白ワイン用ぶどう品種のひとつであるリースリング(Riesling)は、ドイツでもっとも重要な品種です。
その特徴は、香り豊かでわかりやすい美味しいさとさらに、幅広い個性豊かな味わい。
育成が難しく、涼しい気候と痩せた土地が必要で、その土壌の個性をそのまま映し出すことで、産地ごとに大きく違った顔を見せてくれます。
この記事では、リースリングを、わかりやすく解説していきます。
特徴的な香りとキリッとした酸味
リースリングの最大の特徴は、キリッとした酸味です。
また、辛口から甘口、極甘口の貴腐ワインまでバリエーションが豊かで、カジュアルな場面からしっかりとした会食まで様々なシーンで楽しめます。
若い頃はその研ぎ澄まされた酸が際立ちますが、その酸が長期熟成を可能にするのです。10年20年どころか、中には100年に迫る長期熟成を経たものも存在します。
香りは、レモンやライム、りんごなどの果実ですが、熟成させるとトロピカルフルーツの甘い香りが目立ってきます。「ペトロール香」と呼ばれる石油の香りが出てくるのも特徴で、ファンが多いのもうなずけます。
ペトロール香という石油のような香りが、リースリングの特徴なんですね。
そうですね。是非一度体験してみて下さい!「あっ!これが、ペトロール香か〜」というのが分かると楽しくなりますよ。
ヨーロッパ以外のリースリングなら、若いワインからも感じられることが多いようです。
ちなみにドイツでは、糖度が格付けに使用されます。このため以前は糖度が高くアルコールが低めのものが多く生産されていましたが、最近では世界的な流行に合わせて、辛口ワインの生産も増えてきました。
辛口ということは、豊富なぶどうの糖がアルコールに変わっているということ。当然アルコール度数が高くなるので、よりしっかりとしたワインとして楽しむことができます。
そしてこの特徴をつくるのは、やはり寒く痩せた土壌なのです。
寒く痩せた厳しい土壌でこそ上質なリースリングが育つ
リースリングは、冷涼で痩せた土壌で栽培されます。
寒さに強く育ちが遅いので、水の少ない厳しい環境で育てられると、強い酸を持ちながらも、糖度が高く非常にしっかりとした果実を実らせます。
この糖と酸のバランスこそがリースリングの真骨頂と言えるでしょう。
糖が高いということは、生産者によって甘口から辛口まで幅広いワインに応用できるわけです。しかし一方で、発酵が進めばアルコールが高くなりすぎます。
その酸と糖とアルコール度数のコントロールが、生産者の主義・主張と腕の見せどころと言えそうです。
このようなリースリングの個性は暖かい地域では発揮されにくく、冷涼な土地に比べるとかなり弱まってしまいます。
ドイツ・ライン川流域が原産
リースリングの原産はドイツ・ラインガウ地方。
現在は公式な名称ではなく、ワイン産地のみ使われています。ライン川が運んできた土壌や冷涼な気候が、リースリング栽培に適した土地ですね。
その後、距離が近くライン川流域で、環境の似ているフランス・アルザス地方や、ドナウ川沿いで気候の似ているオーストリアに栽培が広がっていきます。
そして現在では、ヨーロッパ以外の国を含め世界中で栽培・生産されていて、それぞれの産地の土壌毎に異なった個性で楽しませてくれます。
次にニュージーランドのリースリングについて見ていきましょう。
ニュージーランドのリースリング
NZでのリースリングの収穫量は、国内第6位です。
1位は当然ソーヴィニヨン・ブランで、その収穫量は約30万t。一方のリースリングは、約4,700tと、わずか1/63ほどです。
しかし、ニュージランドで生み出される高品質で個性的なリースリングは、高い評価を受けていて “プレミアムワイン” とも言われています。
辛口〜極甘口まで幅広いスタイルが楽しめるのが特徴で、国内のワイン売り場ではリースリングだけの棚があるほど。
ラベルには辛口から甘口までを表現した、ドライ/セミドライ/オフドライ/スイート(セミスイート)という表記が一般的に使用されています。(ちなみに、セミドライとオフドライはほぼ同様です)
また生産量は少ないですが、全国で広く栽培されています。
代表的な産地は、
- マールボロ地方
- ワイララパ地方
- カンタベリー/ワイパラ地方
- セントラル・オタゴ地方
などで、
- 涼しい地域(南島)=酸がキリッとした
- 暖かい地域(北島)=香りが強い
という特徴を持っています。
世界の代表的なリースリング産地
つぎに、ドイツを始めとした世界のリースリングを紹介します。
ドイツ
ドイツは先に書いたとおり、リースリングの原産地。
現在でも、なんと世界の半分ほどがドイツで生産されています。
