マルサンヌの魅惑

南仏白をNZでつくるという挑戦

ニュージーランド・ホークスベイで、南仏のローヌ地方の白ブレンドを造るという、ちょっと意外な試みに挑戦した一本。

それがこちらのトリニティ・ヒル ギムレット・グラヴェルズ マルサンヌ・ヴィオニエ 2020です。

品種はマルサンヌ92%、ヴィオニエ8%。このブレンドはNZでは極めて珍しいと言えるでしょう。

つくるのは、チャレンジ精神あふれる醸造家ウォーレン・ギブソンさん。「南仏の白をNZの北島で再現したらどうなる？」というひとつの答えがここにあります。

栽培・醸造

ぶどうは、ホークスベイの名産地ギムレット・グラヴェルズの中でも、水はけの良い砂利質土壌であるティン・シェッド・ヴィンヤードが主体。この土地が、果実に凝縮感と張りのある酸をもたらしています。

2020年は、昼夜の寒暖差がしっかりあり、秋も乾燥していたため、果実は理想的に成熟しながら酸もキープ。 マルサンヌは3月末、ヴィオニエは4月上旬に手摘みで収穫されました。

醸造は丁寧そのもの。全房のままやさしく圧搾し、一晩タンクで落ち着かせた後、フレンチオークの小樽で発酵。 マロラクティック発酵（MLF）は行わず、澱とともに17ヶ月熟成。清澄も濾過もしていない、ナチュラルで贅沢な造りです。

テイスティング

グラスに注ぐと、かりんやマーマレード、ドライハーブ、火打ち石などの複雑な香りが漂います。 口に含むと、マルサンヌ由来の厚みのあるボディとストラクチャーがしっかり感じられます。

一方で、ヴィオニエが添えるアプリコットやジャスミンのエキゾチックな華やかさが、全体を立体的に仕上げています。 酸は控えめ（3/5）、辛口度はしっかり（5/5）。 14%のアルコールが、充実した余韻をさらに引き延ばしてくれます。

おそらくこれを飲んで「NZワイン」と答えられる人はほとんどいないでしょう。まさに気分は南仏。

しかも、重厚感たっぷりというよりは、香り・質感・味わい、すべてにおいて洗練された南仏風味の白と言えると思います。

ペアリング

このワインの良さは、合わせられる料理の幅広さにもあります。

果実のふくよかさと酸のバランスが絶妙なので、 魚介のような繊細な食材にも、鶏肉のような旨味のある食材にもマッチ。

たとえば…

• 海老と蕪のバターソテー
• 鯛のアクアパッツァ
• 鶏むね肉の塩麹バター蒸し
• 鶏もも肉とトマトのハーブロースト

どれもこのワインの良さをぐっと引き立ててくれます。 南仏スタイル × NZテロワールの融合を、ぜひお食事とともに楽しんでください。

ワイナリー「トリニティヒル」について

トリニティヒル（Trinity Hill）は、NZ北島ホークス・ベイのワイナリー。かつては川底であった砂利質土壌の土地「ギムレット･グラヴェルズ」の可能性をいち早く見出した、この地区のパイオニア的な存在です。ボルドーブレンドやシラーを得意とします。

産地ホークス・ベイについて

「ホークス・ベイ」は北島東部に位置し、豊富な日照量と比較的温暖な気候が特徴の地域で、国内で2番目に大きなぶどうの栽培面積を誇ります。

ホークス・ベイでは特にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、マルベック、シラーからつくられる赤ワインの生産に力を入れており、白ワインではフルーツ感のあるシャルドネが人気です。

また、もともとは川底であった場所が地震により押し上げられたことにより生まれた「ギムレット・グラヴェルズ」というエリアは、ホークス・ベイの重要なサブリージョンの一つとなっています。

トリニティヒル ギムレットグラヴェルズ マルサンヌ・ヴィオニエ 2020（Trinity Hill Gimblett Gravels Chardonnay 2022）