マルベック(Malbec)は赤ワインに使われるぶどう品種で、その濃厚な色合いから「黒ワイン」、「ブラックワイン」とも呼ばれています。
フランス生まれのマルベックですが、現在そのほとんどが南米アルゼンチンで生産されているのも特徴です。
フランスのカオール地区では「コット」、「カオール」と呼ばれていて、歴史を感じる素晴らしいワインを作り出しています。
ニュージーランドではまだまだ生産量は少ないものの、主に赤ワインのブレンド用に重宝されていて、北島の日照量が豊富な土地で栽培されています。
上記以外の産地としては、
- チリ
- イタリア
- 北アメリカ
- オーストラリア
- 南アフリカ
などがあります。
マルベックには渋み成分であるタンニンや、ブルーベーリーにも多く含まれるポリフェノールが豊富で、しっかりとした果実味や凝縮感が感じられます。
しかし意外にも口当たりはまろやかなので、どんな人でも楽しめるワインでもあるのです。
個性的なマルベックは他のワインとブレンドすることで、全体に複雑味を加える役割を器用にこなすので、ヨーロッパを中心に他の赤ワイン用ぶどう品種のサポート役として重宝されます。
しかしヨーロッパ以外の産地で単一種で飲まれる機会も多く、マルベックファンも多く存在します。
特にアルゼンチンの人々は地元の肉料理とともに、国の代表ワインであるマルベックを日常的に楽しむのです。
パワフルで、男気あふれるマルベックの魅力を探っていきましょう。
害虫の影響を受けなかった太陽の国・アルゼンチンで繁栄した「黒ワイン」
先程も述べたように、マルベックは元々フランスで主に生産されていました。
しかし1860年代にヨーロッパで大流行した害虫フィロキセラの影響で、人気品種であったマルベックも壊滅状態に陥ったのです。
一方、その影響を受けずにアルゼンチンに移植されたマルベックは、その栽培面積をぐんぐんと伸ばしていきました。もともと日照量を多く必要とする品種なので、太陽の国アルゼンチンの気候はその育成にピッタリだったのです。
さらに、アルゼンチンの食文化にもマッチしたのも大きな要因と言えるでしょう。
それは、なんといっても「牛肉」の存在です。
アルゼンチンの牛肉の年間消費量は世界トップクラス。日本のおよそ10倍と言われています。
脂肪が少なく赤身が多いアルゼンチン産の牛肉は、塩コショウのみで調理するのが定番。マルベックのような濃い赤ワインは、こういったシンプルかつ豪快な肉料理にピッタリなのです。
では、その特徴について触れていきましょう。
マルベックの香りは?
ブルーベリーやブラムなどの黒系果実の他に、スミレやバラといった花の香り。
長期熟成により、スパイスやなめし皮、タバコなどの複雑な香りが加わります。
黒ワインと呼ばれるが、ソフトな口当たり
「黒ワイン」と呼ばれ親しまれているマルベックの特徴は、言わずもがなその外観にあります。
小粒で果皮の厚いマルベックを使ったワインは、赤いというよりは「黒」に近い濃厚な色。
しかしそのパワフルな外観からくるイメージとは異なる、柔らかい味わいもまた、人々を引きつける要因であるのです。
タンニンが豊富で渋みが感じられ、口当たりはまろやか。 凝縮感のある果実味が感じられます。
暑い地域でよく育つ
冷涼な土地では育ちにくく、どちらかと言えば暑い地域でよく育ちます。
日照量が十分にあり、乾燥している土地での栽培が適しています。
こってりした味わいの肉料理との相性が抜群
マルベックの特徴を知ったら、今度は実際に飲んでみましょう。
楽しみ方は様々ですが、初心者の人でも楽しめる簡単なポイントをお伝えします。
ペアリング(飲み物と料理の組み合わせ)
凝縮感があり、クセの強いマルベックには、是非お肉料理を合わせましょう!なかでも、牛肉がイチオシ。
他には、シュラスコ(鉄の串にかたまり肉を刺し、炭火で焼いて食べる料理)、
煮込みハンバーグ、ミートボール、ビーフシチューなど、こってりとした味わいの料理と相性が抜群です。
赤ワインに多くみられるようなお高く気取ったワインというよりも、「ぷはぁ〜!」と陽気に飲んでしまえるようなワインでもあるので、是非ワイルドなお肉料理と合わせてほしいです。
4月17日は「マルベックの日」
実はマルベックには、記念日があるのをご存知でしょうか?
きっかけは、アルゼンチンで初めてぶどうの樹が植えられた翌年の1853年4月17日に、公立の農場と農学校の設立申請が出されたことです。
これがきっかけとなり、アルゼンチンのワイン産業が近代化へグングン進んでいきました。
「Malbec World Day」と呼ばれる4月17日には、アルゼンチンだけでなく世界の50カ国以上でマルベックをお祝いするイベントが開催されます。
4月17日には、家族や友人たちで集まってマルベックを楽しみましょう!
アルゼンチンだけじゃない。フランス・カオールでも親しまれる
主要な産地のアルゼンチン、原産国のフランス、カオール地方についてもう少し詳しく触れていきましょう。
アルゼンチン
アルゼンチンのぶどう畑は、その多くが標高800〜1,200mという、とんでもなく高い場所にあります。
太陽に近いので十分な日照量が確保できることはもちろん、アンデス山脈の雪解け水が自然の灌漑(水を農地に流すこと)になり、その山水の影響でミネラルを多く含んだぶどうができあがるのです。
これはマルベック以外のぶどうにも言えることですが、このような標高が高い土地は乾燥していて、害虫が発生しにくいので、農薬などを使う必要がありません。
その為アルゼンチンのワインは、オーガニックのものが多いのです。
この地方のマルベックは他の地域のものよりも色が濃く、フルーティーであることが特徴です。
フランス、カオール地方
フランスのカオール地方は、フランスで最古のワイン産地の1つです。
フランスの中ではコストパフォーマンスの高いワインをつくる産地としても知られています。
この地方でカオールワイン(現地の呼び方で、マルベックのこと)を名乗るには、マルベックのぶどうを最低70%以上使うことが義務づけられていています。
この地方のマルベックは濃厚な果実味と、強いタンニンが感じられるのが特徴です。
蛇行する川に沿うようにして植えられているカオール地方のぶどうは、昔から中流階級の人達でも飲めるデイリーワインとして、地元の人々にも親しまれていました。
ニュージーランドでは主にブレンド用として栽培されている
NZでは、マルベックはほとんどブレンド用に使われますが、単一種のものもわずかですがあります。
産地はマールボロ地方、ホークス・ベイ地方など日照量が豊富な地域です。
煮詰めたプラムやブルーベリー、オリーブやハーブなどの香りがします。