。今回の選挙では自力で首相の座を勝ちとった事になります。

アーダーン首相の勝利スピーチ

今夜、ニュージーランドは労働党に過去50年で最大の支持をしてくれました。都市部でも、地方でも、また勝つのが難しいとされた激戦区でも、多くの支持をいただきました。もうこれには一つしか言えません。ありがとう。

私たちの思いを伝え続けてくれた方、終わりが見えないような大変な選挙活動を支えてくれたボランティアの皆さん、ここ3週間の選挙活動だけでなく、ここ3年、支持を得るために戦い続けてくれた候補者そして議員の皆さん、新型コロナウイルスから立ち直るための活動を、引き続き私たちに任せられると信じ、一票を投じてくれた大勢のみなさん、そして今回初めて労働党を支持してくれたみなさんにお礼を言いたい、ありがとう。

私たちは皆さんの支持を当然のものとは決して捉えません。私たちは一人ひとり全てのニュージーランド人のために活動すると約束します。

と、何度も“Thank you”を繰り返しました。

アーダーン首相の勝利スピーチはこちらからみることができます。

最後は労働党のスローガンである“Let’s keep moving”(進み続けよう)で締めくくっています。

Greensは党勢維持、Nationalは惨敗、Firstはアウト

Greens(緑の党)は10議席(約8%)を獲得。前回の8から2議席を増やしました。現在は労働党と閣外協力関係にありますが、今回は労働党が単独でも政権を維持できるため、この関係性がどうなるのかが注目されています。

議席を約20%減らした最大野党、National (国民党)の代表、ジューダス・コリンズは、支持者や候補者、そして家族に感謝の言葉を述べ、“3年はあっという間、みなさんに伝えたい。私たちは必ず戻ってきます。今夜は次の選挙へのスタート。2023年へ!”と3年後の政権奪還を誓いました。

コリンズ代表が、このまま国民党の代表にとどまるかははっきりと明言されていませんが、国民党はこの1年で3人も代表が交代しており、コリンズ代表も選挙数ヶ月前に就任したばかり。可能性としては高そう・・・?

現副首相で、前回の選挙で労働党が政権を取った鍵となったウインストン・ピーターズ率いるNZ First(ニュージーランド・ファースト党)は敗北、議席を失いました。ピーターズは1978年に初当選を果たした政界の大ベテラン。1993年に国民党から離れ、ファースト党を立ち上げましたが、ピーターズ代表は今年75歳、引退も囁かれています。

首相の婚約者は家でバーベキュー

こちらはアーダーン首相の婚約者、クラーク・ゲイフォード。

なんと、選挙当日、自宅に集まってきたメディアや近所の人たちに、手作りの食べ物を振る舞う姿が! 出された魚は選挙の前日、父親と義弟と一緒に釣ってきたもの、鹿肉も狩で自身が仕留めたものでした。

もちろんこの後は労働党本部に向かい、勝利スピーチを行なったアーダーン首相の横に。

アーダーン首相率いる第二次アーダーン政権は、3週間後発足予定、また選挙と同時に行われた、安楽死と娯楽用大麻合法化の国民投票の結果は2週間後に発表される予定です。

この記事の筆者

石黒
石黒 沙弥
高校・大学時代を過ごしたNZを故郷と愛する。購入するワインは100%NZで、常備しているのはSILENIのソーヴィニヨン・ブラン。マーマイト大好き。歴代彼氏の半分以上がKiwi。
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