赤ワイン用ぶどう品種、シラー(Syrah)。
深い色味を持ち、スパイシーで力強い味わいが特徴です。
ワインを飲まない方にはあまり馴染みのない品種かもしれませんが、20年間で栽培面積が5倍にもなった人気者なんですよ。
初めて聞いた品種ですが、人気が上がってきているんですね。
私はよくスーパーでワインを買うけど、シラーっていうラベルは見たことがあります。
現在、世界中の様々な地域で栽培されており、ニュージランドでも成功している品種の一つです。主にホークス・ベイ地方とワイヘキ島で栽培されています。赤ワインファンの方には、是非ニュージランドシラーをチェックしてほしいですね。
シラーには、果実の香り、酸味、タンニン、スパイシー…と、ワインを構成する要素がバランス良くしっかりと盛り込まれているので、「赤ワインを楽しみたい!」という時にはぴったりです。コクもあって、アルコール度も十分。飲みごたえがある赤ワインです。
そして、ぶどう自体にはっきりとした個性があるのも特徴の一つ。比較的わかりやすい品種と言えるでしょう。
また、骨格のしっかりとした長期熟成タイプという特徴があるので、高級ワインも生み出す品種です。
赤ワインの魅力が詰まったシラー。その特徴やおすすめの料理など、ご紹介します。 是非ワイン選びの参考にしてくださいね。
独特のスパイシーさが特徴で、主役でも脇役でもOK
シラーというぶどう品種からは、深くて濃い色味の赤ワインがつくられます。
単一品種でもつくられますが、複数の品種とブレンドされることも多い品種です。
シラー単一品種でつくられたワインは、パワフルでスパイシーな印象に。複数の品種とブレンドすると、柔らかい口当たりで飲みやすくなります。
また、シラーをブレンドすることでワインの骨格がはっきりとし、さらに長期熟成することも可能になってきます。ワインを安定させ、寿命を伸ばす役割があるということですね。
こういったことから、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールにも引けを取らないと品種とも言われています。
フランスでは「シラー」、オーストラリアでは「シラーズ」
シラーはちょっとユニークな歴史をもっています。
シラーの原産地は、南フランスのローヌ地方。
ローヌ地方といえば、ボルドー地方、ブルゴーニュ地方と並ぶフランスワインの御三家ですね。
フランスではシラー(Syrah)という名前で呼ばれ、特にローヌ地方の北部では、高級なワインが生み出されています。
1800年代、シラーはオーストラリアに伝えられます。
そして、たちまち大成功。
なんと「シラーズ」と名前を変え、独自の進化を遂げるのです。
育てやすい品種ということもあり、世界各国に広まったシラーズは、現在世界で高い人気を誇る品種です。
パワフルかつスパイシー、そして濃縮感あふれる果実味
続いて、外観や香りなどの特徴をみていきましょう。
黒っぽい果実から生まれる濃密なワイン
シラーの果実は青みがかった深い黒色。小粒でさらに果皮が厚いので、とても濃い色の赤ワインが生まれます。
↓こちらは、ニュージランドを代表するワイナリー、ヴィラマリのシラー。
その赤は黒っぽく、濃密な色彩です。
シラーの必須ワード=スパイシー!
シラーの特徴はなんと言っても、パワフルでスパイシー。そしてタンニンの力強さです。さらに果実味は、風味豊かで凝縮感のあるもの。
この黒胡椒やナツメグなどの香辛料を表す “スパイシー”とは、シラーを表現する上では最も重要なワードです。
シラーを飲む際は、スパイシーさを忘れずチェックしてみてくださいね。
独創的な香り
スパイシーな胡椒の香りの他には、ブラックチェリー、ダークチェリー、プルーン、ジャム、スミレ、白い花などが感じられます。
果実は果実でも凝縮感のあるもの、というのが特徴。黒っぽくて果皮が厚い、シラーの果実からも想像できますね。
また、なめし皮とも表現される野性的な香りも感じられます。
なめし皮ですか・・?笑 どんな香り?
赤ワインの香りを表現する際に、「なめし革」は度々登場します。革製品のベルトや財布の香りがそれです。
へ〜!ワインの香りの表現は、幅が広くて面白いですね!
しっかりとした酸味
シラーは酸味も多く感じられる品種です。
ぶどう栽培では、酸味を持ちながらも熟成させることは難しい、という一面があります。なので高価なものは酸が高く、安価なものは酸が低いという傾向があります。
シラーの好む気候について
比較的温暖で、乾燥した気候を好む品種です。
強い日差しをしっかり浴びたぶどうから生まれるワインは、凝縮された濃い赤色に。アルコール度数の高い、力強さとこくのあるワインに仕上がります。
熟成によって生まれる個性
長寿であるという優秀な一面をもつシラー。原産地であるローヌ地方では、最低でも10年は熟成させたほうが良いとされています。若いうちはシラーの持つ、スパイシーさ、渋味やえぐ味などが強いためです。
そして、熟成されて飲み頃になったシラーには、面白い変化が現れます。
熟成させることで、産地ごとのはっきりとした個性がでてくるのです。
土地の個性を大きく反映し、さまざまな味わいをもった幅のあるワインを生み出すシラーは可能性を秘めた魅力的な品種です。
ジビエや炭火焼きなどのお肉料理と相性抜群
スパイシーで力強いタンニンを感じられることから「野生的ワイン」とも言われるシラー。
そんなシラーには、ジビエ料理や炭焼料理との相性がぴったりです。
ジビエとは、鹿やイノシシなど狩猟で得た野生の肉を意味する言葉(ちなみにフランス語です)。
ジビエ料理や炭で焼いたお肉と合わせると、野性的なワイン・シラーがなんと、エレガントに変身するのです。
想像しただけで、シラーのワインを1本持ってBBQに行きたくなります。笑
香ばしく焼いたお肉に、黒胡椒をがりっとひいて、シラーをいただいてみましょう。このペアリングを是非、体験してみてください!