ライン川流域のラインガウ地方と、モーゼル川流域のモーゼル地方が2大産地。
以前は高品質の甘口ワインで有名でしたが、現在では品質はそのままに辛口ワインの生産も増えています。
フランス・アルザス
フランス北東端にあるアルザス地方。
ドイツ・スイスと国境を接し、ドイツの一大産地・ラインガウ地方までは車で2時間半ほどの距離で、ライン川の上流となります。
アルザスでは、1975年に「アルザス・グラン・クリュ」という「特級畑(特に品質が高いと認められた畑)」が制定されました。ここでは下の4種類の白ワインのみが格付け対象として認められています。
- リースリング
- ピノ・グリ
- ミュスカ
- ゲヴュルツトラミネール
この中でもリースリングはアルザス地方の主要品種と言ってよく、高品質のワインが生産されています。
オーストリア
オーストリアもドイツ・スイスと国境を接し、アルプス山脈を擁する国。
大西洋から離れた湿度の低い大陸性の気候で、夏が涼しく冬はかなり寒くなります。
この気候はリースリングのワイン生産にはうってつけであり、それらの特徴はドイツ・フランス・アルザスも同様です。
オーストリアでのリースリング産地として有名なのはヴァッハウとカンプタール。
ヴァッハウのドナウ川やカンプタールのカンプ川が運んできた水はけの良い土壌も、ドイツやアルザスのライン川と同じような環境と言えるでしょう。
やはりワイン生産には、川が重要な役割を果たすことが多いですね。
オーストラリア
オーストラリアのリースリング産地といえば、クレア・ヴァレーとイーデン・ヴァレー。
オーストラリアの西南岸は、ヨーロッパの地中海に面した国々と同様に地中海性気候。
緯度(南緯)も高く、夏に涼しく冬は寒い地域で、標高もあるのでさらにその特徴が強まります。冬にはある程度の降水量がありますが、夏は日差しが強く乾燥するのでワイン生産が盛んになりました。
また、土壌がドイツのモーゼルやラインと似ていることから、リースリング生産には非常に適していると言えます。
アメリカ
アメリカでリースリング産地として有名なのはなんとニューヨーク。
私達のイメージだと大都会・マンハッタンのイメージですが、それはニューヨーク市ですね。ニューヨーク市はニューヨーク州の南端にありますが、州はもっと広く北と西に広がっています。
西の内陸にはフィンガーレイクスという産地があります。近隣にオンタリオ湖やエリー湖があり、さらにはその名の由来となる「指のような形の湖」があります。これらにより、夏は湖からの涼しい風が吹き込み、冬には気温が下がりすぎることや霜を防いでくれるのです。
ここがニューヨーク州一番のワイン産地で、近年ではリースリングが注目を集めていて、世界的にも評価が高くなっています。
魚介類や野菜、チーズなど合わせる料理も幅広い
さてここまででリースリングについての基礎知識は終了です。
次はどんな料理に合わせると美味しく楽しめるのかを紹介しますね。
リースリングは辛口から極甘口まで幅広い味わいが特徴なので、それぞれ見ていきましょう。
辛口なら豚肉・鶏肉料理や燻製肉、魚介類と何でも来い
辛口のリースリングは、かなり万能選手と言えるでしょう。
味付けの濃くない豚肉や鶏肉料理から、ソーセージやベーコンなど肉の燻製。
生ハムだってOKですし、白ワインならではの白身魚やサーモンを始めとする魚介類もバッチリです。
甘みのあるリースリングなら和食が合う!
半辛口〜半甘口に分類される甘みを伴ったリースリングには和食が合います。
塩やお出汁の塩分を、少し甘めのリースリングで流し込めば、日本酒のようでいてそれよりあっさりと楽しめるでしょう。
白身魚や天ぷらなんかが合いますよ。
極甘口は甘酸っぱいデザートと一緒に
極甘口のワインは「デザートワイン」と呼ばれ、高級フレンチなどで食事の最後にデザートとともに登場します。
そんなに甘いワインもあるんですね〜♪
極甘口ワインはとっても濃厚なので、負けないくらいの甘さと合わせると美味しく楽しめます。
日常生活で楽しむなら、アイスクリームやチョコレート、チーズケーキやフルーツケーキで楽しむといいでしょう。ブルーチーズなんかもいいですよ。
まとめ
キリッとした、綺麗な酸味が特徴のリースリング。さらに辛口、中辛、甘口、極甘…と変幻自在であり、味わいも大きく変化するというポテンシャルの高いぶどう品種です。
全てのワインに出てくるわけではありませんが、熟成すると感じられる「ペトロール香」も体感してみたい特徴の一つ。
初心者の方がチャレンジする白ワインとしてもおすすめです。是非手にとってみてくださいね。