赤ワイン用ぶどう品種のピノ・ノワール(Pinot Noir)を、ご存知でしょうか。
聞いたことはあるけれど、ピンとこない?
そうですね〜、どんなぶどう品種なんでしょうか?
そんな方には、あの世界最高峰のワイン「ロマネ・コンティ」に使用されているぶどう品種であると言えば、なんとなく「高級な品種である」ことは伝わるのではないでしょうか。
ピノ・ノワールでつくられたワインを形容する言葉は、たとえば・・「エレガント」、「官能的」、「華麗」、「可憐」。ひとつのワインでこれほどまでに美しい言葉で賞賛される品種は、他には決してありません。
ただしピノ・ノワールは、その素晴らしい味わいにたどり着く前に、「病気になりやすい」「上手に育てるのが難しい」品種としても知られています。
以前は「フランスのブルゴーニュ地方でしかうまく育たない」とも言われていました。 現在では、技術が進んで世界各国で栽培が盛んになっていますが、ピノ・ノワールが持つ「気むずかしい品種」というキャラクターは今も昔も変わることはありません。
そんなピノ・ノワール。ニュージーランドでは、赤ワイン用のぶどうの中ではナンバーワンの生産量を誇り、その品質の高さでも世界から一目置かれる存在になっています。
価格面でも、日本円で2,000円くらいから素晴らしいワインに出会えるというリーズナブルさ。価格が高騰しているブルゴーニュと比べると、かなりお値打ちだということで、人気となっています。
ニュージーランドでも人気が高まる赤ワイン用ぶどう品種、ピノ・ノワール。この記事ではその魅力をお伝えします。
エレガントな女性を思わせる、渋みの少ない軽やかな品種
ピノ・ノワールという品種は、たびたび女性に例えられます。
それも、ヨーロッパの貴婦人のようなエレガンスを持つ女性。ワインファンをうっとりさせてしまう要素がたっぷりのワインであることを物語っています。
ただ、すべてのピノ・ノワールが、このように高級な近寄りがたいイメージのワインであるというわけではありません。
中にはカジュアルな路線のピノ・ノワールもあり、そういったものはむしろ初心者でも気軽に楽しめるワインとして、もってこいです。
なぜなら、ピノ・ノワールは、赤ワイン特有の濃厚さや渋みが少ない品種だから。初心者の中には、濃くて渋いワインが苦手な方も多いと思います。そんな方は、まずは「やさしくて渋くない」という特徴をもつピノ・ノワールを試してみると良いでしょう。
赤ワイン=渋い。というイメージだったので、ちょっと意外かも!
ピノ・ノワールは、初心者にもピッタリなワインですね。
原産地はブルゴーニュ地方
ピノ・ノワールの代表的な産地は、フランスのブルゴーニュ地方です。
ボルドー地方では2つ以上のぶどうをブレンドするのに対し、ブルゴーニュ地方では基本的に単一品種でつくられるのが特徴です。
その味わいは繊細かつ香り豊かで、地域や年代の影響を受けやすいく、ワイナリーや生産年の違いを楽しむには一番向いているぶどう品種かもしれません。
ピノ・ノワールの香りの特徴
ピノ・ノワールの最大の特徴でもある華麗な香りは、人々を昔から今日まで魅了し続けています。
若い時と熟成してからでは香りの特徴が変わっていくので、年代による香りの違いにも着目してみましょう。
若い時にはチェリーなど赤い果実の香り
つくられてから間もないピノ・ノワールは、小さな赤い果実を中心とします。
ラズベリー、フランボアーズ、ブルーベリー、チェリー、いちご、カシス、バラ、すみれなどの香りが代表的。
ケーキやタルトの上に乗っているような赤い果実も多いですね〜♪
熟成すると官能的な香りに
熟成するとそれらに官能的な重厚な香りが加わります。
代表的な香りは、スパイス、革、シナモン、森の下草、トリュフ、枯れ葉などです。
熟成すると、深みを感じられるような香りが出てくるんですね。ゆっくり飲みたい気分の時は、年代物を試してみようかな。
ピノ・ノワールの外観や味わいの特徴
ピノ・ノワールはその果皮が薄く、病気にかかりやすいことや発酵にも手間がかかる為、生産が難しいぶどう品種の1つです。
地域の影響を受けやすいので、その特徴はひとくくりにはしにくいのですが、ここでは代表的な特徴をお伝えします。
色は淡く、エレガント
若い時は淡く、ルビー色で、透き通っています。熟成により赤みが増していき、エレガントな色調へ変化していきます。
繊細で優しい味わい
ソフトタッチで優しく繊細さが魅力。穏やかさは若い特の方が顕著で、熟成により丸みが出てきます。
酸が多くドライな印象で、爽やかな渋みも感じられます。
ピノ・ノワールの栽培に適した気候
ピノ・ノワールは冷涼な気候を好みます。それは、なぜかというとピノ・ノワールが非常に早熟な品種だからです。
暑い地域ではその魅力が引き出される前に、ぶどうの熟成が終わってしまうのです。
ピノ・ノワールは、とっても繊細なぶどうなんですね。
