カベルネ・フラン|ボルドーワインの隠れた名脇役はフラン一族の親

01カベルネ・フラン

ふつう「カベルネ」と言えば、赤ワインが好きな方なら誰もが知っているカベルネ・ソーヴィニヨンをさします。

カベルネ・ソーヴィニヨンは単一品種でも使われますが、もともとは「ボルドーブレンド」と呼ばれるボルドーで複数の品種をブレンドするときの主要品種として大切にされてきました。

そのブレンドを陰で支えるのが、カベルネ・ソーヴィニヨンとよく似ているものの、やや軽い味わいの「カベルネ・フラン(Cabernet Franc)」という品種。

 

カベルネ・フランは単一品種でつくられることは少なく、主にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローとブレンドされる品種です。

 

同じカベルネでも、主役になるぶどう品種と、サポート役になるものと個性が全く違ってくるんですね。

 

カベルネ・フランだけのワインは全くないんですか?

 

フランス・ロワールのシノンなどごく一部では、主役になることもありますよ。

しかし、ボルドーブレンドの補助品種としてはとても重要な存在で、世界各地で広く栽培されています。

ニュージーランドも同様で、主に北島のオークランド近郊、ホークス・ベイ地方での栽培が盛んです。

この記事ではそんな隠れた名脇役、カベルネ・フランについてご紹介します。

もう一つの「カベルネ」にはどんな顔が隠されているのでしょうか。

ボルドーブレンドとは

カベルネ・フランの概要を説明する前に、ボルドーブレンドについて少し触れておきたいと思います。

「ボルドー」という色の名前でもよく知られているボルドーブレンドは、前述の通り複数の品種をブレンドさせてワインをつくるボルドー地方の伝統的な製法です。フランス語では「アッサンブラージュ」といいます。

ボルドー

品種の持つ酸味や渋み、甘みなどの違う品種をブレンドすることで、ボルドー特有の複雑で奥深い味わいのワインを生み出します。

ボルドーブレンドの多くは、

  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • メルロー

この2品種が主体となり、

  • カベルネ・フラン
  • カルメネール
  • マルベック
  • プティ・ヴェルド

これらの品種がブレンドされます。

そもそもなぜ、ブレンドするのでしょうか?それは、それぞれの味わいのバランスをとるだけでなく、栽培管理のリスクを減らしたり、収穫時期の差を利用して飲み頃を調整するなどの目的もあるのです。

またボルドーブレンドはボルドー地方だけでなく、世界各地でも採用されており、カベルネ・フランは欠かせない存在になっています。

最も有名な産地は、もちろんボルドー

カベルネ・フランは世界各地で栽培されていますが、そのほとんどがフランスです。なかでも産地としてもっとも有名なのがボルドー地方

ボルドー地方のなかでも、

  • メドック地区
  • グラーブ地区

これらのボルドー左岸地区ではカベルネ・ソーヴィニヨンを補完するためにフランは生産されており、カベルネ・フランの生産量は少なめ。

一方、

  • サンテミリオン地区
  • ポムロール地区

などボルドー右岸の地区では、メルロー主体のワインが多くみられます。

03右岸左岸

この地区での伝統的な手法は「カベルネ・フラン」が骨格をつくり、そこに「メルロー」で肉付けをするというもの。

この地区にはカベルネ・フランが「骨格」となり、脇役ではなくむしろ主役とみなされた伝統があるのです。

ロワール地方ではカベルネ・フラン単体も味わえる

ロワール地方はロワール川流域に広がる生産地で、フランス国内でもっとも多い栽培面積をもつ地方です。

04ロワール

この地方ではボルドー地方とは違い、カベルネ・フラン100%のワインが生産されています。他の品種とほとんどブレンドしないのです。

カベルネ・フランという品種のありのままの個性が味わえるワインに出会えるのは、ロワール地方ならでは。カベルネ・フランほどよいコクと味わいを堪能することができます。

あらゆる品種の先祖と言えるほど古い歴史をもつ

カベルネ・フランは、ワイン用ぶどう品種の中でも古い歴史を持っています。

かつてはボルドー地方が原産地とされていましたが、現在はバスク地方がルーツだと考えられています。

実は、あらゆる品種の「先祖」といっても過言ではないカベルネ・フラン。

その系図をチェックしてみてみましょう。

カベルネ・フランはフラン一族の親

まず最初におさえておきたいことは、カベルネ・フランは世界で人気ナンバーワンの赤ワイン用ぶどう、あのカベルネ・ソーヴィニヨンの親ということ。親子関係があるので、ブレンドしたときに補完しあえるのも納得ですね。

さらに親子関係があるのは、カベルネ・ソーヴィニヨンだけではありません。

品種家系図

図のようにカベルネ・フランは

  • メルロー
  • カルメネール

などの親にも当たるのです。

 

なんて子沢山な品種!

ちなみにカベルネ・ソーヴィニヨンの両親は、カベルネ・フランと白ぶどう品種のソーヴィニヨン・ブラン。どちらの名前もとって組み合わせいるので、わかりやすいですね。

カベルネ・ソーヴィニヨンとの違いは?

親子関係にあるカベルネ・ソーヴィニヨン。その違いを簡単にまとめてみました。

ボルドーブレンドでは少しずつ異なる性格を、補完しあっています。

  カベルネ・ ソーヴィニヨン カベルネ・フラン
芽吹き 遅い 早め
収穫時期 遅い 早い
味わい 酸とタンニンが強い しっかりとした骨格 柔らかい酸と 程よいタンニン 軽やか
色味 濃い 薄め
熟成 時間がかかる やや早め

カベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニヨンより成熟が早めなので、収穫時期が違うだけでなく、涼しい地域でも完熟することができるという特徴を持っています。収穫時期はだいたい、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローの間くらいですね。

香り、味わい、色味など全体的にカベルネ・ソーヴィニヨンより軽めの表現がイメージされます。重厚感のあるカベルネ・ソーヴィニヨンを補っているのです。

カベルネ・フランの香りについて

カベルネ・フランの代表的な香りには

  • いちご
  • フランボワーズ
  • ブルーベリー
  • スミレ
  • 赤ピーマン

などがあげられ、程よい渋みが特徴です。

豊かな酸味を持ち、なおかつフレッシュな果実味も感じられます。

酸味や渋みのバランスが良いので、あっさりとした肉料理が好相性

カベルネ・フランには、牛肉、子羊肉など、赤身のお肉がよく合います。比較的脂っぽくないお肉がいいですね。

06ローストビーフ

酸味と渋みのバランスもよく、程よい果実味を持つカベルネ・フランは、あっさりとした肉料理にとても良くあいます。ランチタイムにもおすすめです。

07ドライエージングビーフ

また、スパイシーなエスニック料理にも、ぜひお試しください。唐揚げなんかもいいですね〜これが意外にあいますよ!

まとめ

ブレンドすることで幅広い表情を持つカベルネ・フランは世界でも再評価を受けています。

世界各地にワインの文化が広がるとともに、これまでの力強いカベルネ・ソーヴィニヨンがベースのパワフルなワインだけでなく、飲み心地のよいカベルネ・フランがしっかり存在感を示したワインが求められているのかもしれません。

この記事の筆者

ボクモワイン
ボクモワイン編集部
ボクモワインの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆&編集しています。

この記事の監修

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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