フルーツの豊潤、オークの深み

「NZのシャルドネってどんな感じですか？」と聞かれることがあります。

もちろん、産地によってスタイルはさまざま。でもやはり、ニュージーランド最大の産地であるマールボロは外せません。 そしてそのマールボロの中でも、僕が個人的に「極めて完成度が高い」と感じるのが、アワテレ・ヴァレーのシャルドネです。

キレのある酸味、豊かな果実味があり、しかも、しっかりとミネラル感が感じられる。そんなワインが多いのがアワテレの魅力。「フルーツ＆樽」というNZらしさに「ミネラル」という魅力が加わった味わいを楽しむことが出来ます。

そんな中でもお薦めなのが、アワテレに拠点を構えて40年の古豪「ヴァヴァサワー」のシャルドネ。「NZのシャルドネを知りたい」という方に、まずおすすめしたい一本です。

僕が前回の渡航で、真夏のアワテレ・ヴァレーを訪れました。丘の上でやや涼しい場所と聞いていたのですが、現実は予想を上回りました。太平洋からの風がびゅうびゅう吹き抜け、夏なのにやや寒い！ウインドブレーカーを持っていってよかった･･･。そして、土はカラッカラに乾燥していました。

マールボロのメジャー産地ワイラウとは一線を画す、このアワテレだけの微気候があることを実感しました。

そんな場所で育ったシャルドネは、やっぱり一味違うのです。

香りは、白桃やあんず、バター、焼いたナッツ。 そして後半には、貝殻や火打ち石のようなミネラル感。 味わいは、しっかりとした果実のボリュームがありつつも、出しゃばらない樽使いが印象的です。 余韻のほんのり塩味を帯びたようなニュアンスが、涼やかな海風を連想させてくれます。

とにかく各要素が調和していて、ひとくちの満足度が高いです。

さて、テクニカルノートからこのヴァヴァサワー シャルドネを見てみると･･･ ぶどうはすべて自社畑産。収量制限を行い、凝縮感のある果実だけを厳選。全房で優しくプレスし、野生酵母と畑由来の酵母で樽発酵。 その後、マロラクティック発酵と10ヶ月のフレンチオーク熟成（新樽は控えめ）を経ている。澱は週に一度撹拌。とまあこんな感じ。

ぶどうづくりから醸造まで一貫して自社で行い、このしっとりとした厚みと繊細なバランスを実現しているというわけですね。それでいて4,000円を下回るこの価格は値打ちがあると思います！

おすすめのペアリングは…

• 鶏むね肉とレンズ豆のクリーム煮
• 帆立のバターソテー（ディル添え）
• 白身魚のムニエル レモンバターソース
• サーモンときのこのクリームパスタ
• グラタン・ドフィノワ（じゃがいもとチーズのグラタン）

一本で、いつもの食卓をぐっと引き上げてくれる。 そんな、上質な日常のためのシャルドネです。

ワイナリー「ヴァヴァサワー」について

ヴァヴァサワーは、ニュージーランド・マールボロ地方の中でも特にユニークな産地、アワテレ・バレーの草分け的存在です。

1980年代、この地は冷涼かつ乾燥した気候や強風、岩の多い土壌により、ワイン造りには不向きだと考えられていました。しかし彼らは、この「難しい土地」だからこそ生み出せる特別な味わいがあると確信し、果敢に挑戦を決意。それが成功し、現在アワテレ・バレーはニュージーランドを代表するワイン産地として、世界的に認知されるまでになりました。

独自のテロワール（土壌）がもたらす味わい

彼らのワインを特徴づけるのは、まさにこのアワテレの土地そのもの。

冷涼で昼夜の温度差が激しい気候条件は、ブドウの成熟をゆっくりと進め、鮮やかな酸味と深い味わいをもたらします。岩が多く水はけに優れた土壌は、ワインに明確なミネラル感を与え、その味わいを際立たせます。

こうした土地特有の厳しい条件が、繊細かつ複雑な風味を与えます。

細部へのこだわりと進化するワイン造り

彼らのブドウ畑は100以上の小さな区画に分けられ、それぞれを個別に管理・収穫し、細かな醸造プロセスを経てワインに仕上げています。

野生酵母による自然な発酵や全房発酵、高固形分発酵など、伝統的な製法と現代的な技術を融合させることで、土地の個性を忠実かつ最大限に表現しています。

その卓越した品質により世界的な評価を獲得していますが、受賞歴や評論家の評価を過度に前面に出すことを控えています。

なぜなら、彼らがワインの本質的な品質や土地への忠実さを何よりも重視しているから。

この姿勢は、信頼性や真正性を重視するワイン愛好家に強く共感されています。

土地に深い理解を持つつくり手の存在

醸造責任者ストゥ・マーフェル氏は、アワテレ・バレーで生まれ育った人物であり、この土地の特性を誰よりも深く理解しています。

彼のワインづくりは、土地に寄り添い、その個性を尊重することを基本とし、畑の微生物環境や土壌の特性を緻密に研究し、常に進化と革新を続けています。

彼が手がけるワインには、土地への深い愛情と卓越した技術が融合し、唯一無二の魅力を放っているのです。

ヴァヴァサワーのワインボトルの中には、土地への敬意、挑戦者の情熱、そして職人としての細やかなこだわりが凝縮されています。

産地マールボロについて

「マールボロ」は、NZのワイン産地の中心地です。

豊富な日照量や、1日の中での寒暖差が大きいことなど、ぶどうの生育環境にとって好ましい自然の条件が揃っており、マールボロではNZワインの8割以上が生産されています。

その中でも、キリッとした酸味と溢れる果実味が特徴のソーヴィニヨン・ブランは圧倒的な生産量を誇り、唯一無二のキャラクターとして世界で広く愛されています。また赤ワインでは、豊かなベリー系の果物の味わいが魅力のピノ・ノワールが人気です。

ヴァヴァサワー マールボロ シャルドネ 2021（Vavasour Marlborough Chardnnay 2021）