冷涼な地域では、ゆっくりと成長が進むので、ぶどうの糖度がしっかりと上がり、素晴らしいピノ・ノワールが完成します。
牛肉から魚の刺身まで、幅広いペアリングが楽しめる
ピノ・ノワールを知ったら、今度は実際に試してみましょう。
楽しみ方は様々ですが、初心者の人でも楽しめる簡単なポイントをお伝えします。
ペアリング(飲み物と料理の組み合わせ)
ワインをより一層楽しむポイントの1つが、ワインと食事を合わせることです。
ピノ・ノワールはその味わいがとても軽やかなので、食事も濃いものよりは柔らかい味わいのものを持ってくると良いでしょう。
洋食であれば、鴨、チキン、ラム、牛肉のたたき、などがおすすめです。
和食であれば、焼き鳥、鴨南蛮、豚の角煮とも相性が良いので、是非試してみて下さい。
せっかく飲むならブルゴーニュグラスで飲んでみよう
いくつかのピノ・ノワールを飲んでみて、更にこのワインを深く味わいたいという人は、是非ブルゴーニュグラスを購入してみましょう。
ブルゴーニュグラスは、ブルゴーニュの香り豊かなピノ・ノワールを楽しむ為に作られたグラスです。
グラスの下部分が広がり、飲み口が小さくくぼんでいる為、グラス内に広がる香りが拡散され、香りの細部まで味わうことができます。
本場はフランス・ブルゴーニュ地方。ニュージーランド以外の産地について
ピノ・ノワールはその気難しい気質ゆえ、昔はフランスのブルゴーニュ地方でしか作れないと言われてきました。
しかし、現代はその地域は世界で広まりつつあります。
ここではニュージーランド以外の、ピノ・ノワールの名産地についてご紹介します。
フランスのブルゴーニュ地方
ピノ・ノワールの本場。
ロマネ・コンティを生み出す、DRC社(ドマーニュ・ロマネ・コンティ)をはじめとする、限られた生産者達だけが畑を保有し、その生産を行っています。この地からは数々の高級ワインが生み出されており、まさに聖地と呼べる場所です。
アメリカのオレゴン地方
オレゴン州は、カリフォルニア、ニューヨーク、ワシントンと並ぶアメリカの4大ワイン生産地の1つ。
その気候がブルゴーニュと似ているということで、高品質ながらも安価なピノ・ノワールが生み出されます。
オーストラリアのタスマニア地方
オーストラリア最南端のタスマニア州(島)をメインに、起伏に富んだ地形と冷涼な気候をいかしてワインが生産されています。
ニュージーランドではゆたかな果実味を持ち、エレガントかつフレッシュ
ニュージーランドのピノ・ノワールの特徴は、何と言ってもその果実味です。
その高貴な要素は十分に残しつつ、フレッシュな面もあわせ持つ新しいスタイルのワインが世界でも評価されています。
ピノ・ノワールはニュージーランドのぶどうの生産量では、全体の6.7%でソーヴィニヨン・ブランに次いで第2位の品種です。(2022年)
セントラル・オタゴ地方
ニュージーランドでピノ・ノワールといえば、セントラル・オタゴというイメージが定着しています。
ここはニュージーランドで唯一、半大陸性気候であり世界最南端のワイン産地とも言われています。
こんなに南にあるということは、寒いはず。ですが意外にもセントラル・オタゴはピノ・ノワールの栽培に非常に適しており、しっかりとした果実味のワインが生まれます。
その恵まれた土地で生み出されるピノ・ノワールは、本場ブルゴーニュのものとも引けを取りません。
マールボロ地方
マールボロ地方は、ニュージーランドにおけるピノ・ノワールの生産量、第1位の地域です。
セントラル・オタゴに比べてやや温暖な気候のこの地では、味わいに厚みがあるワインが多く生産されています。
マーティンボロ
マーティンボロは、北島にあるワイララパ地方の小さなぶどうの産地です。
北島の他の産地では主にカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルローなど温暖な気候を好むぶどうが栽培されていますが、ここマーティンボロは例外。北島でもピノ・ノワールが上手く育つ産地なのです。
とても狭いエリアですが、ここはブルゴーニュと気候と土壌が非常に似ていると言われ、そのクオリティの高さは世界中に認められています。
また、ピノ・ノワールの名産地でパイオニア的な地域でもあり、この地方のピノ・ノワールは希少価値が高く、入手が困難な銘柄ばかりです。
まとめ
「ブルゴーニュの貴婦人」とも言われるピノ・ノワールは、非常にエレガントなワインとして知られています。
それに加えニュージーランドのピノ・ノワールは、果実味豊か。その素晴らしいワインは世界中のピノ・ノワールファンを虜にしています。
赤ワイン特有の「渋さ」が控えめという特徴もあるので、これからワインを始める初心者の方にも是非チャレンジしてもらいたい品種です。
また、地域やぶどうの生産年によって、大きくその性格を変えるという魅力をもっています。是非様々な地域のものを飲んでみて、違いを楽しんでみて下さいね。