原産地・フランスのシラーはブレンドで
原産地フランス・ローヌ地方で、シラーの有名な産地と言えば、「コート・ロティ」や「エルミタージュ」「サンジョセフ」「コルナス」などが挙げられます。
南フランスといえば、ワインをブレンドする文化がありますが、シラーもさまざまな品種とブレンドされています。
次のような品種が代表的です。
- グルナッシュ(シラーとは兄弟のような品種)
- ムールヴェードル
- カリニャン
- ヴィオニエ
「ヴィオニエ」というのは、なんと白ワイン用の品種。白ぶどう品種を混ぜるという伝統的なこの製法は、シラー特有のスパイシーな香りを抑え、やや白い花の香りが強くする事ができ、よりエレガントなワインに仕上げます。
白ワイン用ぶどう品種のヴィオニエにも合うなんて、すごく意外かも。
この製法は、近年オーストラリアなどでも取り入れられ、口当たりの柔らかいフルーティーなものも多く生産されるようになりました。
シラーの味や香りの特徴は?
典型的なフランスのシラーは、ちょっとグラスに鼻を近づけるだけで黒胡椒のようなスパイシーさが感じられるのが特徴。
なおかつエレガントで繊細さもあり、飲み口はスムースです。
オーストラリアに渡ってより力強くどっしりと
二番目の産地とも言われるオーストラリアの特徴をみてみましょう。
オーストラリアに伝わった「シラーズ」は、原産地フランスとは異なる特徴をもっています。
シラーがオーストラリアに伝わったのは1800年代。およそ200年の間にオーストラリアの土壌や気候に合わせ独自の進化をしていきます。
オーストラリアの暖かい気候、人々の食文化とマッチしたシラーは、爆発的に普及。現在、オーストラリアの赤ワイン用品種では、最も栽培量が多い品種です。
シラーズの味や香りの特徴は?
オーストラリアの「シラーズ」はフランスの「シラー」よりも濃く、やや重めの特徴があります。よりドロンとした印象ですね。
さらに、果実味が豊かで、力強い凝縮感もより感じられます。
タンニンは滑らか。つまりあまり渋くないのです。
スパイシーさも低く、果実味のほうがやや強い傾向にあるので、カベルネ・ソーヴィニヨンに似ていると言われるのも納得ですね。
独自のブレンドで新たな道を開く
フランスのブレンド文化は、同じ産地の品種をブレンドするのが基本。
しかし、オーストラリアではカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズという「異色」のブレンドを生みだしています。
カベルネ・ソーヴィニヨンといえばボルドー品種。
ボルドー☓ローヌなのでこの組み合わせは、フランスではご法度なのです。
こんなこともやってのけ、新たな文化を作ったオーストラリアのシラーズは、人気を集め世界中から愛されています。
ニュージーランドではホークス・ベイ地方が中心で、Cool Climate Syrahにも注目
さて、続いてはニュージーランドにおけるシラーをみていきましょう。
ニュージランドでは主に「ホークス・ベイ地方」で栽培され、全体の約70%の栽培面積を占めています。
生産量としては、NZで栽培されるぶどう品種全体の1%というごくわずかな量ですが、その品質は国際的な舞台でますます注目を集めています。(2019年)
冷涼気候を生かしたワイン
NZでは、重くなりがちなシラーをあえて重くない味わいに仕上げる試みもされています。これは、通称「Cool Climate Syrah」と言われ、涼しい気候を生かしたシラーとして注目を集めています。
涼しい国ですが日照量が十分あるため、昼と夜で大きな寒暖差が生まれます。これにより長期熟成が可能になり、複雑味のある洗練されたエレガントなワインをつくることができるのです。
特徴的な香りは、ダークチェリー、プラム、スミレ、など。
さらに風味豊かな黒胡椒が加わり複雑さが感じられます。
またNZでは「シラー」と呼ばれ、お隣のオーストラリアのように「シラーズ」とは呼びません。これは、涼しい気候で生産するスタイルが、オーストラリアよりもフランスに近いためです。
まとめ
「しっかりとした赤ワインを楽しみたい!」というときにはシラーがおすすめです。
本場フランスとオーストラリアなど、産地や品質による違いも楽しんでみるといいですね。
ジビエ料理や炭焼料理を食べるとなったら是非シラーのご用意を。その美味しさを堪能してみてくださいね。